創作文章久々に投下。
私の日頃の出来事を元に妄想とか色々な要素をふんだんに盛った文章です。
好き勝手書いてますんで、期待はしないで下さい。←
軽いGL・百合風味(別にそうでもないですけど)なんで、駄目な方はリターン推奨します。
追記から読むことが出来ます。
いつも同じ道ばかり通っていたのに、今日は違う道から帰ることにした。
そんな気になったのも、何となく目に入った路地が気になったからだ。
いつもの見慣れた風景だったのに、すごく魅力的に感じた。
だけど、一度も通ったことはないし、どこに続いているかも分からない。
帰れなくなりそうだったら、また来た道を戻ればいい、と思い進んだ。
しばらく進むと、店を見つけた。
何の店か分からないけれど、何となく店内に入ってみることにした。
「いらっしゃいませ。」
そこはすごく狭い店だった。4畳ほどだろうか。
そして、声を掛けたこの小柄な女の人がここの主らしい。
店内を見渡すと、並んでいるのはシルバーアクセサリーだった。
リング、ピアス、ペンダントなどが多く、ターコイズやサンゴ、タイガーアイなどの鉱物をあしらったものもある。
そのどれもが珍しい形をしていた。
リングを手にとって見てみると、“SILVER”の印と、店の名前が彫られていた。
どうやらオリジナルのようだった。
「どうぞご自由に嵌めて合わせてみて下さい。」
彼女がそう声を掛けてきたので、ありがとうございます、と返事をして物色を続けた。
私はあ、と思わず心の中で呟いた。
今までこんなリングがあったら欲しい、と思っていたデザインのリングを見つけたのだ。
その中でサイズが合いそうなものを見繕う。小指に嵌まるサイズのものを見つけた。
しかし私の指は見た目よりも太いため、恐らく通常は薬指サイズなのだろう、と思った。
それを手に取り、これ下さい、と彼女に手渡す。
その時、良かったらお茶飲んでいきませんか、と声を掛けられた。
いつもならば断っているのに、何だかこの日は素直に飲んでいこうと思えた。
差し出されたお茶は、ベリー系の風味の紅茶だった。ほのかに口の中で甘さが広がる。
美味しいです、と言うと、彼女は笑顔で返してくれる。
そして店の感想からポツポツと言葉を交わしていった。
聞くと、この店のシルバーアクセサリーは、全て彼女の手作りだった。
ひとつひとつ、丹精込めて作っていて、どれひとつとして同じものが作れない。
私が買ったこのリングも、似たようなものがあったとしても同じものはない。
そして、今日のように人を引き止めることをしたのは、初めてなのだという。
私の買ったリングに思い入れがあり、どんな人が買ってくれるのかが楽しみだったらしい。
それから私はしばらく彼女と話を続けた。
思っていたよりも会話が弾み、気付くと2時間は経っていた。外はすでに暗い。
もう少し話をしたいと思ったけれど、店は閉店の時間もとっくに過ぎていて、これ以上は忍びなかった。
それじゃあもうそろそろ、と彼女に声を掛ける。
彼女の顔が歪んだ。そして、また来て下さい、と声を絞るように私に言った。
勿論また来ます、と言って私は彼女の店を後にした。
それから1週間後、彼女に会いに同じ路地に入っても、彼女の店は見つからなかった。
初めからそこには店などなかったかのようだった。
しかし、私の指には彼女の作ったリングが嵌まっている。
webでも彼女の足取りは分からなかった。リングだけが彼女が居た証だった。
大切にこのリングを持っていたら、また会える。
そんな気がその日からずっとしている。