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MWな高新(※真面目に閲覧注意)

今日はこの前言っていた、劇場版MWな高新SSをアップしたいと思います。実はこの前MW高新を語った日、日記にもチラホラ拍手があったんです。で、こうなったら何か書きたいなァと悶々としまして(笑)。でも激しく自己満ですよ!!だから閲覧は要注意です。

劇場版を噛み砕いてみましたが、やはり映画を見ていない方はちょっと分かりづらいかもしれません。そして高新ベースなんで、作中でのエピソードは多少いじってあります。その辺を踏まえられた方、割と間口が広い方、ダブルパロが大丈夫な方のみどうぞご覧になって下さい。





――――――…









世界を救うのは、祈りか。

それとも――――…






新八は夢をみていた。花や海が出てくる、常人が“夢”として思い浮かべるような夢ではない。それは新八が幼い頃に実際に体験した、悪夢だった。


夢の中の“島”では、どこからか漏れだした毒ガスで大半の住人は死んでいた。それでもかろうじて生き残った人々は死の恐怖を抱いて逃げ惑い、だが逃亡も虚しく、証拠隠滅を図る政府の人間に次々と殺されていった。

全てを焼き尽くすような炎が舞う暑さの中、新八は逃げていた。正確に言うと、高杉に手を引かれて逃げていた。

『こっちだ、新八』

炎の中囁いた高杉の声は低く、まだ新八の脳裏にはっきりと残っている。その声に導かれるように新八は走り、彼を追い掛けた。

死にたくなかった。生きる為なら、例え悪魔にだって身を委ねられる。
そう思って掴んだ高杉の指先は、炎の中でも驚くほどに冷たかった。





阿鼻叫喚の一夜が終わった後、高杉は新八に告げた。

『俺達が見た悪夢を、あいつらにも見せてやる。…許さねェ、永遠に』

“あいつら”という単語が指すものが政府であり世界であることを新八が知るのは、もうしばらく経ってからだ。その頃の幼い新八は、全ての家族を失った絶望と高杉しか頼れる人間がいない不安に、彼の意見は全て正しいもののように感じていた。彼が全てだった。

だから彼と約束をしたのだ。

『…うん。でも怖いよ、今度は晋助が殺される。死なないで。僕を独りにしないで』

『俺は死なねェ。…お前が居るから、絶対に死なねえよ』

不安にうち震える新八を抱きしめ、高杉は呟いた。そうやって安堵した新八が眠るまで、ただひたすらに彼はそうしていてくれた。だが、新八はまだ気付いてはいなかったのだ。


自分達の育った島の島民達が死に絶えていく地獄絵図を見ながら高杉が囁いた声は、ひどく冷めていた。
紅蓮の炎に照らされているのに、氷のように冷えた横顔。
その心に、冷たい復讐の刃を研ぎ澄ましていたことに。



―――…

ひどい汗と暑さに新八は目を覚ました。額の汗を拭うと、まだ午前1時過ぎだ。ふと見上げた時計はいつも新八が祈りを捧げる教会の古ぼけた代物ではなく、無機質な金属でかたどられたものだった。その違和感に、ここは高杉の部屋であったことを思い出す。

「よォ、起きたか。…うなされてたぞ、神父様。また悪夢か」

くつくつと喉の奥で低く笑い、高杉が新八に歩み寄る。その言葉にため息を吐き出し、新八は高杉を軽く睨んだ。

「ああ、そうだよ。…あのいつもの、悪夢をみてたんだ」

“いつもの”というキーワードに、高杉の眉がひそりと持ち上がる。そのまま彼は新八が横たわるベッドサイドまで歩み寄り、その独眼で新八を見下ろした。

あの地獄の一夜で負った傷のせいで、高杉は左目を失った。新八を庇った際につけた傷だ。眼帯で覆われたその左目を見る度、新八の心にはいたたまれない思いがこみ上げる。

それが愛かもしれない、と気付いたのはいつだったのだろうか。高杉と肉体関係を持ち始めてからすぐだったかもしれないし、何年か後だったかもしれない。

新八にはもうよく分からなかった。


「…お前の悪夢は、俺が全部消してやる。お前を救ってやる、そう約束したじゃねェか」

ベッドサイドに屈み込んだ高杉はそう呟いて、新八の頬をゆっくりと撫でた。その指先の冷たさに、新八は不意にまたあの夜のことを思い出す。だから彼の手に震える指先を添えた。あの夜のように、真摯な瞳で高杉を見上げる。

彼が“悪夢”と称するあの夜の出来事が何故起こってしまったのか、今まで生きてきた人生の中で二人は様々な資料を集めた。その結果、色々なことを知った。

あの日自分達が育った島の島民を殺した毒ガスが『MW』と呼ばれていること。たった数ミリグラムで何万もの人間を死に至らしめること。

そして、新八を庇いながら逃げる際に高杉が吸い込んだ微量の『MW』は、彼を人間ではないモノにした。復讐の為に生きる生き物、冷酷な獣へと彼を変えてしまった。


もう既に高杉は色々な人間を殺している。それこそ政府の高官から、彼の邪魔になるという些細な理由で目を付けられた、関係のない人々まで。

だから新八はもう彼に復讐を止めて欲しかった。その冷徹な殺人行動を見たくなかった。だが神父として、神に身を捧げた者として殺人を止めたいというのは建て前であり、新八の偽善だ。



新八は高杉に、『MW』ではなく自分だけを見ていて欲しかった。


「…お前に悪夢を見せる連中は、俺が消す。俺が、必ずそうしてやる」

「ありがとう。…でも、もう止めて。復讐なんて、止めてよ。もう誰も殺さないで。お願い、晋助」

もう一度決意するように囁く高杉に、新八が縋るように手を伸ばす。だが高杉はその新八の手を無碍に払った。

「お前が命令するな。俺ァただ、あいつらを消す。あいつらを壊す…それだけだ」

寄る辺を失ってするすると滑り落ちる新八の指先が、ベッドサイドにぱたりと落ちる。そのまま覆い被さってきた高杉がそんな新八をゆっくりと見下ろした。

「…晋助、」

「もうテメーの説教は聞き飽きた。せいぜい、いい声で鳴け」

乱暴にはだけさせられたパジャマの下の素肌に唇を寄せられ、新八の声が震える。それでも、先程重力のままにだらりと垂れていた筈の新八の両腕は、高杉の背にしっかりと回っていた。



こんなセックスを何回すれば、自分達は救われるのだろう。

何回神に許しを乞えば、祈りは天に届くのだろう。

高杉はもう、新八の力では止められない。そして彼の強烈な殺人衝動は、いつか自分にも向けられるような気もする。いつか自分すらも、彼は亡きものにしようとするだろう。

それなのに高杉に支配されたがる体と、どこかで彼をまだ信じたい心が新八をゆっくりと切り刻み続けている。
あの地獄のような夜から時を超えて、甘く、残酷に。



いつか、自分達は神の裁きを受けるだろう。あの夜見た地獄は再び始まるだろう。

否、もう既に始まっているのか。



「…晋助、一緒に死のう?」

「ふざけるな。もう黙ってろ」


新八が囁いた言葉を口付けでかみ殺し、高杉が乱雑に彼の薄い胸板をまさぐる。その冷たい指先を暖めることさえ、今の新八にはできない。



それでも、今はただこうしていたい。
たとえこの先に待ち受けるものが、本物の煉獄だとしても。




密やかな営みに身を任せ、新八はゆっくりと瞳を閉じた。







end

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