吉原で芸妓さんのバイトをしてた新八くん(仕事を選ばない万事屋さん)を、不逞浪士取り締まり中の土方さんが偶然発見し、土方さんは驚きつつも何故か咄嗟に新八くんの手を引いて、颯爽と吉原を後にすればいいと思います。あ、土新です(脚注)
何でしょうか。土方さんもついカッとする事はありますよ。だって新八くんがわりと平然と芸妓さんのバイトをしているので、わりと普通に酔っ払いのあしらいをしてますので、とっても自然なことのように酔っ払いに口説かれておりますので、その酔っ払いに気安く肩などを抱かれておりますので、そして新八くんの女装姿はカワイイので、てか新八くん自体がかわいいので(大事)、
そりゃ土方さんもついカッとなってしまい、何故か物陰から飛び出していってですね、
「ひ、土方さん!どうしてここに?!」
って驚く新八くんの手首を咄嗟に手に取り、無言で、
「…………」(キッ)
っと新八くんをひと睨みしたくらいで、その場を立ち去ろうとする土方さん。しかし直前まで新八くんに絡んでたモブ(こういうモブを出すのがユカリはとても好きだ)は、当然面白くない。自分が口説いてた女(と、モブは素直に思い込んでいる)を横から掻っ攫おうとする色男(土方さん)の存在なんて、まったく面白くない。そして、
「ああ?!なんだテメー、やんのか!?その女に先に目ェ付けたのは俺だぞ!」
などと喚くモブ(こういうモブに愛の手を)。喚きつつ、腰の刀を抜きかけるモブ。鈍く光るその刀身に、周囲にいた太夫やら禿やらから悲鳴が上がる。
しかし土方さん、そんな場の混乱の中でもまったく動じず。こめかみに青筋立ててるくらいのもんです。てか対峙してる相手との力量も分からないモブにマジでイラァッとしてるので、ギロリとその酔っ払い浪士を一瞥し、マジ射殺す勢いでガン睨みして(新八くんを睨んだ時の比ではなく)、
「……やってみろ、真選組の副長の前で刀を抜く意味が分かってんならな」
と、眼光鋭く言い放つくらいのものです。刀の鯉口を僅かにきってみせるくらいのもんです。土方さんの脅しは素敵である(着眼点)。
そしたらモブも、「なっ、真選組の副長だと?!」ってビビり倒して、その辺の見物客にぶつかりつつも腰抜かして逃げていくので(だからこういうモブに愛の手を)
その後で周囲の騒然にようやく気付き、自分たちがすっかりと注目の的になっていることに気付いて、土方さんはそこで、
「……行くぞ」
って、新八くんの手を取ってですね、周囲の視線を突っ切るように吉原の大通りを歩いていっちゃうの。不機嫌そうなままね!
新八くんは慣れないぽっくり下駄姿でカラコロと音を鳴らして、足が痛むのも構わずに小走りで走ってついてくんだけど(歩幅が違うので)、そのうちに鼻緒がブチっと切れて、つまずき、土方さんの背中に顔をドンとぶつけてよろけてしまう。
「あっ!ごめんなさい、土方さん!背中に白粉が……」
自分の足の痛みも置いておいて、土方さんにせっせと謝る新八くん。土方さんのことばかりを気にしている新八くん。何なら土方さんの隊服の背中をポンポン叩いて、ついてしまった白粉を払っているくらいの新八くん(世話焼き)
そんな新八くんを見ているうちに土方さんの不機嫌もすっとおさまってきて、ふっと少し優しげな顔で笑い、
「……悪かったな」
って、不意に謝る土方さん。
新八くん「えっ!?い、いいですよ、土方さんに謝ってもらうことなんて何も……てか僕が何かしましたか?」(きょとん)
土方さん「いや、いい。……それより、鼻緒が切れてたな。見せてくれ」
新八くん「あっ、気にしないでください。大丈夫です、こんな事くらい」(あせあせ)
土方さん「よくねえよ。見せてみろ」(有無を言わせず)
↑こういう時の有無を言わせぬ勢いの土方さんもちょうかっこいいんで、オーディエンスは死ぬんで(ユカリ含む)、その厳しくも優しい眼差しに新八くんもときめき果てて、心臓の高鳴りは最高潮で、ほっぺなんて真っ赤で、かああってなってしまって、
新八くん「……は、ハイ」(コクン)
頷くくらいしかできないんで。当然ですよ、跪いた土方さんに「見せろ」なんて顔を上げて言われたら、当然のごとく新八くんは頬を染めて、鼻緒のきれた下駄ごと傷んだおみ足をスッと晒しますよ。コクン、しかないでしょうよ。こういう場合の新八くんは最早乙女ですよ、だって相手は土方さんです。
余談ですが、これが晋助や銀さんだったらば、こうも上手くはいくまい。まずワンクッションはあるわな(頑張れお前たち)
そしてですね、鼻緒が切れたのは元より、鼻緒が擦れて赤くなって擦りむけてしまった皮膚にも気付いて、新八くんが足を痛くしてた事にも気付かなかった自分にようや思い至り、ますます気にやむ土方さん。
土方さん「……足を傷めてたのか」
新八くん「へ、平気ですよ!こんなの別に痛くなかったです。それより、土方さんが何も喋ってくれなかったから、そっちの方が気になって」
土方さん「まったく……かなわねえな」(ふっ)
そして、新八くんの姿を改めて眺めて、優しくその頬に手を添える土方さん。お前が好き好んでこんな格好する訳ねぇことは知ってる、と新八くんに言い置いてから、
「お前のこんな姿を、誰にも見せたくなかった」(少しばつが悪そうに)
です。ばつが悪そうな時は、頭をガシガシと掻いてると思います。でも土方さんなら、己の本音を喋ってくださると思うのです。
どこの誰とも知らない男に新八くんが気安く触られて、それが好いてる子を軽んじられたようで嫌だったのだと、ちゃんとお話してくれます。
↑こういう時の土方さんに、逐一新八くんはときめく(当たり前だ)。
「!!……土方さんのばか!(赤面)」
とでも、言い募っている事と思います。
そして、
土方さん「あ?馬鹿だと?……そりゃまあ、こんな花街で刀ちらつかせるなんざ、馬鹿は馬鹿だと思うが」(←素直)
新八くん「違いますよ、そんなことじゃなくて、土方さんがそういうこと言うとカッコよすぎるんですよ!!僕をどうしたいんですか!」(わなわな)(引き続き赤面)
土方さん「……。……てめえ酔っ払ってんのか?いくら仕事でも未成年が酒を飲むな。顔が真っ赤じゃねーか」(←真面目)
新八くん「違いますぅぅぅぅ!!ひ、土方さんのばか!」(とても赤面)
ふたりはとても仲良し(本当に)。
でも下駄が壊れてしまったし、新八くんの足も痛んでるしってんで、土方さんはおんぶしてくれるだろうなと思うんですよ。
「乗れ。家まで送ってやる」って。でも芸妓さん姿だからいつものように身軽に背中におぶさる訳にもいかずに新八くんがモジモジしていたら、
「ああ、そうか。格好が格好か」
って合点してくれて、ひょいっと軽々と横抱きしてくれるんじゃないかな!新八くん軽いので。
新八くんは当然慌て果てますが、ときめいているのでそこまで土方さんに抗いません。
てか所々でうちの土方さんは新八くんをお姫様だっこすんな。むしろ銀さんとか晋助より多いですよ、銀さんは抱えてるくらいなら毎日やってんだろうが(物理的に)
そうやってときめき果てているかわいい芸妓さん(新八くん)を横抱きして、悠々と帰っていく真選組副長の様子は、それを見ていた吉原の禿やら新造やら太夫の皆様にひそひそと噂され、喧しい町娘たちの口の端にものぼり、後々にですね、
『土方さんはどうやら吉原の女に惚れてるらしい』
的な噂がまことしやかに屯所内でも流れ始めるのです。
ヒューヒュー!!