*前記事からの続き*



前記事から続いてまいります。
晋助にうっかり組み敷かれて、強引にキスされて、抗う心とは裏腹に、「もうこの人に振り回されたくない……!」と抵抗する心を置き去りに、だんだんと身体は懐柔されていってしまう新八さんの巻から(どこから)。
いや身体はね、ちゃんと覚えてるんです。だって新八さんの初めての男ですよ。純粋無垢な十六歳だったあの頃に無理やりから始まった歪な関係だけれど、新八くんだってだんだんと晋助に惹かれていったから肉欲にも溺れたし、責められると気持ちよくてたまらなかったし、だからこそ、そのたがの外れ方が自分ではないようで、晋助を好きな気持ちを認めたくなくて、ふたりの関係が何なのか考えるとこわくて、辛くて、でもその禁忌を犯してでも会わずには居られなかった高杉さんですよ。大好きだった高杉さん。愛してた高杉さん。
あの頃の僕の──心以外の全てを知ってる高杉さん(ナレーション)(cv.新八くん)

新八さんは既に二十一歳になってますが、十六歳の新八くんだった頃に散々抱かれ、気持ち良いところも既に知られ尽くされてるし、晋助の味も覚え込まされている訳です。
だからね、こう、乱れてしまう。

(抵抗する心とは裏腹に……身体はこの人のことを覚えてる……)(cv.新八くん)

です。覚えてるんです。鎖骨とか甘噛みされると、ああ高杉さんこんな癖あった……って懐かしく思って、きゅうんと甘く胸が痺れて、たちまちに感じてしまう新八さんなんです。十六歳の頃よりずっと骨格も発達したし、筋肉だってついたし、それでも変わらずに高杉さんの腕の中で陶然と感じちゃう。あの快楽を身体はちゃんと覚えてる。
でも晋助は晋助で五年前とそこまで思考も変わってなくて(もう三十代ですが)、だから新八さんの綺麗に筋肉の乗った胸に唇を這わせつつ、

「方々で聞いた話では、テメェはさんざっぱら遊んでるらしいじゃねーか」

みたいなことも、唇をニヤリと歪めながら言ってしまうんですよ。相変わらず意地悪言っちゃう。誰か他に男でもできたのか、みたいな。あくまでも嫉妬ではなく、意地悪で言ってます。もう高杉さん(萌え)。

そしたら新八さんもギクリとしつつ、狼狽えつつも、

「……あ、アンタには関係ない」

とか言って、プイと顔を反らす感じです。晋助は、フン、って鼻で笑ってまたいたずらに唇を這い進める。でも新八さんもさんざっぱら遊んではきたんだけど、やっぱり他の男達と晋助だと全然違うのでしょ?
感じ方が違う。

だってさ、高杉さんは新八さんのいいところを的確に突いてきますからね(言い方)。焦らすようにですね、入り口から浅い所なんかを抜き差しされると新八さんはたまらなくてですね、あの麗しい眉根をきゅっと悦楽に寄せてね、たちまちにイッちゃうんですよ。何回もイッちゃう。
だから、散々に遊んでた割には悪くねえ、的な感想を洩らす高杉さんですよ。むしろ成長して更によくなってんじゃねーか、みたいな(新八さん凄い)

晋助も既に三十代の男ですから、攻め方ももう若いだけじゃない。緩急つける感じですもの、新八さんが達したら息も絶え絶えな新八さんを軽く裏返しにする感じですもの(好きな体位はやっぱり変わってないようです)。んで新八さんをベッドに這わせ、新八さんの腕をぐっと後ろから掴む?手綱取る感じで……あ、やっぱり強引。

けどそうやってね、ちょっと強引に組み敷かれて、感じずにはいられないところを何回も何回も擦られて、新八さんは訳が分からなくなるほど蕩かされてしまうんです。もう。何回も何回も、その夜の高新は交わったことと思います。漆黒の夜が終わり、白々とした朝陽が滲むまで。

でも十六歳の頃と違うことはあってね、朝になっても晋助は帰んなかったと。何故か明け方まで新八さんの側にいてくれたと。何故なのか、その日の高杉さんは新八さんの少し伸びた髪をゆるゆると梳いてたくらいにして、朝まで傍らに寄り添ってくれていたのですよ。
そしたら新八さんも本当に久々にぐっすりと眠れて、もう十六歳の頃のような屈託のない寝顔で高杉さんの胸に縋って寝ているんじゃないかな。すやすやと。

けれど、そんなやって可愛く高杉さんに縋り付いて寝てたらさ、朝起きた時にめっちゃ後悔すんだけどね?(新八さん)朝起きた時に、

「……。……!(隣の晋助に気付いた)……(眼鏡を装着)……チッ、」

みたいな、やっちまった感丸出しで、やさぐれたままで舌打ちとかしてんだけどね!新八さんったら!(萌え)
そしたら晋助は引き続き愉快そうに笑ってんだけど、

「テメェはあの頃と変わんねえな」
「……嘘だ。だってアンタが言ったんだ、僕はあの頃とは変わったって」(←僕に戻ってる)
「……変わんねェものがてめーの中にはあらァな」(さらりと新八さんの髪を撫で)

みたいな話を明け方のベッドでして、新八さんはおもわず頬を染めるの巻ですよ。少しだけ優しげに緩んだ高杉さんの右目には、キュンってしちゃう。

朝陽が優しい光をベッドの上に投げかける、白い朝ですよ。晋助も新八さんも気怠いは気怠いんだけど、どことなく昨夜の名残で身体をくっつけている。
でもおもむろに起き上がった晋助に見下ろされ、

「テメェはこの朽ち果てた町でずっと銀時を待ってんのか?」

と聞かれて。思わず何も言えずに、唇を噛み締める新八さん。そして、

「銀時が居ねえなら……俺と一緒に来るか?」

と問われ、盛大に心が揺れ動く新八さんですよ。もちろん、それはとても魅惑の誘いですよ。新八さんは確かに晋助を愛している。憎んだことも多かったけれど、また肌を合わせてみて確かに分かったのです。
僕はこの人を愛してた。違う、まだ愛してると。

でもね、少し考えた後に、新八さんはゆっくりと首を振りますよ。晋助の誘いには乗らないのです。

「……いいえ。僕は、高杉さんとは行きません。この町でずっと銀さんを待ってます。だって僕が……違う、“僕たち”があの人に、いちばんに『おかえりなさい』って言うんです。……神楽ちゃんのことも心配ですし」

って、優しい笑みを浮かべながら高杉さんに言う。それは十六歳だった頃と何一つ変わらぬ笑顔ですよ。大きな瞳がまろやかな半円を描く、屈託のない笑顔。銀さんが愛してた、神楽ちゃんが大好きだった、新八くんのあの笑顔。
それを見た高杉さんは微かに目を見開き、ふうと一つため息を吐き、長い前髪をくしゃっとかきあげて、

「……今も昔も、テメェだけは俺のものにならねえなァ」

と。半ば諦観したかのような、それでいて優しさも滲ませたセリフを呟く。誰に聞かせるでもなく、独り言染みた感じで呟くんだ。
それを聞いた新八さんはと言いますと、ふふっと微かに笑い、高杉さんの顔を覗き込み、

「すぐに手に入るものなんて、ありがたみがないじゃないですか。それに僕なら絶対諦めません。……高杉さん“も”でしょ?」

なぁんて、茶目っ気たっぷりなイケメンスマイルで告げるのです。そしたら高杉さんはですね、やっぱり少し笑ってですね、新八さんにキスしに行く。てめえは全く……って毒付いて、でもキスしちゃう。そんな明け方ラブストーリー。


そうやって大人同士になっていい距離感を保てるようになった高新も、とてもとてもとても愛してる。