シンプル



黒い気持ちを吐き出し
清い空気を吸い込んで
曲がりきった背筋を正す

至ってシンプルだ

歪んだものに触れるたびに失ってきたその原点

大丈夫、と

ただその一言を求め泳いでいた

泳ぎ方も知らずに

溺れたふりをしていれば
このまま息を止めていたら
そこに差し出された手だけを掴んでいれば

大丈夫だと思っていた

柔い手に引き上げられたつもりでいてもそこはまだ深い海

私には自分で泳ぐ手も足もある
呼吸は自分で整えて
陽の光を目指すと決める意思もある

私はなんだかんだ生きている

手放そうとした命はいつもここにある

揺らぐ波に流される心地良さは甘くて気持ち良いけど
海はどうしても冷たいから

私は暖かい陽の下を歩きたかった
堂々と 自分の足で

黒い気持ちを吐き出し
清い空気を吸い込んで
曲がりきった背筋を正す

そういえば、いつもこうして生きていた

見たいと願った陽の光をもう眩しいとは思わない

相応しいと思う

ここは私に見合う世界だから
私の声もよく通る

「もう大丈夫だよ」

力の抜けるような高い声を
ここでずっと

12/30 14:40
[詩]
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-エムブロ-