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雫に恋して (銀新)

*長くなっててごめんなさい*
@ないものねだり
Aなんでもねだり
B恋の寿命
CBoo!
D悲しくなる前に




前記事から唐突に続いていきますね。晋助に思いがけず強い視線で見られて、何故なのかドキッと鼓動が乱れてしまう新八くんです。不意を突かれるような事も言われたしね。でも新八くんは視線を外して、おたおたと誤魔化しにかかる。

「え?だ……誰って?何のことです?」

でも晋助は誤魔化してくれない。新八くんの逃げ道を作ってあげない。

「俺と居ても、てめえはよく何か別の事に気を捕らわれてる。気持ちは別のところにある。……俺が気付かねえとでも思ったか?」

その薄い唇にふっと笑みを浮かべて、皮肉げに言う。そしたら新八くんも一瞬だけ泣きそうになって、でも無理やりに笑顔を作り、脳裏に銀さんのことを思い浮かべながらこんな話をするのです。

「……高杉さんって好きな人とか居るんですか?」
「あ?……抜かせ。俺に惚れてる女は江戸には数多だろうがなァ(真顔)」
「そうですか、それは良かったです(←もうツッコまない)。……じゃあ、もしも、ですよ?もしも高杉さんに好きな人が居たと仮定して、」
「仮定?お伽話でも始めようってのか、てめェは(くっくっ)」
「最後まで僕の話聞いてください。あと茶化さないでください。えっと、あくまでも例えばですけど……その、高杉さんに好きな人がいたとします。でも好きな人は、高杉さんの事を好きじゃないんです。高杉さんの想いとは裏腹に、高杉さんの事を好いてはくれないんです。むしろ他の人が好きかもしれない。他の人と仲が良いのかもしれない……どうしますか?諦めますか?(ドキドキ)」

「フン。愚問だな。俺は本気で欲しいものは確実に手に入れる」
「それが、手に入らないものでも?たとえば、手が届かない人でも……」
「俺の手に入らねェもんはねえ」
「す……すっごい自信ですね。いっつも思うんですけど、高杉さんのその自信てどこから来てるんですか?」
「あ?俺ァ無駄なホラは一切吹かねえ。分かってんだろうが」
「うん。いえ、あの、ハイ。高杉さんいっつも本気ですもんね、限りなく本気。でもいいな。その自信家っぷりが羨ましいです。僕に、高杉さんの十分の一でもその自信があったなら……(はあ)」
「だからできもしねェ事を願うな。それは無駄だ(すっぱり)」
「ひどっ!!いいじゃないですか、例えばなんですから!」

晋助こんなんですね、てかいつも本気。ふう、と煙管をふかしながら恬然と語ります。限りなく本気なので新八くんも迂闊にはツッコめまない。
けど新八くんは自信家な高杉さんにちょっぴり戸惑いつつ、どこかで羨ましくもあって。自分には絶対ないその自信を、眩しく思うような、清々しいような気持ちもあるんです。そんな新八くん(可愛い)を改めて見やり、晋助は一言。


「……オイ」
「え?はい。何でしょうか、高杉さん」
「てめえは無駄に男の自尊心をくすぐるタイプだな(ニヤリ)」
「は、はあ!?どういう意味ですか!?僕のことまたバカにしてますか、てかしてるでしょ!(プンプン)」(赤面)

くつくつと喉を鳴らしつつ言ってますけど、つーか思った以上に晋助の好みのタイプ=新八くんんんん?!(だってすげー機嫌いいよ!?)
私は思いますけど、新八くんのような、凄くカワイイんだけどどこか自分に自信がなくて、己の中に譲れない強いものは勿論あるんだけど、あくまでも控えめで凄く優しくて、そしていつだって一生懸命だし真面目だからからかい甲斐もあり、いじめ甲斐もあり、しかもいじめるたびにムキになって反論してくるから延々と愉しめて、しかも顔カワイイ(二回目だよ)(だって晋助面食いなんだよ)、
そんな子は晋助の好みのタイプでしかないんですよ。しかも晋助は自尊心の塊のような男ですよ。そのたっかい自尊心を、超高層プライドを心から満足させてくれる相手じゃないとダメなんだろう。晋助みたいな男ってさー、実は神楽ちゃんとかお妙ちゃんみたいなのが本当の天敵なんでしょうね(賢しくて口がたつようなタイプの女子ですね)。
晋助のような男は新八くんみたいな子とくっつくと、とても本領発揮します。水を得た魚のようになります。ある意味、嫁命みたいな(愛妻家)。
新八くんみたいな子は別に晋助タイプを好きではないけど、全く好きではないんだけど(新八くん)、押されて押されて押されているうちにだんだんと落ちていく。すげー絆されやすいし、強く迫られると途端に弱くなる新八くん。


そんなんで高杉さんと少し心を通わせている新八くんですから、銀さんとのことは置いておいても、近頃はだんだんと笑顔も増えてきました。今ではひとりでお洗濯物などを畳みながら、高杉さんが先日かましたボケを思い出し(注・晋助はボケたつもりはないです)、

「(高杉さんって何であんなに自信満々なのかなあ。ふふ。あそこまで突き抜けてたら逆に面白いけど)」

などと、ふっと笑みを浮かべるくらいにはなってたんです。以前のような元気を取り戻しつつある。でも銀さんはあんまり面白くないわな。
だって自分とギクシャクし始めた頃は新八くんもぼんやりしてる事が多かったし、何より酷く悲しげだったのに、今では新八くんの笑顔も結構戻ってきた訳ですよ。銀さんにも自然に振る舞えるようになってきてる。でもでも、銀さんはそれが面白くないの〜!!

だって分かんないんだもん。新八くんが時折くすくすと思い出し笑いをする理由も分かんないし、徐々に立ち直りつつある理由も全く分かんないし、何より新八くんの好きな男(と、銀さんが思い込んでる男)の事がちっとも分かんないんだもん。見えてこないんだもん。だから、誰なんだよと。


(お前の好きな男って誰だよ、てか俺じゃねーの?)
(お前のいちばん近くに居んのは俺なのに)


……って、こう書くと銀さんも大概傲慢!!晋助のこと言えねえっつの!新八くんが離れていこうとした途端に勿体無くなってくるとか!くっついてた時はめっちゃぞんざいに扱ってたのに!めっちゃ自分勝手に抱くだけ抱いて、勝手に満足して、そのくせ新八くんを手放してあげない、つかうちの攻め達ってどんだけ!(独占欲強いのですね)

まあ良いとしまして、良くないけどいいとしましてね、前まで新八くんのことを適当な発散対象にして盛ってたバチが当たったのか、近頃の銀さんは無性にイライライライラしておりますよ。一向に晴れないモヤモヤが胸を覆っております。


「(最近何か新八の奴おかしくね?何か……俺とこうなる前みたいに戻ってるっつーか。ちょっと前までは凄えぼんやりしてたくせに、他に好きな男ができただけで……俺のことは吹っ切れんのかよ)」


すっげえイラついてる。今も二人で居間に居て、新八くんは銀さんにお茶運んだりしてくれるけど、もうあまり近くも寄って来なくて、だから銀さんも前みたいにふざけてチューとかしないし(できないし)、もちろん手ェ出すとかできるはずもなく、イライライライラしております。
でも新八くんは敢えてあんまり銀さんの側にはいかないようにしてるんじゃないかな。やっぱり好きだから。たまに迂闊に近くに寄った時にですね、銀さんの目線がギラッて鋭くなる一瞬があるので、それが怖くてあんまり近くにいけないの。でもそのギラッてのはアレですよ、単に銀さんが新八くんによろめいてるだけなんですけどね。単に一瞬ムラっとしてるからなんですけど、獣の鋭さを放ってるだけなんですけど、そんなん新八くんは分からないんで。

銀さんが男っぽくてかっこいいとはもちろん思ってるけど、それ通り越して怖い時が最近ある。思い違いかもしれないけど、たまに絡み付くほど執拗な視線で見られているような、そんな気もする(そして思い違いではない)。


「(何か最近の銀さん……たまに怖い)」

って思ってる新八くん萌える〜。怖がられてる銀さんも萌えます。すごく。
だからお買い物も今は一緒に行かないかもな。ギクシャクする前はよく一緒に行ってたけど、新八くんから見た最近の銀さんはイラついてる事が多いし、そういう時の銀さんてやっぱり怖いし、ひとりでお出かけしてると高杉さんにばったり会ったりもして気がまぎれるので、最近の新八くんはめっきりと一人行動が多くなってんの。


だからね、今し方お洗濯物をたたみ終わった新八くんが、

「あの、お夕飯前に買い物に行ってきますね」

などと、おずおず銀さんに申した時にですね、

「あ、俺も行くわ」

なんてサラッと銀さんに返された時の、新八くんの驚きようといったら。思わず大きな目をさらに大きく見開き、えっ、みたいな。

「えっ?……いえ、いいですよ。だいたい今、雨降ってますし。僕、歩きで行くんで。バイクに乗る必要もないですし(あせあせ)」
「歩きでもいーよ。俺が行きたいから行くだけ」
「え?……え?でもやっぱりいいですよ、あの、銀さんに悪いですから(引き続きあせあせ)」
「悪くねえよ。それとも何、ひとりで行きてェ理由でもあんの?」(←意地悪で言ってます)
「はっ!?な、ないですけど。理由とか……そんな」

モヤモヤしてる銀さんなんで、今だけ一緒に買い物に出る理由は言わず、でもね、新八くんひとりで行かせない理由なんてアレよ!?
新八くんが外で男と会うんじゃないか、最近ひとりで出掛けてんのはそれが理由なんじゃないかと疑ってるだけです。まあ晋助に時々は会ってるから、銀さんの疑いは合ってるっちゃ合ってます。しかし女房に浮気されてる旦那みたくなってる。猜疑心の塊のようになってる銀さん。

そして二人で出たら、外は雨。しとしとと降り続く雨もけぶる、薄暗い夕方。夜も迫る雨の街。
まず銀さんが傘をさして、続けて新八くんもさそうとしたら、

「別に一本でいいだろ。荷物になるし」

って銀さんが言うの。でも、って言い淀む新八くんに別になんてことも無いように笑いかけて、

「いらなくね?前みたいに二人で傘入ればいいじゃん」

と。そしたら新八くんも銀さんに強くは出れないので、戸惑いつつも「……ハイ」って頷く。
僕が意識し過ぎなんだろうな、って。銀さんは多分何も気にしてないんだな、って新八くんは思います。

「(別にこんなの……前からよくあったし。銀さんは気にしてないみたいだし)」

結論付けて、銀さんがさしてくれた傘に入って、二人で相合傘で道路に出る。
そしたらまあ雨の路傍ですから、道行く車だって水溜りの水をバシャッと跳ねますよ。自然の摂理。でもそれを咄嗟に新八くんは避けられないでしょ。新八くんなので、「わわっ」とか言って感知はできてても反応は一瞬遅れます。

けど危うくずぶ濡れになろうかと思えた寸前、傍らの銀さんからぐいって腰を引き寄せられて。



「危ねー。お前もう少しでずぶ濡れになるとこだったな。相変わらず鈍くせえの」

銀さんは平然としてますけど、新八くんはドキドキ。口から心臓飛び出そう。だって仕方ないとは言え、図らずも銀さんから抱き寄せられている格好です。物凄い久々に銀さんに密着したわけです。
久しぶりに感じた銀さんの体温。間近で嗅いだ銀さんの匂い。自分の目線よりずいぶん高いところにある銀さんの端整な横顔。これらに乙女新八くんがときめかない筈はなかった。

「……あ、あ、えっと、あの、ごめ、ごめんなさいっ(ドッキドキ)」

って新八くん、めっちゃテンパってんな。目なんかぐるぐる回ってますし赤面ですし、もう呂律すら回ってねえ。でも銀さんはそんな新八くんを間近で見てんのに、何も言ってくれない。

もう車も通り過ぎたのに、もう水跳ねの心配もないのに、まだ新八くんを離してくれない。それどころか、さらに腰を抱き寄せられて。
新八くんは戸惑って上を向くんだけど、銀さんはまだ何も言ってくれない。でもどこか辛そうなその顔は常にない表情で、新八くんの鼓動はドキッと大きく乱れるんです。

「あ、えっと、その。ぎ……銀さん?なに?」
「……このままキスしたら怒る?」

──って、今更ながらだけど新八くんの身の回りって攻めだらけじゃね??!!(本当に今更だよ)ほんと怖いわ。何これ、晋助だの銀さんだの、ほんと好き勝手に新八くんを攻めてくるなこれ。お前たち秩序とかねえな〜。新八くんが一歩歩けば攻めに当たる、そんな世界じゃねーか銀魂の世界観。いや怖いわ(お前の妄想力もどうかと)

でも銀さん本気の目ね。新八くんの事を茶化して言った訳でもからかった訳でもなくて、少し切羽詰まったように、余裕なさげに言われたものだから、新八くんだってときめきましたよ。だってそんな風に聞かれたことないもの。
以前は銀さんがしたい時に簡単にチューできたし、新八くんもさせてたけど、もうずっと、新八くんが拒否ってからはキスだってないんですよ。

しかも今は間近で銀さんを感じている。自分を抱き締めてくれる逞しい腕と、銀さんの熱い眼差し。しかも今は目と眉が近いからね?これをさっちゃんモードで見ると、「………っ!」って、もはや声も出せずにゴロゴロ転がっていくレベルの銀さんですからコレ。


だからもちろん新八くんだってときめいたし、何ならキスして欲しかった。でもここで流されてキスしてしまえば、きっと二人の関係はまた元のように戻ってしまう。
銀さんが欲しい時だけ慌ただしくセックスして、新八くんは抱かれるたびに傷付いて、でもどうしても銀さんを拒めなくて、新八くんはいつだって真心を差し出すけど、銀さんからは心を差し出してもらえなくて……そんな簡単にまた逆戻りしてしまう。それだけは嫌だったんです。だから、もちろん流されてキスする方が簡単にはちがいなかったんだけど、むしろそうされたかったんだけど、久しぶりのキスに期待する気持ちも、もちろん下心だってあったけども、新八くんは震える声で言った。

「……い、嫌……」

弱々しくも、銀さんの胸板を押し返した。震える指でね。本当は抱き締めてて欲しかったけど、キスして欲しかったけど、勇気を出して、勇気を振り絞って拒否したの。これは恋する乙女としてどんだけ勇気のいる行為でしょうか。理性を総動員した新八くんですよ。

でも銀さんはそんな新八くんの内心を知らないのでね、そして銀さんは多分にキスくらいはまだイケると思ってたから(銀さん)、やっぱりカチンとくるわな。カチンときて、新八のくせにまだ俺のこと拒否んのかよって。何でもう俺とキスもしねーんだよ、俺にはもう何一つさせねーのかよと。

他の野郎にさせてて、何で俺だけと。他の男は良くて何で俺が駄目だよ。何で?おかしいだろ、って。


銀さん「は?…………なんで?」(凄い低い声)
新八くん「だって、こ、こんなの……間違ってます。嫌です(びくびく)」
銀さん「ああ?何でだよ。キスくらい、こんなん別になんてこともねーだろ。抱かせろっつってる訳じゃねーじゃん。それとも何かよ、てめえの好きな男に操でも立ててんのかよ(イライラ)」

うわうわうわわわ〜。銀さん凄い勝手ね〜。でもイラついてる銀さんは好きですね。ゲスくても銀さんかっこいい(お前の主観過ぎるだろうと)
新八くんはイライラしてる銀さんにすげー怯えてるんだけど、でも強い心を持ってる子なんで言いますよ。


「銀さんは……そうだろうけど」
「あ?何がだよ」
「銀さんは、その、キスくらいなら誰とでも遊びでできるかもしれません。でも、僕にとっては『キスくらい』じゃない。もう僕はしません。僕は、僕のことを好きな人としか、もうこんな事はしたくないんです。僕にだって……違う、“僕も”、自分なりのプライドはあります!!」

ちょっと涙を浮かべてるけど、強い瞳でね。高杉さんほどの強さもプライドもないけど、せめて僕にだって自分を守る矜持くらいはあるって。自分を大切にする気持ちだってあるってことです。自然と高杉さんの事を思い出して、勇気を振り絞った新八くんですよ。

そしたら銀さんもやっぱりムカッとして、無理やりキスしてやろうかって気持ちにはなるんですけど、なんとか押し止まって、スッと新八くんから身体を離してくれるんじゃないですかね。むしろそのまま、無言で傘から出ちゃう。

新八くんは目の前で銀さんのこの変化を見てるので、

イラァッ→憤怒→沈静化→別離

の流れを見てるので、銀さんのことを怖く思いながらも気になってね。やっぱり心配だから。

「ぎ、銀さん!?どこ行くんですか!」

呼びかけますけど、銀さんはもう返事もせず、もちろん傘は新八くんに押しやってますから雨にもずぶ濡れで、新八くんに行き先も告げずにどこかに行っちゃうんです。ふふ。新八くんに強く拒否られた事が内心は物凄く物凄くショックだったんでしょうね。

だって銀さんだってもちろんキスしたかったんですよ。久々に新八くんを腕に抱いて、くらっときましたよ。己の腕の中にすっぽり収まったその身体。不安と緊張に固まってる、小動物のような姿。何回も抱き合った仲なのに、いつまでも物慣れない初々しいその様子。
上目がちに見てくる大きな瞳。白目がとても澄んでいて綺麗だから、黒目の大きさを際立たせるような、新八くんのその瞳。小さく可憐なその唇。いかにも柔らかそうに膨れているその唇が本当に柔らかいことを、もう既に自分は知っている。
目を射る黒髪の艶やかさ。久々に間近で嗅いだ、うっとりするような新八くんの甘い香り。そして鼻腔を濡らすのは、それとは反対にどこか生々しいような蠱惑的な雨の匂い。くらくらするほど生を立ち昇らせる、その匂い。

しとしとと降り続く雨。雨。それに少し着物の肩先を濡らしながら、怯えたような目で自分を見上げている新八くん。僅かに震えているその細い手首。
痩せてるんだけど決して骨ばっている訳でなく、触ると指先が沈み込むような、指にしっとりと吸い付いてくるような、不思議な弾力があるその柔肌──……


ってもう、銀さんは衝動的にキスしたくなったさ。むしゃぶりつきたくならなきゃ男じゃない、てか何なら抱きたいとすら思った。お前は俺のもんなんだよって、誰にもやりたくないって、何回も何回も思ったセリフをかろうじて飲み込んだ。

てか無理やりキスしても良かった。それを敢えて聞いたのに、理性を総動員して初めて許可取ったのに、銀さん的に考えれば、
新八がいつになくずーっと怒ってっから初めてお伺いを立てたのに(銀さん)、
それなのに結果はNO!!でしょ。怒ったし傷付きましたよね。勝手ながらも新八くんにフラれたことに傷ついたんだ。だからもう居ても立っても居られなくなって、新八くんを残して傘を飛び出して行ったの。


んでね、雨に濡れながらね、

「(新八……俺のこと、マジで吹っ切ったんだな)」

分かっちゃいましたよ。


「(もう俺とはキスもしたくねーのかよ。好きな男とだけしたいって事か。……てか、何で俺はここまであいつの事が気になってんの?)」


ここで初めて、本当に初めてね、新八くんのことを考えて、新八くんのことを考えるだけで、胸がひりつくような、生傷がズキズキと疼くような、狂おしいほどの焦燥と渇望を覚えたんですよ。やっと。
冷たい雨に打たれながらも、不思議と己の身体はひどく熱くてね。鼓動はドクドクと鳴り響き、血潮は奔流している。


手放したくない。
ずっと俺だけ見ていて欲しい。
どこにも行くな。誰のもんにもなるなよ。
俺の側に居ろ。俺だけの側に居てくれよ、


って、初めて強く強く思った。あんな風に拒絶するんじゃなく、また俺に笑顔を向けて欲しいって、そう強く願った。お前の笑顔が俺に向けられていないと嫌なんだよって。
今まで当たり前のように側にいて、だから気軽な気持ちで手を出せたし、好きなようにして自由に扱っていた。でも新八くんが離れて初めて、新八くんの大切さ、自分の中での存在の大きさに気付いた。気付かされた。もう新八くんが心を決めていようとも、他の誰かに決して渡したくないことにも。


「(ああ……何か今、分かったかも。すげー遅かったけど)」

そうやって雨に打たれながらね、銀さんはぼんやりと己の遅すぎる初恋を噛み締めているんですね。

てかほんと遅いってば、もはや手遅れ寸前!!思考回路はショート寸前!




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