「カンナ大丈夫か?」
「あぁ。顔色も元に戻っている。シノノメ指揮官テンジン砦で宿泊することに感謝するよ。」
「怪我人は見過ごせなかっただけだ。白夜の忍が攻撃したってほんとうか。何か証拠になるものは、ないか?」
「逃げることでいっぱいで何も拾えなかった。」
「依頼された殺し屋か間者か。」
シノノメが頭をボリボリかいた。カンナの瞼が開いた。
「…ジーク無事でよかったよ。」
「カンナ目が覚めてよかった。」
カンナの頭を撫でると嬉しそうに眼を細めた。
「カンナしばらく見ないうちに美人になったな。カムイさんは、元気でいるか?」
「もう三年くらい会ってないけど元気にいるよ。」
「おいおい。ずいぶん長くねぇか。あとで旅の話を聞かせてくれよ。こっちは、旅から帰るや否やでテンジン砦に押し付けれて気ままな旅が恋しいからよ。」
ジークベルトが吹き出した。
「笑いごとじゃねえ。」
「リョウマさん達は、元気でいるのかい。」
「父さんは、あいかわらず白夜の復旧活動と暗夜と交渉で忙しい。ヒノカ叔母さんは、自分の結成した自衛隊で統括。タクミさんは、透魔地域で指導者をしてる。サクラは、民の治療しに行ったりしてる。」
身を粉にするという言葉は、白夜の王族の行動のことを指すのにぴったりだ。
「ユキムラさんが役割が替わるからと俺にテンジン砦の指揮官を任されるように頼まれたわけだ。」
「フフ。リョウマさんも大助かりだね。」
「今日のことがまた起きない限りは、狭いところが退屈だけどな。」
「また?って言うのは?」
「失礼いたします。」
「何事だ。」
「はい。暗夜が民を五人怪我をさせたところを捕らえました。シノノメ隊長尋問を要請いたします。」
「わかった!ジークは、カンナの近くにいろ。」
シノノメが部屋を出て戻ったのは、三日後だった。捕らえた暗夜の人間は、酔って騒いだところを注意した白夜の国民に怪我をさせたらしい。そこを兵士と揉めて取っ組み合いになったそうだとシノノメが教えてくれた。酔った暗夜の人間は牢に入れ身元を調べるそうだ。
「戦争が終わっても白夜は、暗夜にも透魔のことをよく思わないだ。ここに来るまで窮屈だったろ。」
白夜の領地にある公国にも街にも特に持ち物検査が厳しかった。刃物は、当然。魔法具のものとか預けられて没収された。唯一没収されなかったのは、竜石だけだった。
「これは、何ですか。」
「竜石だよ。」
「透魔王の娘ですか。では、くれぐれも暴れなきよう行ってもよろしい。」
見張りの兵の眼は、氷のように冷たい目付きでカンナを睨んだ。無言で白夜の人達から見られることも少なかった。白夜は、最近まで暗夜と透魔に被害が酷かったのだ。戦争が終結しても尚両国民からカンナの父含め透魔の出身だった者をよくおもわないことも大勢いる。
「国王夫婦を謀った人でなしが透魔の王になれるものか」
「引きこもりが王様ができるか」
白夜王国の国民から見た新しい透魔の王カムイの評価は、よくない。彼が遠因でリョウマの父である先代スメラギ王をはじめ。続いて女王ミコトが暗夜の危険物から我が子を身をたてにして殺害されたことが評価に影をさす。
「ガロン王様を変にさせた元凶が聖女の面ができたものだな!」
「また何か隠してる。今度は、誰を洗脳させる気でいる危険人物」
祖国の暗夜の貴族も元透魔王女アクアのことを災いの根元と見る者も多い。
「カムイさんとアクアさんがいたから暗夜と白夜が同盟になることができたものの。国民から見たらカムイさんは、「救世主」であり「白夜の戦犯」と呼ぶものもいる。」
「アクアの方もだぜ。白夜国民から「奇跡の歌声をもった歌姫」とか「聖女」と美辞麗句並べても。「魔女の娘」とも「無能な元・透魔王女」と陰口を叩くのもいるぜ。」
外野の好き放題な誹謗中傷が治まらないから火の粉が新透魔王国に散らされる。
「ねぇアクアさんは、何故「魔女の娘」って呼ばれているの?」
ズルッとシノノメが体勢を崩した。
「カンナ何も聞いてないのか?アクアさんは。暗夜のことは、未来の暗夜王ジークに聞け!」
「ねぇジークどうして?」
「それは、話したくない。」
「はぁ?自国の予習をカンナに聞かすだけだぞ。」
ブチッ。ジークベルトの中で切れる音がした。
「人でなしの再婚相手の女のことを話したくないって言ってるんだ!カンナは、アクアさんの元へ過ごす時間がながかったはずだどうして本人に聞かないだ!」
シノノメとカンナは、珍しく怒鳴るジークベルトに呆然とした。
「だって聞けないだもん。」
「はぁ?」
「アクアさんは、話しかけづらいし。暗夜のことを話題に出す特に聞けなかったから」
ショボンとカンナが頭を垂れた。シノノメがジークベルトに拳骨させた。頭がぐわんぐわんとして倒れた。
「なぁカンナは、これから何処に行く?」
「白夜王国に行きたい。でも行き先を決めるのは、ジークと相談させて。」