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夏祭り

「芳樹さん、どうですか?この浴衣、似合っています?」
くるり、と一回転をした満月に芳樹はうんと言った。
「似合っているよ、満月ちゃん。」
「芳樹さんも似合っていますよ。」
「ありがとう。」
初瀬神社で行われる夏祭りと花火大会に参加するため、2人は浴衣に着替えた。

「さて、じゃあ行くとしますか。」
「はい!」

2人は仲良く手を繋ぎ、初瀬神社に向かった。

屋台が並ぶ中、2人はりんご飴を食べたり、綿菓子を購入して楽しんだ。

「満月ちゃん、お腹大丈夫?」
「平気ですよ。小さい頃みたいに壊したりはしませんって。」
「なら、いいんだけど。満月ちゃんは無理をするから。」
「心配性ですね、芳樹さん。」
「そりゃ、心配もするって。
お腹を壊して病院に搬送されかけたのは誰だったかなぁ、と。」
「もう、芳樹さん!」

ぷくぅ、とむくれる満月の頬を芳樹はつんつん、と突いた。

「あはは、むくれ顔も可愛いなぁ。
じゃあ、お姫様の御機嫌がこれ以上悪くならないよう色々買わないとね。」





終わり。

出会い

智久が芳樹と出会ったのはインフルエンザに罹った満月を連れて、
守り刀もなしに血相を抱えて病院へ駆けこもうとしていた時だった。

「はぁ……………退屈な日々になりそうだな………。」

受験真っ最中の智久は気分転換に散歩をしていた。


「………………おい、言うことを聞け!」

近くの公園を通りかかった時、何やら騒ぎ声がした。

「聞けるか!俺はこの子を病院に連れて行くんだ!」

2歳ぐらいの子供を連れた少年が複数人の男達に囲まれていた。
周りにも人がいたが、警察を呼んだ方がいいのではないかとかいうばかりで
動こうとしなかった。

それを目撃した智久は、仕方がないと諦めて声をかけたのだった。

「おいおい、病人を連れてる人間に言うことを聞けって言っても無理があるだろ?
善は急げって奴だ、諦めて他の人間に当たったらどうだ?」
「何だと!?」

言うが早いか、智久は自身めがけて拳を飛ばしてきた男達に蹴りを入れた。

カンカンカン、と勝負が決まり、芳樹はおぉ…………と拍手した。

その後、警察が駆けつけて芳樹達は事情聴取を受けたが、
満月がインフルエンザに罹っていることもあって手短に終わった。

「…………すまん、礼を言う。」
「何、気にするな。綿貫と言えばあれだな、世界有数の大企業グループの御曹司じゃないか。
普通だったら護衛の1人や2人ぐらいはつけると思ったんだが。」
「…………何分急いでいたものだから。」
「………となるとその子は姫宮グループの長女にして末っ子か。随分と愛されているんだな。」
「婚約者だからな…………。」
タクシーを拾い、病院まで向かうことにした智久は芳樹に色々と話をした。

他愛もない世間話をしている中で、2人は同じ学校を受験する予定であることがわかった。
「………何だ、同じ学校を受験するのか。奇遇だな。」
「…………ホントだ。まさか同じ高校に受験しようとしている奴と出会うなんて。」
「そういや、俺はまだ名乗っていなかったな。俺は青桐智久。」
「………綿貫芳樹だ。こっちは婚約者の姫宮満月ちゃん。」

桜庭総合病院に向かうと、そこには連絡を受けた守り刀が待ち構えていた。

「若旦那様、御無事で…………!」

「青桐智久様ですね、この度は若旦那様とお嬢様を助けていただき心より感謝申し上げます。」

「いやいや、俺は何もしていないぜ?誘拐犯を蹴っただから。」

「いえ、何を仰いますか……………。ここまで一緒に来てくださり、ありがとうございます。」

ペコリ、と頭を下げる守り刀のへし切長谷部に、智久は手を横に振った。

「若旦那様、先生がお待ちです。お嬢様を診てもらいましょう。」

「あ、うん。…………今回は本当に助かった。礼は必ずするから。」

「おう。」








そして数日後。智久は綿貫家に呼ばれ、豪邸に足を運んでいた。
「……………すみません、青桐です。」
「はい、青桐智久様ですね。お待ちしておりました。」

長谷部の案内で智久は大広間へと移動する。

「………おぉ、君が青桐智久君か。先日は馬鹿孫が世話になったの。」
「あ、いえ…………。」

「…………して、礼の件についてじゃが。
守り刀を1振り贈ろうかと思ってな。受け取ってはくれまいか?」

「え?良いんですか?」
「うむ。同じ学校に通うことになるじゃろうし、長い付き合いになりそうだからのぅ。
そら、鶴丸。入ってきなさい。」
「……はっ。」

襖が開き、1人の女性が大広間に入ってきた。

「鶴丸国永、と申します。以降よしなに………。」
「……宮内庁御物の鶴丸国永!?滅茶苦茶嬉しいんですけど、ホントに良いんですか!?」
「はっはっは、知っておったか。こりゃ良い酒が飲めそうじゃ。」

「ありがとうございます、御前。」

「いやいや、こちらこそ。馬鹿孫とその婚約者を守ってくれて礼を言うぞ。ありがとうな。」



かくして、智久は芳樹と親友になり、共に受験勉強に励み見事第一志望に受かった。


ちなみに。鶴丸を紹介された時の智久の家族の反応はというと。

「いやいやいや、返してこい!」

「あら、良いじゃないの。お母さんは賛成よ。家のことも手伝ってくれるんでしょ?」

「はい。ご命令とあらば、お手伝いいたしますが。」

「あらー、助かるわ。何分育ち盛りが多くて大変なのよ。」

「母さん!」


という具合になったのであった。




終わり。



受け継がれるもの

「…………………え、嘘………………?」
綿貫拡樹は1枚の紙を見て驚いていた。

その紙には「加州清光役 綿貫拡樹」と書かれている。

「………よっしゃぁああ!!!」
その文字を見た瞬間、拡樹はガッツポーズを決めた。
「母さんがやってた役を俺がやることになるなんて…………!!」
「おめでとう、ひろ兄ぃ!ママがやってた役やるんでしょう?」
「ありがと、桃子。いや、感動するわ…………。」
「うふふ、私がやっていた役を拡樹がやるなんてねぇ………。
体型の関係でもうやれなくなってきているから、拡樹がやってくれると助かるわ。
貴方は貴方の加州清光を演じればいいんだから。」
「………うん。」
「しかし幕末天狼傳の再演でまさか、拡樹が抜擢されるとはなぁ。
責任重大だぞ、拡樹。」
「父さん、そんなこと言わないでよ!俺、ちゃんとやれるから!」
「お、言ったな?なら最後まで頑張れよ。」
「うん…………!」


「……………こんにちはー、綿貫拡樹です!今日はよろしくお願いします!」


稽古場に入るなり、拡樹は元気よく挨拶をした。

「お、拡樹君か。噂はかねがね聞いているよ、お母さんがやっていた役を引き継いだんだって?」

舞台監督の不知火に声をかけられて、拡樹はへにゃり、と笑った。


「まぁ、コネとかそういうのなんのそのって言われたらうぐぅ、ですけど。
でも、受け継いだ以上はしっかり見せつけてやらないといけないですよね。」

「お、その意気だ。そうだ、見せつけてやればいいさ。お前さんの実力をな。」

「………はい!」


終わり。

HappyValentine!

「………………というわけで、芳樹さん。フォンダンショコラです。」
「ありがとう、満月ちゃん。」
本日、2月14日はバレンタインデーである。
芳樹は守り刀から義理チョコを、満月から本命チョコを貰った。

「いやぁ、嬉しいねぇ。
満月ちゃんから毎年チョコを貰うなんて幸せ者だよ、俺は。」
「あはは、小さい頃は失敗作も出したりしていましたよね。」
「でも嬉しかったよ?」
「そうですか?」
「うん。」

「……………あの、若旦那様。お嬢様。ファンからの贈り物が来ているので、捌いてくれますか?」
「………今年もきたか…………。」
「でも食べ物よりはマシじゃないですか?生活用品とか結構贈ってきますよね、
ファンの皆さん。」
「そうだね…………。
チョコじゃない分、まだマシかな。
智久はチョコを贈られてくるって言っていたけど。」
「でもほとんど鶴丸の胃袋の中に消えていますよね。
あれで1sも太らないからさすがですね。」
「………まあ、守り刀は普通の人間じゃないからね…………。」




終わり。

謹賀新年

「明けましておめでとう、満月ちゃん。」
「明けましておめでとうございます、芳樹さん。」
「その振袖、似合っているね。」
「ありがとうございます。」

綿貫家にて、満月は振袖に着替えていた。赤色の布地が満月によく似合っている。

「じゃあ、初瀬神社に行こうか。」
「はい。」

初瀬神社に行くと、多くの参拝客で賑わっていた。

鳥居にお辞儀をして、参道を渡り、本殿に向かった3人は賽銭箱にお金を入れた。

「やあ、芳樹に満月ちゃんに物吉。明けましておめでとう。」
「明けましておめでとうございます、祐一さん。」
「祐一様、明けましておめでとうございます。」

「やぁ、満月ちゃんに芳樹君。それに物吉ちゃんも。」
「千春さん、明けましておめでとうございます。」
「満月お姉ちゃん、芳樹おじちゃん、明けましておめでとう!」

「……明けましておめでとう、千秋ちゃん。おじちゃんじゃなくて、お兄ちゃんって言って欲しいなぁ……。」
「えー、おじちゃんはおじちゃんで良いよぉ。」
「………祐一、どういう教育を施しているんだ?」
「失敬な。人前に出しても恥ずかしくはない教育を施しているだけだよ?」


あはは、と笑う祐一に芳樹は舌打ちをする。

「……まぁまぁ、千秋ちゃんと芳樹さんの歳は結構離れていますから、
おじちゃんって言われても仕方がないのかもしれません。」


「満月ちゃん………それ、ショックを受けるからやめてほしいなぁ………。」

「ねぇねぇ、芳樹おじちゃん。」
「な、何かな?」

「満月お姉ちゃんの帯を引っ張ってあーれー、とかやらないの?」
「家ではやるけど、外ではやらないかな。」
「ちょっと芳樹さん、千秋ちゃんに何てことを教えているんですか!?」
「………あ、ごめん。」」


「………新年早々、凄いスタートダッシュですね。」
「そうだねぇ。でも元気があっていいことだと思うよ?」





終わり。
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