ソルトside

最初はただ殴るだけの【おもちゃ】だった

「おはよ・・・」

弱りきった、寂しげな目で睨んでくる。でもちゃんと挨拶はしてくるんだからな・・・

「今日は何をしようか・・・?」

そう呟けば体をビクッと震わせ涙目で見つめてくる

「なんだ・・・」

「今日も・・・殴るん・・・」

ちらっと見てみればおたべの体中には真っ青なアザが出来ていた

「もう・・・嫌や・・・。」

黙って無言で見下ろしていたらおたべの目元がうるうる光り始めた

「あんたは私の、なんだ?部員?同級??その前にあるだろ・・・」

そう言ってみぞおちに手を当てれば目を見開いて首を横にふる

「辞め・・・ソルト・・・ッガハッ!!!」

「反抗しないように、教育しなきゃ・・・」

口端から唾液を垂らしだらりと全身の力が抜けたように横たわったおたべ

ゆっくりと椅子に座らせその上に毛布を掛けてやる

近くの椅子に腰を下ろしおたべが目覚めるのをただこの沈黙の世界で待ち続ける

おたべが嫌いな訳じゃない。

ただ・・・、私のものにしたくて・・・

こんなのただのワガママだって分かってる

でもどうしてもおたべが欲しいんだ

数分たったら痛みに顔を歪めながらも、目を軽く開けた

「おはよ」

声をかければ朝と同じ、ビクッと体を震わせる

「ごめん・・・ソルト・・・」

「なぜ・・・謝る」

涙をポロポロ流し、しゃくりを上げ途切れ途切れに言い出した

「ソルトがっ・・・あたしの事殴るんはっ・・・あたしが嫌いやからやろっ?何やったかっ分からへんっ・・・けど嫌われたくないねんっ。傍に居てたいんよ・・・」

その時はじめて分かった。

おたべはずっと不安だったのかな?って。

私のことを好いて付いてきてくれてたのは知っていた。もちろん最初はただただうっとうしかった

けど背中をあずけてる内に、守ってくれてるうちにおたべへの独占欲が強くなって暴力で押さえつけて

挙句の果てにはおたべを・・・けがした。

「謝るからっ・・・殴ってええからっ・・・。嫌いにならんといて」

そう言うおたべをぎゅっと力強く抱きしめた

「っルト・・・?」

なにも言わずただ抱きしめる。

私はおたべが好きだよ?そう伝わるように首筋に私の印をつけこめかみにもひとつ、付けておく

「ごめん」

一言声を出したら抱きしめ返してくれた

私もおたべも何も言わずただ沈黙の時と身を流す

おたべの首筋と私の首筋には

自分のもの。それを表す赤い印がずっと浮かび上がっていた