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拾いもの話・弐の十

ものすごく久しぶりに拾いもの話を投下したいと思います。ここから一気にラストまで行きたいです(切実)。
一話〜九話までページをリンクします。内容を忘れた方、見覚えのない方はこちらからどうぞ!

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早速続きから参りたいと思います。

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一向に晴れない気持ちを抱え、銀時が家路に着いた頃は既に昼時を回っていた。とっくに起き出しているだろう律儀な性格をした少年を思い出し、恐る恐る玄関のドアノブを回す。


「新八ィ…起きてる?」

我ながら何とも情けない声が出てしまい、思わずため息を零しそうになる。玄関口からひょいと部屋の中を覗けば、昼食の用意でもしていたのか、エプロン姿の新八がこちらをくるりと振り返った。

「あっ、銀さん!出掛けるなら起こしてくれれば良かったのに」

言いつつにこにこと屈託なく笑う新八に、不意に銀時の胸がずきりと痛くなる。彼に言えない事を抱いている、その事実に心臓を掴まれたような圧迫感すら覚えてしまう。

誰かと居てこんな風に胸が疼く事は、銀時自身初めてだったから。


だが、銀時の胸が締め付けられる理由はもう一つあった。


『今夜だ。…今夜だけ見過ごしてやるから、テメーからガキに伝えろ』

そう言った土方と先程交わした約束を、暗い気持ちで思い出す。

男は苦い表情で煙草を吸いつつ、銀時にある事実と一つの条件を提示した。

本来ならば重要参考人である新八を発見した時点で、少年の身柄は警察に引き渡さなければならないこと。
だが銀時が新八に、“少年が重要参考人である事実”を告げれば今夜一晩の猶予を与えること。

伝えなければいけない事項とはすなわち、『新八は高杉晋助の弟、高杉新八である』という事実である。


これが飲めないのであれば今すぐに新八を引き取ると言う土方に、ただの一市民でしかない銀時が抵抗できる筈がなかった。だがプロの刑事である男にとって、ましてや新八の義兄である高杉晋助を追う男にとって、それでも大幅に譲歩した条件であるには違いない。

しかし与えられた一晩という猶予はあまりに唐突で、短すぎるように思えた。だが新八をどこかへ連れて行くにしても、外では土方と沖田の両名が寝ずの番をしつつ、この部屋を張っている。それに逆らうとなれば、新八を包む事実がのっぴきならぬ状態で白日の元に曝されてしまうだろう。

それを新八が知った時、彼の心はどうなってしまうのか。

そう考えるといたたまれず、銀時は今夜少年に自分の口から真実を告げる旨を渋々承諾していた。



そんな銀時の内心など知る筈もない新八は、いつも通りかいがいしく銀時の世話をやいてくる。

「銀さん、もうちょっとでできますから座ってて下さいね。オムライスは好きですか?」

うきうきと楽しげに呟く新八に生返事を返し、銀時はローテーブルの前に一人どっかりと腰を下ろした。見渡した部屋はいつもの数倍は小綺麗に片付いていて、少年が来る前とはまるで違った様相を見せていることに軽く失笑する。
とんとんとリズミカルに野菜を刻んでいる少年の後ろ姿をじっと見つめた。

新八の背中はまだ狭く、成長過程にある少年特有の薄さがある。新八の体を抱きしめた事のある銀時だからこそ分かる事実だった。

だがそれでも銀時と出会う前の新八は、その背中に抱えきれない程の重責を背負って生きていたのだ。誰にも言えず、誰にも頼れず、たった一人きりで。

ある日突然、全ての記憶を放り出して、裸足で逃げ出す程に。



そんな風に考えだすと止まらず、銀時はただぼんやりと新八の背中を見つめ続けていた。





時計の針はいつの間にか進み、時刻はもう夜に差し掛かっている。

もうすっかり恒例となったかのように、電気を消すなり、新八はベッドに横臥する銀時の隣に潜り込んできた。それにいつもなら軽い挨拶を交わして就寝するところだが、今日だけは違う。
否、もう明日になれば新八と一緒には居られないのだから、“今日は”という言い方をした方がいいだろうか。

新八がベッドに潜り込むなり、銀時は意を決したように彼に向き直った。

「新八、いいか」

いつもとは違う銀時の様子を感じ取ったのか、もう電気を消した闇の中でも新八の目が驚きに見開くのが分かった。続けて、こくりと一度だけ頷く雰囲気。

それに覚悟を決めたように息を吐きだし、銀時は続けた。

「お前には家族が居る。前、泣いてたことあっただろ。その時、“兄さん”って呟いてた。…泣きながら」

突然銀時が言った言葉に新八が息を飲む。忘れていた記憶をなぞるような感覚が恐ろしいのか、少年の背中が微かに震えるのが分かった。

それを黙って抱き寄せ、銀時は彼の体をそっと抱いた。新八の涙を初めて見た時と同じように、優しく、想いを込めて。

その行動に思うことでもあるのか、銀時の腕の中、新八が小さく首を振る。


「銀さん、嫌だ…!僕、知りたくない…!」

切なげな声は哀願と言うに相応しい悲痛さを帯びている。それでも続きを話さない訳にはいかず、銀時は更に強く新八を抱きしめた。

だが落ち着かせるようにその背中を撫でたのは、他でもない、銀時自身の為だったのかもしれない。

言いたくない、それでも言わねばならない。対極の刹那に怯えていたのは新八だけではない、銀時も同じだったからだ。


「…悪ィ、俺も言いたくねーよ。でも言わなきゃなんねェ。お前は知らなきゃなんねーんだ。お前の心の事と、無くしちまった記憶を」

「嫌です…!嫌だ、知りたくない!」

抗えない銀時の言葉に心底の恐怖を感じ、新八が体をよじる。それを逃さないようにきつく腕の中に留め、銀時は目をつむった。噛み締めるように一言ずつ話し出す。

「お前には兄貴が居るんだよ。その兄貴の夢で、泣いてた。だからそれだけは言わなかった。…つーか、言えなかったんだ」

ぽつりと落とされた銀時の言葉が、夜の底を滑っていく。聞いた新八はしばし黙り込み、僅かな沈黙に身を任せた。



“兄”


銀時の口からそれを聞いても尚、新八の思考は未だぶれたままだった。自分に家族がいたという事実すら眉唾もののように感じてしまう。

それでも、その単語を聞いた時に感じた懐かしさ、幼い日の自分が縋った掌の感触を、今の新八ははっきりと思い出していた。

その掌はひんやりと冷たく、銀時のように温かな掌ではなかった。だがその手に触れる度、幼い自分はどうしようもない嬉しさを覚えていたこと。

いつも構ってもらいたくて、四六時中見つめていた背中。自分の真っ直ぐな髪とは少し違い、柔らかな癖のあったその黒髪。

“兄”と言う単語と記憶の残像が、今確かに結ばれていく。

それなのに、兄の体つき、彼を構成していたパーツはいくらでも思い出せるのに、肝心のその顔だけはどうしても思い出せない。伸ばされた手の先、その横顔の記憶を手繰り寄せようとすればするだけ、自分の意識は泥沼に沈んでいくようだった。
まるで深層心理が知る事を拒否しているかのように、触れようとするだけ、兄の、“家族”の記憶にはもやがかかっていく。

その感覚が恐ろしく、新八は無意識に銀時の背に腕を回していた。ぎゅっと小さく丸まるようにして震える体を隠す。

「新八…、」

切なげな銀時の声が頭上から降ってくるのを聞いて、新八はもう何も聞こえないように彼の胸に顔を押し付けた。


――…


その頃、アパートの外では夜の帳の中にじっと佇む一人の青年がいた。

プルル、とけたたましい電子音が着信を知らせている音を、河上万斉は顔をしかめながら聞いている。様々な人間の奏でる様々なメロディーを愛する彼だが、どうにもこの音だけは好きになれそうになかった。

散々鳴らされたコールの後、唐突にガチャリと相手が電話口に出るのを知覚する。ソファーにでも携帯を放り投げていたのか、はたまたちょうど寝入りばなに起こされたのか、電話の相手は至極機嫌が悪そうだった。だがそれもいつもの事である。

『…これでいい情報じゃなかったらどうなるかぐらい分かってんだろうなァ?…万斉』

募る苛立ちを隠そうとすらせず、高杉が自分をなじる声を聞く。だが僅かな怯えすら滲ませず、河上は目的の“もの”が見付かった旨を高杉に伝えた。

「それは都合が良かった。拙者の首はまだ繋がっているでござるな」

楽しげに話を切り出した河上が気に入らないのか、高杉の低く唸るような声は変わらない。ただ、どうにも食えない男である部下に対し、重いため息を吐き出したのみである。

『…ンな事ァどうでもいい。なんだってんだ、早く言え』

これ以上話を長引かせるとただでは済まないだろう。長年の勘から早々にあたりをつけ、河上は低く呟いた。

「見つけたでござる」

その言葉に電話口の高杉が一瞬息を飲む。だが次の瞬間には、彼はさもおかしそうに笑っていた。

『ククク…やっぱりテメーが見つけてきたか。何百部下が居ようがそれは変わんねェなァ』

“誰を”と言われずとも、高杉は河上の見つけたものを把握しきっているのだろう。だが低い笑みには高杉の微かな安堵が確かに含まれている。

それに河上はこの先を話し続ける事を一瞬迷い、だが次にはもうきっぱりと事実を告げる事を選んでいた。

「見つけたが、一人ではござらん。見慣れぬ銀髪の男と一緒でござる。どうもその男が匿っていたらしい。…どうする、晋助」

言った途端に信じられない程の怒りを電話越しの無言に感じ、河上は心底ぞっとするものを感じた。
一瞬の沈黙もつかの間に、感情の読めぬ声音で唐突に高杉が朗々と話し出す。

『…決まってんだろうが、連れて来い』

静かな声はしんと透き通ってスピーカーから聞こえてくる。だがそれに滲んだ声音は青く燃える炎のように冷たく、絶対零度の怒りを孕んでいた。

「新八殿だけでござるか。男は始末すべきでござろう?」

それにあくまでも冷静に返事をし、河上が高杉の指示を仰ぐ。だが当然“男を始末しろ”と続くと思っていた河上の意識を、高杉の声が突然に塗り潰した。

『…クク、どっちもに決まってらァな。ただ、新八には手出しすんな。男は死なねェ程度にして、俺の前に連れて来い』

“俺が始末する”と囁いた上司の声を最後に聞き、河上はぱたりと携帯を閉じた。そのまま、ささやかな明かりがカーテンの隙間から漏れてくるアパートの一室をじっと見上げる。
その中で今銀時が新八に話している事が、たった今己が喋っていた男に纏わるものだという事実を、河上は知らない。


「…関わった己の運命を呪って欲しいでござる」

無意識に呟いた贖罪は銀時に向けての言葉か、否か。

河上はもう考えないし、知りたくもない。ただ彼は絶対なる上司の指令を速やかに遂行するのみである。

あと僅か数分後に訪れるであろうざわめきの前、つかの間の静寂に身を委ね、河上は静かにアパートの階段を上がっていった。


【第十話・終】


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素敵な撮影会のお知らせ


今日はちょっと皆様にお知らせしたいことがあって参上いたしました!

うちのサイトと相互リンクしていただいている坂田家中心コスサイト様、『はやね、はやおき。』のとーや様が素敵な撮影会の企画を立ち上げて下さいました。


内容をかい摘まんでお話させていただくと、

【8受けオフ撮影会】

・定員:10名以下(女性限定)
・場所:都内和室
・CP:銀新、土新…
・日にち:未定
・時間:正午〜5時くらい(不確定)

等などです。詳しくは下のリンクから詳細ページ(とーや様のサイト)へ飛べますので、気になった方はとーや様へ是非メールを!


soro2dereceyka.blog122.fc2.com

本決まりになったら私も是非行かせていただきたいなぁと思います。

ユカリもイベントで銀新ぽい方々を見かける度に『ギャアアア!!』と心の中で叫んでいる類の人間ですからね、つーかドキドキし過ぎて、友人から『写真お願いしないの?』と言われても、『は、恥ずかしいからいい…』とか俯き気味で言う類の人間ですからね(単なるチキンじゃねーか)。

結局ピンでしか写真お願いできない人間ですからね(どうしようもないドヘタレじゃねーかァァァ!!)。

そんな人間が銀新的な絡みを間近で見たらどうにかなると思いますよ(真顔)。しかもしかも、土新もだなんて…!!

誰得?圧倒的ユカリ得!っていう話ですよ(すみません)。萌えでガクブルします(早くも不審者)。

デジカメ片手に正座して待ってます!
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