鴻(おおとり)の案内で宇宙局のある場所に来た、晴斗達隊員&司令の宇崎とサンタ見習いのソニア。
そこにはロケットエンジンが搭載されたトナカイがデザインされた機体が。スペースシャトルっぽい機体が鎮座している。
「これはね、ソニアさんのそりと配るプレゼントを搭載出来るようにした機体だよ。『トナカイ号』というべきかな」
トナカイ号…。
「あ、あの…プレゼントなんですが…宇宙空間に散乱してましてー、どうしましょう」
ソニアは嬉しい反面、おろおろしてる。鴻はにこやかに返答。
「それなら既に回収してあるよ。遠隔操作でロボットに回収してるからね〜」
「よ、良かったぁ」
ソニア、安堵の表情。鴻はソニアを安心させている。
「そりを機体に接合させたから、試しに乗ってみて?」
「あ、はい」
ソニアは慎重に乗ってみる。あれ、しっくり来る。違和感がない。
「す、すごいです!そりにのった感覚そのまんまだ!!うわー、すごい!」
「気に入ってくれたみたいで助かるよ。じゃあ俺達はその機体を飛ばす準備に入るから、スタンバイしてて」
「はい」
ソニアは緊張していた。晴斗達はその様子を見ている。
「ソニアさん、いよいよ行くんだ…」
「機体が移動させられてるな。打ち上げ体制に入るぞ」
晴斗達は建物の中からその様子を見てる。トナカイ号は発射台の上に乗った。
外では轟音がだんだん響き渡る。エンジン起動、点火されたんだ。
発射前に鴻からソニアに通信が入る。
「打ち上げ後、軌道に乗ったらうちの遠隔ロボットと合流→その地点で回収したプレゼントを渡すことになる。
軌道に乗り、合流地点まで行けば成功だ」
「わかりました」
司令塔とトナカイ号、綿密に通信しながらカウントダウン開始。
トナカイ号には操縦士がいない。軌道に乗るまでは自動操縦、それ以降はソニア自身が操縦することになる。操縦はそりと同じような感覚で出来るという、謎テクノロジー。
カウントダウンがゼロになった。トナカイ号、打ち上げ。
ものすごい音と共にトナカイ号は宇宙へと打ち上げられた。
司令塔ではトナカイ号の軌道を見ている。隊員達が次々報告。
「トナカイ号、大気圏突破しました。軌道に乗ります!」
「行け…!行ってくれ…!」
鴻を始めとする隊員は祈るような思いでモニターを見ていた。
そして。
「トナカイ号、軌道に乗りました!成功です!あとはロボットとの合流地点にソニアさんが行けばミッションクリアになります」
「あとは彼女にかかっているのか…。頼むよー」
メインモニターにはトナカイ号と遠隔ロボットが映し出されている。
晴斗達も固唾を飲んで見守っている。
トナカイ号が遠隔ロボットに接近。ソニアは操縦に慣れたのか、あっさりとロボットから回収されたプレゼントの袋を受けとる。
袋には大量のクリスマスプレゼントが。
この様子を見た晴斗達は狂喜の声をあげた。
「よっしゃあああああ!!」
「成功したぞ!!」
「ソニアさん、良かったね!」
司令塔が一丸となった瞬間だった。彩音は涙目になっている。
時任、嬉し泣き。
「ソニアちゃん、これで配れるね…。良かったよ〜」
「いちか、嬉し泣き?」
「あやねえだって涙目じゃん」
ソニアから最後の通信入った。
「これでプレゼントを配れます。ゼルフェノアの皆さん、助けてくれてありがとうございました」
御堂は思わず「もう、ドジすんなよー!」と叫んでいる。ソニアも少し泣きそうになっていた。
「また、会えますよ」
司令塔から地上に出た晴斗達。空を見上げると一筋の光が見えていた。
あれは彗星じゃない、トナカイ号のロケットエンジンの灯だ。あんなにも綺麗だなんて。
晴斗達は思わず見とれていた。
本部に帰還した晴斗達。家に帰る時間が予定よりも遅くなってしまったが、この日は仲良く帰ることに。
彩音は鼎をある場所へと誘った。
「鼎、これからイルミネーション見に行かない?綺麗だよ」
イルミネーション…。
「あ、鼎は人多いところ苦手だったよね。無理しなくてもいいよ」
鼎は時間を見た。今の時間帯は人が少ないかもしれない。
「彩音、イルミネーション…行くよ」
「じゃあ行こうか。2人でイルミネーション見にいくの、久しぶりだね」
都内某所・イルミネーションの名所。鼎の予想通り、人手はまばらだった。
「空いてるな…」
「鼎、でっかいツリーがあるよ!ほらほら!」
彩音は少しはしゃいでる。この場所には時任も来ていた。
「あれ、きりゅさんとあやねえじゃないですか!?イルミネーション見に来たの?」
「そうだが」
「今の時間帯、がらがらっすもんね〜。チャンスだと思って来たんすよ」
「私もだ」
鼎の声は少しだけ明るくなる。この場所に御堂と晴斗、霧人・桐谷も合流。
「皆さんここにいましたか」
「きりやーん!しぶやんもいるぅ!」
「ここ、穴場ですし。今日はイブだからがらがらですよ、この時間帯は」
やっぱり皆、空いてる時間帯を計算して来てた。
空気を読まないのは晴斗と御堂。
「鼎さん達いるーっ!めっちゃクリスマス感出てる〜」
「晴斗、空気を読め。お前にはロマンチックの欠片もねーのか!」
ボケとツッコミみたいになっている2人を見て、鼎はくすっと笑った。
鼎は仮面で顔が隠れているのだが、あまり笑わない鼎さんが笑ったことで2人はコント?を思わず停止。
鼎が笑った…。あいつ、ずっと笑えなかったのに…。
御堂は嬉しいのかなんだかで微妙な気持ちに。あの事件以降、鼎は笑えなくなっていた。
その鼎がようやく笑えた…。
しばらくして。
「そろそろ帰ろっか。イルミネーション綺麗だったね。鼎…どうしたの?」
彩音はツリーを見上げる鼎を見た。
「ソニアは今頃プレゼント配っているだろうな…」
「そうだね。司令からの連絡で明日は休みだってさ、ソニアの案件で疲れただろうから、クリスマスは休日にするんだって」
「粋なことをするな」
「いやいや…1番頑張ってたのはメカニック班だよ。彼らこそ、休ませるべきでしょう」
彩音は知らないが、メカニック班はクリスマス当日は休日になっていた。
本部ではグラウンドのクレーターをどうするかで頭を抱えている人が1人。それは宇崎だった。
「ソニアが作ったクレーター…グラウンド直すのかかりそうだぞおい…。年内に間に合うかな…。突貫工事にするわけにもいかないし…うわー」
幸いにも本部の建物は頑丈な造りなため、被害なし。たまたまだが、怪人対策に張っていたシールドのおかげで本部の被害は最小限になっていたんだと推測される。
「メリー苦しみますかよ…。グラウンドの修理費…どんくらいするんだか…。クレーターがデカイから地面、抉れてんぞ…」
そんな宇崎の元に来たのは蔦沼。
「お困りのようだね、宇崎」
「長官!?なんでここに」
「グラウンドの修理は後回しでいいからさ、クリスマス過ごしなよ。
気分転換に僕のおごりで飲みに行くかい?お店は予約してあるよ。行く?」
宇崎は「長官のおごり」というワードに食いついた。
「行きまーす!長官連れてって!」
「よし、なら小田原と西澤・南もいるけどいいかな?」
いつものメンバーで飲み会かい…。ま、今回は長官のおごりだからいいんだけどさ。
そんなわけで宇崎達はお洒落なレストランで洒落乙な飲み会をすることになった。男だらけだが…。
晴斗達は帰り道、こんなやり取りをした。
「鼎さん、メリクリ」
「メリクリだな」
「そんじゃ明後日会おうね〜」
晴斗はバイバイした。鼎は小さく手を振る。
あの頃を思い出した。晴斗は一生懸命手を振ってたっけ。
晴斗は帰り道、鼎さんが「メリクリ」と略したことが意外だった。
鼎さんはそんなキャラじゃないのに…俺に合わせたかな?いや…「悠真姉ちゃん」だった頃の話し方に少しだけ戻ってた。
鼎の中では僅かな変化が起きていた。小さな変化だが…。
ゼルフェノア寮の部屋で鼎はミニミニサイズのツリーを見て呟いた。
「メリークリスマス」
鼎はどこか思いに更けっていた、そんな夜。