日が暮れゆく道を、餅とペットボトル飲料の入ったビニール袋を下げて歩く。淡い空には細い月がぽつんと浮かんでいた。
「来て良かったでしょ?」
隣を歩くルカが白い息と白い歯を見せる。
「まーな」
両腕に抱える荷物は町内のお年寄り達から頂いたものだ。彼らは口々に祖父の話をした。それは知っている話もあれば、知らなかった話もあった。
「でもこんなに抱えきれない」
「ちおりんのおじいちゃんの人望でしょーん? 受け取りなさいよ。ちおりん、今までは受け取ろうともしなかったのよ」
確かにその通りだった。行事に積極的に参加する性格でもなかったから。
地域の中での祖父の姿さえ、うっすらとしか知らなかった。
「ルカ」
「んにゅ?」
「今日はありがとう。あんたが引っ張ってくれなかったら、気付けなかった」
ルカはニヤニヤと口元に手を当てた。
「何よ、珍しく素直ねん」
「たまにはね」
今度から地域の行事には出来るだけ顔を出そうと思った。それは時に煩わしく感じることもあるが、社会で暮らすには大切なこと。しがらみや、繋がりというもの。
「ちおりん、手を繋ぎましょ」
言うが早いかルカがビニール袋ごとこちらの手を握る。手袋越しにじわりと体温が広がった。
「人って独りじゃ生きていけないんだね」
「そうよ! 今更知ったの?」
繋がった手を、ルカがブンブン振る。
「そうだよ」
とっくにこちらを家族と認識していたイサクや、当たり前に受けいれていた町の人々が脳裏をよぎる。
「気付いてなかったんだよ」