祖母の家に居ました。
遠い県外で暮らす祖母の家です。
いとこもそこで暮らしていましたが、その日は祖母と自分の二人だけでした。
確かに、二人だけでした。
祖母の家には仏間と寝室が大きな麩で隔たられているだけになっていて、普段は開放していました。
その日もそこは開け放されて、自分はその部屋の廊下にある椅子でうたた寝をしていたんです。
祖母も居間で昼寝をしていて、とても暇だったから。
少ししてばたばたと走る音が聞こえ始めました。
見るとこどもが3人、仏間と寝室、そしてそれにぐるりとつながる廊下を走り回ってました。
知らない子です。
それでよく見ると、頭はおかっぱで、なにか透かしが入ったようなしっかりした作りの真っ白な着物を着ています。
女の子が2人と男の子がひとり。
何度も何度も自分の前をわざわざ横切って、走っていく。
なんとなく捕まえなくちゃならない気がして手を伸ばすんですけど、まったくかすりもしない。
壁と自分との幅は、こどもがぎりぎり通れるほどの狭さなのに、そのこどもに触れられない。
風すら掴めない。むしろ、ない。
それを何度も何度も繰り返して繰り返して触れなくて繰り返して、荒っぽく身を乗り出すと、急にあたりが真っ暗になりました。
こんばんは。囲です。
真っ暗なのはそこが真夜中の自室だったからでした。
自室……そう。自分の実家の部屋です。
これまでのは夢でした。
そしてこの時自分は布団の上に座っていて、手を伸ばした形で固まっていました。
直前まで夢の中でこどもに手を伸ばし続けていた自分は、がばっと起きた時にもその残像を追いかけていました。
女の子の後ろ姿が2人。
先を行く子が自分が覚醒するのと同時に緩やかにすうっと消えて、手前の女の子はそのまま。
はっきりそこにいて、立ち尽くしている。
はっきり、そこにいる。
ぞっとしました。
まだいるんです。白い後ろ姿が。
長い振袖の白い着物が、軽く手を挙げれば届く位置に。
あーもうほら、怖いことばっかり考えるからこういうことになる。ちゃんと確かめよう。
そう思って心臓をバクバク言わせながら、そこに立ち尽くしているものに手を伸ばして、目を凝らして……………………思い出した。
袖はもっふもふでした。
モコモコ素材の靴下ってあるじゃないですか。あれみたいな感じです。
あと、よーーーーく見ると縞模様がある。
記憶通り。そう。
女の子は上着を羽織ったスリムな電気ストーブでした。
洒 落 に な ら ね え !!
怖かったからね!?
寝る前にばさっとかけたの自分だけど、すっげー怖かったからね!!?
しかしまあ、暗闇の中でその上着がとてつもなくいいシルエットを作ってました。
もう二度とあんなことはないと思います。