フレ→→→→ユリ、オールキャラ。 ギャグです!ユーリはノンケです!くだらないのでご注意を!
21年間生きてきて、生まれて初めて野郎に告白された。
勿論、自分の秘密だとかなんとかを「告白」されたワケではない。好きだ、と言われるアレだ。
しかも相手は幼なじみで親友で、さっきまで本気で勝負をしていた、正真正銘の「男」だ。
「…どっかヘンなとこでも打ったか」
「僕は正気だけど」
「正気のやつの行動には思えないんだが」
「照れてるのかい?」
「どけっつってんだよこの変態!!!」
さっきまで合わせていた刀を振り上げるが、寸でのところで避わされた。
相変わらず良い動きだ。悔しいが。
星蝕みの脅威に打ち勝つため、己の信念を確かめ合うため。
ここオルニオンの地でオレとフレンは一騎打ちをした。
なんとかオレが勝ったものの、マジでどっちか死んでもおかしくないほどの勝負だった。
それというのもフレンの野郎、全く手加減しやがらねえ。いやオレもしてないが、周囲の被害のこととか一応気にして、秘奥義を出すのは躊躇してた。
だがフレンの猛攻に余裕もなくなり、とうとう秘奥義を繰り出した。
そしたらあの野郎、カウンターで自分も秘奥義出してきやがって、後はもうお互い技と技の応酬だ。
どうにかこうにかカタが着いたが辺りは(主にフレンのせいで)焼け野原と化していた。
街の入口からなんだか突き刺すような視線を感じたがとりあえず無視してフレンと語っていた、その時。
フレンがいきなりオレに覆い被さってきて言ったのだ。
「好きだ、ユーリ」
で、最初のやり取りに戻るわけだが。
「もう一度聞く。正気か、おまえ」
「何度でも言えるよ。僕はユーリが好」
「うわああぁぁっ!!それ以上言うな!!!」
「…ユーリは?」
「は?」
「ユーリは僕の事、どう思ってる?」
「どう、って」
正直、頭痛がする。勿論、フレンの事は嫌いではない。
が、それはあくまでも親友としてであって恋愛対象としてどうだなどと考えた事もない。
だいたい、男同士だろうが。いろいろ前提が間違ってる。
痛む頭を押さえつつ、オレは逆にフレンに聞いてみた。
「…おまえ、いつからオレのことそういう目で見てた?」
「え、いつだろう…。物心ついた頃には」
「…………………」
じゃあ何か。こいつにとって、オレはずっと恋愛対象だったって事か。
笑えない。いろんな意味で。
「…それで、何で、今このタイミングなんだよ」
「絶好のシチュエーションだと思ったんだけど。最終決戦前に気持ちが通じ合って、しかも綺麗な夕暮れに二人っきり、とか」
「……オレには夕日が霞んで見える…」
「え、どうしたんだ!?」
「いろいろ情けなくて泣けてきたんだよ!!」
「で、返事は?」
「てめえ……」
にこにこしながらこちらを伺うフレンの気が知れない。なんだこの、やけに余裕の態度は。
いや、何も考えてないだけかも。
「とりあえず、却下」
「何でだい?」
「何で、じゃねえ!!オレは野郎とどうこうする趣味はねえんだよ!!」
「大丈夫だよ、僕がユーリにするほうだから」
「…マジでいっぺん死んどくか…?」
本気で刀を向けかけたが、最後の理性で何とか押し止めた。
頑張ったな、オレ。
「できるだけ早く返事を聞かせて欲しいな」
「さっきしただろうが」
「はは、ユーリは照れ屋なんだな。待ってるからね。じゃあ」
オレはもう何を言う気力もなく、街へ戻って行くフレンの背中をただ睨みつけていた。
疲れきって宿に戻ったオレに、仲間達が追い打ちをかける。
「お疲れねー、青年」
「どっか行けおっさん。今のオレはすこぶる機嫌が悪い」
「ち、ちょっと何なのよ!?」
「フレンと何かあったんです…?」
何かあったなんてもんじゃないが、あんな事話せる訳もない。
「一騎打ちして友情を確かめ合ったんでしょ?フレン、すっごく嬉しそうだったよ!」
「のじゃ。にこにこだったのじゃ」
「……あいつは、そうかもな……」
「何よアンタ、もしかして負けたわけ?それで不機嫌なの?ガキじゃあるまいし」
「おまえらな……」
「ユーリ、そのお友達からなのだけれど」
散歩に出ていたジュディが戻って来てオレの隣に立った。
「話したいことがたくさんあるから、今夜は自分のところに来て欲しい、だそうよ」
「………あの、野郎………!!」
よりによってジュディに言うか。確信犯だろ。あ、絶対バレてる。
ジュディの笑顔が綺麗すぎていやな汗が止まらない。
「おおぅ、熱烈なラブコールじゃのぅ〜〜」
「頼むからやめてくれ」
「ユーリ、もしわだかまりがあるなら早く解消したほうがいいです!フレンのところに行って下さい!」
「そうね〜。んな顔でうじうじされてんのもウザいし」
「うじうじなんかしてねえよ」
「ボ、ボク、応援してるよ!頑張って、ユーリ!!」
「…ありがとよ」
できれば応援されたくない。つか必要ない。
だがこのままここにいてもこいつらに説明できるわけでもないし、何よりもしもフレンがこっちに来たらやっかいだ。
妙な事でも口走られたらたまったもんじゃない。
仕方ない。
オレは重い腰を上げ、フレンの元へ向かうために立ち上がった。
「ユーリ」
「ん?何だ、ジュディ」
「明日からの戦いの為の体力、ちゃんと残しておいてね?」
「…………………」
どういう意味か深く考えるのも嫌になって、オレは曖昧に返事をしながら宿を出た。
「…隊長はヨーデル殿下とお話し中です。戻られるまで……中で、お待ち下さい」
「あっそ。んじゃそうさせてもらうわ」
よそよそしい態度のソディアに案内され、オレはフレンの私室へ入った。
どうでもいいが、フレンの気持ちを知られたら今度こそ殺されるんじゃないだろうか、オレ。
椅子に腰掛けて暫く待ったが、フレンはなかなか戻らない。人を呼びつけといていい身分だ。
そのうち昼間の疲れが肉体的にも精神的にも(主にフレンのせいで)押し寄せて、不覚にもオレは眠ってしまった。
「……………」
「………おい」
「ゆ、ユーリ…!」
「おい!!」
目覚めた時、オレはベッドに転がされていた。
そしてまたもや覆い被さっている、奴の姿。
「おまえの言う『話』ってのは、人の寝込みを襲うことか!?」
「だって、ユーリがあんまり無防備だから、つい」
その点は否定できないが悔しいのでスルーする。
「だいたい今日告った相手にいきなり何する気だてめえは」
「何って、そりゃあナニしか」
「鼻息荒くしてんじゃねえ!!」
マジ勘弁してくれ。
オレは必死で逃れようと身をよじるが、フレンに両腕をしっかり押さえ込まれて身動きできない。
「ユーリ…」
フレンの顔が近付く。
ヤバい。キスされる。
そんなの死んでも御免だ。
オレは固く目を閉じ、必死で顔を背けた。
「…………?」
暫く待ったが、それ以上フレンの顔が近付く気配はなかった。
その代わり、何か温かいものがぽたぽたとオレの顔や胸元に落ちては流れていく。
まさか、涙?
あまりにも強く拒絶したから、泣かせてしまったのだろうか。
でも、そんな。いい歳した男が、そんな……
「フレ、ン?」
恐る恐る目を開けて見上げたそこには、
流れる「鼻血」もそのままに、オレを凝視するフレンの顔があった。
オレは声にならない悲鳴を上げ(人間、本当の恐怖を感じた時には声が出ないというのはマジらしい)、自分でも信じられない力でもって自身の身体を思いっきり引き上げると、渾身の回し蹴りをフレンの脇腹に叩き込んだ。
テーブルやら本やら巻き込みながらフレンの身体は吹っ飛んでいき、壁にぶち当たってぱったり倒れた。
ぴくりとも動かない。死んだかな。
その後、物音に驚いた仲間達が部屋に駆け込んで来た。
皆一様にぎょっとした表情でオレを見つめ、次いでボロ雑巾のようになったフレンに気が付くと、エステルが慌てて治癒術をかけ始めた。
「隊長、しっかりして下さい、隊長ッ!!」
「だ、大丈夫です、アバラが何本かいっちゃってますけど、すぐ治りますから!!」
「ユーリ、どうしたのっ!!血まみれだよ!?どこか怪我したのっっ!?」
あまり考えたくないが、オレの顔やら胸やらにはべったりと血がこびりついていた。
フレンの、鼻血が。
「ん?フレンちゃん、鼻血まみれだけど顔は殴られてないみたいよ?」
「あれ、本当ですね?…ユーリ?ユーリは怪我は…」
「…ねえよ」
「え、それじゃその血は一体…」
その場にいる全員が、オレとフレンを交互に見つめる。
ちなみにオレはベッドの上に胡座をかいたままだ。服を脱がされていなかったのが不幸中の幸いと言うべきか。
それももう、あまり関係なさそうだが。
「…………………」
「…………………」
「…………………」
どうやら全員、何かを察したらしい。もうどうでもいい。
オレだって被害者だ!!
「…風呂入って寝る。頼むから、一人にしてくれ」
ふらふらと外へ向かうオレの背後からジュディの呟きが聞こえた。
「戦いに支障のないように、って言ったのに…仕方のない人たち」
翌朝。
憔悴しきったオレと複雑な(ジュディ以外)様子の仲間達とは対照的に、フレンのやつは溌剌としていた。爽やかな笑顔に心底腹が立つ。
大事な戦いを前に、これ以上消耗したくない。オレは無視を決め込むことにした。すると、
「ユーリ、殿」
おずおずとソディアが近付いて来て、オレに言った。
「…隊長を、宜しく頼む…」
「………できればオレは、あんたに頼みたいんだけど」
「無理です」
「…………………」
星蝕みを倒すまで、オレの貞操、無事なんだろうか。
ーーーーーーー
終わり