………桜庭市、聖堂教会。
そこでは始まりの御三家の一角である、遠坂家当主の遠坂久遠が
草摩瑠樹に話をしていた。
「……つまり、世界の外側には力があるということですか。」
「そうだ。根源の渦と呼ばれる神の座だ。
かつて遠坂とアインツベルン、そして間桐の三家は互いの秘術を提供し合い
万能の釜たる聖杯を現出させた。
だがしかし、その聖杯が願いを叶えるのはただ1人の祈りのみ。
それが分かった瞬間、我々は協力関係を撤退し、血で血を洗う戦いが始まったわけだ。」
「………それが60年に1度、行われる聖杯戦争というわけですか。」
「そういうことになる。聖堂教会としては、
聖杯の使用目的を明確にしている遠坂君に引き渡したい、というわけだ。」
聖堂教会の神父である草摩璃樹は、瑠樹にそう話をした。
「………根源への到達。我が一族はただそれを目的としてきた。
しかし悲しいかな、アインツベルンと間桐はすっかり目的を履き違えてしまった。」
「………僕にも聖杯戦争に参加しろと?」
「そういうことになるな。表面上は我々聖堂教会は中立を装う。
だが、水面下では久遠氏に有利な状況を作れるように最善を尽くすのだ。」
「…………わかりました。」
「ああ、召喚の儀は今夜行う。
瑠樹君、君は今晩までに召喚の儀の魔法陣を描きたまえ。
それと詠唱の呪文も。」
「………了解しました。」


「…………………ふぅん、これが触媒なわけ?」
「………そうだ。」
クレメンス・オックスフォードは妻であるベアトリーチェ・オックスフォードの問いにそう答えた。
魔術協会のつてを使い、クレメンスはサーヴァントを召喚するための触媒を入手した。
「…………これで、最優とされる三騎士のうちの1つ、ランサーを召喚する。
最速かつ迅速にことを終わらせたいからな。厄介なのは最優とされるセイバーだが
まぁ、それに越したことはない。」
「………ねぇ、本当に聖杯を貰ってもいいの?」
「構わんよ。聖杯戦争という戦いに箔をつければそれで良い。私は聖杯に興味がないから、
好きに使っても構わない。」
「感謝するわ。」
「………だが、くれぐれも私の邪魔はするなよ?」
「ええ、わかっているわ。」



続く。