ソルトside

あの日を堺に、部室に足を運ぶ事が出来なくなっていた

怖かった。仲間の事も立場の事も自分のことも・・・

そんな私に変わらず接してくれてるのはヨガだった。

いつも決まった時刻に家に来てぺちゃくちゃ喋るわけでもなく黙って隣に居てくれる

それが私にとっても嬉しくてありがたいことだった。

でも不安だったりもする。なぜヨガは隣に居てくれているのか??

「なぜ隣にいてくれてるんだ」そう聞けば真っ直ぐ前を見たまま「居たいからです」そう返ってくる

「私が憎くないのか?」こう聞けば「あれは事故です」こう返ってくる

なにを言ってもなにを仕掛けても絶対私を守ろうと努力してくれている

ヨガはお人好しすぎんだ・・・

また迷惑かけてさ・・・

ほんと

部長失格だよな。

上を見てみればまぶしいくらいの青空が広がっていた

おたべは・・・そこに居るのか?なぜ雲一つ無い青空なんかにするんだ?

東の空にただよっている真っ黒な雨雲がなにかを教えてくれそうだった。

「雨・・・ふりそうですね」

「もう少し居ていいか?」

ベンチを指さすと軽く頷き、ベンチの端に座った

「ソルトさんは・・・おたべのどこが好きだったんですか?」

その質問はおたべとの思い出がよみがえり目頭が熱くなった

丁度雨が天地を濡らし目の前に銀の緞帳が下ろされる

「優しいところ。真面目な所も不器用な所も、馬鹿な所も全部が全部・・・
大好きだった」

泣いちゃ駄目

分かってるのに後から後から追うように熱いものが流れ落ちていく

頬を伝い、服に濡れ、切なさを襲わせる

おたべ・・・

帰ってきてよ。また私の隣で笑ってよ・・・。

その笑顔をもう1度見せてくれよ・・・・・・。