スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

ACT1-(2)

披露宴も無事に終わり、片付けを済ませた頃には既に夕暮れ時となった。
涙ぐむ母親と別れの抱擁をし、満月は芳樹と共に新居に向かった。
「………疲れたかい、満月ちゃん。」
「いいえ、芳樹さんもお疲れ様でした。」
ホクホク笑顔で労いの言葉をかける満月に芳樹は目いっぱいの笑みを零した。
「………さて、と。疲れたところ悪いけど、早速準備をしようか。」
「はい、芳樹さん。」
そう言うと二人は屋外にある庭へと出た。新居とはいえ、
その庭の広さは公園としても開放していいぐらいの大きさを誇る。
庭の中心部には噴水があるが、その噴水を中心に守り刀達が
魔法陣を作成していた。
「………物吉、首尾はどうだい?」
芳樹は満月の守り刀を務める物吉貞宗に声をかけた。
スッ、と2人の前に物吉が跪いて頭を垂れる。
「……はい、首尾は上々です。後は祭壇に聖遺物を用意するだけでございます。」
「………そうか。」
「ありがとうね。こんなことを任せて。」
「いえ、これも僕達守り刀の役割ですから。」
「………でも本当に1500年前の発掘品とは思えない代物ですね。
傷1つない。」
「うん、ただ装備しているだけで傷を癒し、老化を停滞させる。
ただ、本来の持ち主からの魔力供給が必要だけれど。」
「そうですね。姫宮と綿貫が総力を挙げて探し出したものですから。
凡そ考えうる限り、最高のカードですよ。」
「そうだね。」
満月の言葉に頷いた芳樹は魔法陣の出来を見るため、地面にしゃがみ込んだ
「……うん、こんなところでいいかな。」
「サーヴァントを召喚するのにこんな単純な儀式でホントに構わないんですか?」
「サーヴァントの召喚にはそれほど大がかりな降霊は必要はない。
実際にサーヴァントを召喚するのは術者じゃなくて、聖杯だからね。
さて、何はともあれ、準備は整った。」
「…………はい。」
芳樹の指示で祭壇に1500年前もの時代から発掘された聖剣の鞘が置かれる。
「じゃあ、満月ちゃん。一緒に。」
「はい。」
「…………素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風に壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で王国に至る三叉路は循環せよ。」
「閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)
繰り返すごとに5度、ただ満たされる時を破却する。」
魔法陣が光り輝き、魔力が放出される。芳樹は満月の腰に手を回し、
詠唱を続けた。
「告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄る辺に従い、この意この理に従うならば応えよ。
誓いをここに 我は常世総ての善と成る者 我は常世総ての悪を敷く者
汝三大の言霊を纏う七天 抑止の輪より来たれ 天秤の守り手よ…………!!」


魔法陣の上には、芳樹と満月が呼び出した英霊が立っていた。
そして英霊は口を開いて、声を出した。

「…………問おう。貴方が私のマスターか?」





続く。

ACT1-(1)

綿貫芳樹は人生の中で絶頂の時を迎えていた。
世界有数の巨大複合企業グループの御曹司として生まれてから、30年余り。
煌びやかな世界でありながら、嫉妬や欲望が渦巻く芸能界に
身を置いてから20年ほど過ぎたが名誉ある賞を受賞した時よりも彼は興奮していた。

自分のために用意された婚約者との結婚を間近に控え、
前日の夜は眠れなかった。
「………若旦那様。お嬢様の準備が整ったぜ。」
自身の身の回りの世話と護衛を兼ねている使用人を務める守り刀が
声をかける。

「そうか……そろそろいよいよなんだね。」
藍色の髪と同じ色をした瞳を守り刀に向け、芳樹はそわそわとし始める。「「
「長かったものなぁ……お嬢様が学校を卒業するまでの時間が。」

守り刀の案内で芳樹は式場の長い廊下を歩く。
12歳年下の幼馴染兼婚約者が法的にも結婚できる年齢を過ぎたのは
つい先日のことだ。
あれよこれよといううちに挙式の準備が進み、婚姻届けを市役所に出した。
市役所にいた女性市長から豪勢な花束を贈呈されたのは記憶に新しい。
御堂に到着すると列席者が起立して芳樹を迎えた。
祭壇前にて新婦を待っていると扉が開かれ、白い花嫁衣裳に
身を包んだ新婦・姫宮満月が父親の秀一と共に入場した。
秀一から満月の手を受け取り、芳樹は満月と共に
バージンロードを歩く。
列席者が讃美歌を歌った後、神父は聖書朗読と祈祷をした。
「新郎、綿貫芳樹。貴方はここにいる姫宮萬月を病める時も健やかなる時も、
富める時も貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「はい、誓います。」
「新婦、姫宮満月。貴方はここにいる綿貫芳樹を病める時も健やかなる時も、
富める時も貧しき時も、旦那として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「………はい、誓います。」
満月の返答に芳樹は顔がにやけそうになるのを必死に抑えた。
にやけるにはまだ早い。
誓約が終わり、指輪を交換したところで芳樹はベールアップ・ウエディングキスをした。
そして結婚成立の宣言と結婚証明書に署名する儀が終わり、
新婦は列席者に結婚が成立したことを報告し、閉式を伝えた。

芳樹と満月は腕を組んでバージンロードを後にした。


続く。

ACT6-(4)

「………よし、できた!」
それはとある日のこと。満月は作っていた浴衣を完成させた。
「芳樹さん、芳樹さん!」
「ん?何だい?」
リビングでテレビを観ていた芳樹は満月に声をかけられた。
「見てください、浴衣です!」
「よくできているじゃないか。うん、素敵だね。」
ポン、と頭を撫でられて満月はえへへ、と笑った。
「今度、夏祭りがあるからそれに合わせて着て行こうか。」
「はい!」



…………そして迎えた夏祭り。
「人がいっぱいですねー。」
「そうだね、初瀬神社はいつ来ても人が多いね。」
「そうですね………。」
「満月ちゃん、手を繋ごうか。はぐれると危ないし。」
「はい。」
「まずはお参りしないとね。」
「………はい!」
本殿に参拝をした後、芳樹達は境内を回った。
「………か、可愛い………!」
射的の屋台でピカチュウのぬいぐるみを見つけた満月は芳樹の顔を見た。
「芳樹さん、あのぬいぐるみが欲しいんですけど…………。」
「うん、わかった。取ろうか。」
屋台の店主にお金を渡し、芳樹はピカチュウのぬいぐるみに狙いを定めた。
ポン、と言う音がして1発で芳樹はピカチュウのぬいぐるみを落とした。
「兄ちゃん、やるなぁ。難易度結構高くしたのに。」
「あはは、満月ちゃんがついていたからですよ。」
「若旦那様にとってお嬢様は幸運の女神ですからね。」
「そんな大仰な…………。」
ピカチュウのぬいぐるみを無事にゲットした芳樹は満月にそれを渡した。
「ありがとうございます、芳樹さん。」
「どういたしまして。」

「………あら、芳樹君に満月ちゃんじゃない。」
「あ、美穂お義姉様!」
「綾人も来ていたのか。………子供達はどうした?」
「美花達ならおばあちゃん家に行くって言いだしたの。
たまには私達2人きりで過ごして欲しいから空気を読むのー、とか言って。」
「………ひょっとして言い出しっぺは美花ちゃんかい?」
「ええ。」
「気の利く子供達で助かるよ、最近2人きりで過ごすこともなかったから。」
「まあ、貴方ったら。」


続く。



ACT2-(10)

「…………はぁ、疲れた…………。」
「深愛、お疲れ様。」
「海堂一佐、お疲れ様です。」
甲板に降り立った深愛に涼子と氷雨は労いの言葉をかけた。
「深愛さん、お疲れ様でした。」
フェアリーに乗ったアミとティエが甲板に近づき、深愛に声をかける。
「…………インファント島の先住民達もどうもありがとう。
黄色い汁を大急ぎで作ってくれたんでしょ?」
「少量しかできませんでしたが。」
「まあ、それでも大丈夫だって。………多分。」
そういうと深愛は氷雨から薬を受け取り、一気に飲み干した。
「………はぁ、日本に戻ったら食べ放題の店に行きたい………。」
「…………ね、値段が安い店知っているから、行こう?ね?」
「うん。」
「………深愛さん、涼子さん。親モスラが………。」
「………え、何?もう寿命なの?」
「…………タマゴから子供が孵ります。」
「……………そっか……………。」


インファント島に戻った深愛と涼子をそして、ついてきた氷雨を前に、親モスラは何かを言った。
「ねぇ、何て言っているの?」
「子供のことをよろしく頼む、と言っています。」
「…………そうなんだ。」
祭司長達が祈りの歌を歌うなか、鱗粉が舞う。
アミとティエが歌を歌い、深愛と涼子は親モスラの死を見届ける。
「………………綺麗。」
「うん。………今から死ぬとは思えないぐらいに…………。」
タマゴにヒビが入り、中から幼虫が現れる。
それを見届けた親モスラの眼球から光が消えた。
「……………………。」
「………………我々防衛軍はとんでもない過ちを犯しました。
それは決して許されないことだと思っています。」
「………うん。でも、それをしなければならないほど追い詰められていた………。」
「………守らなくちゃならないよね、こういうのって。」
「…………そうですね。」
氷雨と涼子の会話を聞いた深愛は、生まれてきた幼虫を見守った。
「……………………………。」
「……………深愛さん、ありがとうございます。子モスラの誕生を見守ってくださって。」
「…………ううん、どういたしまして。こちらこそ、親モスラと会えて良かったよ。」
「……………深愛さん…………。」



続く。

ACT6-(3)

ライブが終わった後、亀甲が亜理紗、英美里、直美、明美の4人を迎えに来た。
関係者以外立ち入り禁止の場所を通り抜け、
4人は楽屋に向かった。
「………あ、前回はどうも!満月ちゃんを助けてくれて本当にありがとう。」
にこやかに笑う芳樹をよそに満月があはは、と苦笑いをする。
「本当にその節はお世話になりました。なんてお礼を言えばいいのか。」
「そんな、大袈裟なことはしていないです!」
「もう、亜理紗ったら素直に喜びなさいな。
その後、体調はどうですか?」
「おかげさまで、万全です。今回のライブを迎えることができたのも、
中井さんの適切な処置のおかげで…………。」
「で、そちらは?お友達?」
「あ、いえ、同じ学校に通うたまたま同じ性別の赤の他人です。」
「あ、酷い!」
「中井さんの同級生です、私達。芳樹さんからチケットを貰ったはいいけど、
おすそ分けする人間が該当しなかったから、私達にって。」
「………まあ、そういうことです。」
「素直じゃないのかな、中井さんは。」
「こういうところはパパに似ちゃったものねぇ。」
「もう、お母さんってば!」
「あ、これ。良かったらサインの色紙です。」
「え、嘘、やった!」
「ついでに写真でも撮りましょうか?」
「いいんですか!?」
「ええ、もちろん。」
「やったあ、今日はツイているよ!」
「…………でもなんかこの後怖そう………。」
「あっと、SNS上にはあまりあげないでくださいね?」
「もちわかってまーす!」
「…………ホントに大丈夫?」
「………大丈夫、そういうのを見せるそぶりがあったらすぐ消去するから。」
「………妹って大変だね。」
「まあ、仕方がないよ。」

かくして、4人は夢のひと時を過ごしたのであった。


続く。
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2022年08月 >>
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31