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ACT3-(8)

「…………え?テレビに出て欲しい?」
「そうなの。知り合いで凄い人いませんかって言う番組なんだけど。
私、それに出演することになって。
で、知り合いで凄い人を連れてこいって話なのよ。」
「深愛なら、16歳で防衛軍の一佐だもんね。肩書だけ見れば凄いもん。
………まぁ、経歴は言えないけど。」
「…………怪獣に変身できるって時点で凄いからねぇ。」
「もちろん、モスラに変身できるってことは言わないつもりよ。」
「澪がそう言うなら問題ないけど。まぁ防衛軍の干渉も多少はあるだろうけど…………。
大丈夫かな。」
「ありがとう、深愛。助かるわ。
こういう話を持ってこなかったら、良かったんだけど。」
「……フツーの女子高生は一佐なんてやってないわよ。」
「だよねえ。
…………それにこの間の小鳥遊咲良さんだっけ?
もしかしたらこの番組次第じゃ、追及かわせるかもよ。」

なんちゃって、と話す涼子に深愛と澪はなるほど、と呟いた。

「………その手はあるわね。」
「じゃあ、公開してもいい情報とダメな情報を分けないとね。」
「………深愛も大変だねえ。」

「涼子、他人事だと思って……………。」
「まぁまぁ、突っ込みは入れるから。」
「………そうしてね。」
「はいはーい。」






続く。

ACT3-(7)

病院を後にした後、深愛と涼子、そして澪はカフェに向かうことにした。
「…………何ていうかさ、結構重たい話を聞いた気分。」
「まあ、無理もないよ。普通だったらおかしいって思う話だし。」
「………そうね。でもそれだけゴジラは強かった。
防衛軍の総火力をもってしても、ゴジラは倒せない。
………切羽詰まった状態で色々手を出しちゃうのは無理ないかもしれないわね。」

「………………そうね。」

店員に注文をし、商品が運ばれてくるまでの間、3人は深いため息をついた。

「あらもしかして有栖川澪さん?」

カメラを持った1人の女性が澪に声をかけてきた。

「…………今、友達といるの。取材ならお断りするわ。」

「あら、そんなこと言わずに。プライベートの様子を撮ってもいいじゃないの?」
「………あの、不躾な貴女は一体何者ですか?」

「……………あら、これは失礼したわ。私、小鳥遊咲良って言います。ルポライターをしているの。」

「澪は私達とカフェをしているんだから、取材はお断りするわよ、おばさん。」
「つれないことをいうのね。アイドルが人気カフェにいるなんて知ったら、
お店は繁盛するっていうのに。」

「………やな奴。澪の気持ちを無視しちゃって。深愛、どうする?」
「うーん、仕方がないな。…………小鳥遊さん。肖像権侵害で警察に突き出されるのと
大人しく引き下がるの、どちらがいいですか?」
「あら、そんなことができるの?」
「一応、防衛軍に所属しているんで。この若さで一佐という自負がありますから。」
「………あら、そうなの?どうして?」
「ま、それだけ気になるなら自分で調べてみたらどうですか?ルポライターの仕事でしょう?
この場で話すには機密事項がいっぱいありますからね。」


にこやかに笑う深愛に澪はなるほどね……と呟いた。

深愛のことを調べようと思うのなら、防衛軍から待ったがかかるはずだ。
それを知った上で深愛は咲良に言ったのだ。

「いいネタになりそうね!よし、じゃあプライベートの様子を撮影するのはやめるわ!」

そういうと咲良はまたねー、と言ってカフェを後にした。

「…………でも、深愛。大丈夫なの?」
「何が?」
「あの人、絶対M計画に到達しそうな気が…………。」
「でしょうね。………それでもって物凄く後悔することになる。
公表すべきかしないかを。悩むことになるんじゃないかな。」
「ま、世間に公表すれば防衛軍の闇に深く入り込んだ女ってことで、非難されるでしょうね。
誰にとっても、闇に深く入り込んで欲しくないから。」

「………ま、防衛軍のセキュリティは日本屈指を誇るから、私の情報までに辿り着くのは至難がかかるだろうけど。」
「………とりあえず、防衛軍が凄いことはよくわかった。」






続く。

ACT3-(6)

「………んじゃまあ、採血の結果は次に来た時に伝えますんで。
これで検査は終わりです。」
「………蒼氷さんは防衛軍に所属していないんですね。」
「そりゃあまあ、防衛軍に所属していると色々制約があるんですよ。
機密事項やらいっぱいありますんでね。
それに。」
「………それに?」
「M計画で凍結されている受精卵を保護するという役割を任されているんでね。
お姫様はもう無理ですけど、怪獣の遺伝子を除去することができれば
普通の人間として暮らせる子達の未来を守ることができるんで。」
「なるほど…………。」
「それに受精卵を人質に取られたくはないいんで、防衛軍には所属していないんですよ。」
「はぁ………。」
「あまり深くは考えないでくださいね。
これはあくまでもM計画に関わって、16年前の事故で生き残った連中に課せられた
重責であり、義務なんですから。」
「…………そう、ですか。」

蒼氷の話に涼子はそう呟いた。

「まあ、仕方のないことなんですよ。16年前の事故は。
そもそも怪獣を人間の手でコントロールするなんて言うこと自体、無理があったんだ。
防衛軍の総火力をもってしても、ゴジラを倒すことはできない。
怪獣に変身できる人間を公表させてしまえば、
防衛軍は存在することができなくなる。
国際レベルの戦争に駆り出されることになったら、おしまいですよ。
だから、隠しているんです。
俺は民間の立場から、お姫様の存在を隠しているんですけどね。」
「結局は防衛軍と民間、両方の立場から深愛を守っているってことなのね。」

「そういうことになりますね。」



続く。

ACT3-(5)

「んじゃあ、お姫様。採血するんでプスッと刺しますね。」
「はぁい。」

「………採血?」
「お姫様には多少、G細胞が混ざっているんですよ。
モスラの力で安定しているとはいえ、いつ何処で暴走するかわかりませんからね。
リアタイで薬の処方を変えているんです。」

「G細胞?」
「ゴジラ細胞のことよ。遺伝子の宝庫とも呼ばれているわ。
正しく使えば、再生医療を飛躍的に上昇させることができるの。
………でもゴジラ以外、G細胞を完全にコントロールするのは難しいのよ。」
「………そんな物騒なものが深愛の中にあるの?」

「怪我を負っても、毎回病院に行くことのないようにってことで受精卵に組み込まれたのよね。
まあ、G細胞と言っても、ホントに微量だから。
私で成功するまでに何千回、何万回も繰り返し実験したそうよ。」

「うわぁ……………頭が痛くなりそう。」

蒼氷に採血され、深愛は涼子に話をした。澪はげんなりとした様子で彼女の話を聞いている。

「さて、と。G細胞が暴走したことはないんですよね?」
「まぁね。おかげ様で。」
「こればかりは定期的に診ておかないと、何がきっかけでスイッチが入るか
わかりませんからね。
くれぐれもバトラになることだけはやめてくださいよ。」
「バトラにはならないよ、何が何でも。」
「………バトラ?」


「バトルモスラの略だよ。
守護を目的としているモスラと対を成す黒いモスラで攻撃を目的としているの。
攻撃力が高いんだけど、耐久性がイマイチで防御力が低下しているからね。
おまけにコントロールがなかなか効かないし………。」
「そうなの?」
「うん。モスラは防御力とか高いし、技の種類も汎用性がある。
だから、戦う時はモスラを主流としているんだけど…………。」


「バトラは絶対ダメ、何があっても!」
「私も反対だわ。バトラにだけは変身しないで!」

「う、うん………もちろんだよ……………そんな切羽詰まった顔で言わなくても………。」

「言うわよ、そりゃ!」
「攻撃力高い割に防御力が低下しているんだったら、一撃で倒れるじゃない!
そりゃ、バトラに変身したらダメって言うのは当たり前よ!?」


「良かったですね、お姫様、なかなか愉快なお友達ができて。」



続く。

ACT3-(4)

深愛達が訪れたのは、姫百合総合病院であった。
「ああっと、お姫様。こんにちは。」
「……………だから、そのお姫様って言うの、やめてくれない?」
「いやはや、これは癖だってことわかってくださいよ。」
「…………あ、紹介するね。蒼氷智久。これでも腕の立つ医師で、
カロリー抑制剤を開発した研究者なの。」
「初めまして、薬師寺涼子です。」
「有栖川澪です。」
「…………ああ、あの有栖川さんの娘さん?こんなところでお会いできるなんて奇遇ですね。
いやはや、御父上に関しては残念でしたね。」
「………まあ、自業自得だから仕方がないけど。」


「………ねぇ、あれって有栖川澪じゃない?」
「何かすごいイケメン医師と話しているんだけど、知り合い?」


ヒソヒソと話をする通院者に智久は眉をひそめた。

「んじゃまあ、いつもの薬を処方するんでこちらに。」
「はーい。」


智久に案内されて、深愛達が到着したのは精神科だった。

「………精神科?」
「……まあ、何ていうかね。怪獣に変身すると自分が自分でいられなくなるとかそういった類の考えが
たまに出てくるからさ。」
「………それはそうでしょ。普通の人間が怪獣に変身できるなんてそりゃないんだから。」
「まあ、こういう隠れ蓑がないとやっていけないんでね。
カロリー抑制剤もM計画に参加していた薬剤師が調合していますから。」
「はぁ………。」
「ちなみにお姫様、今月の出撃はそんなにないんですね?」
「今のところはね。」
「じゃあ、今回は1ヶ月分だしておきますんで。」
「わかった。」
「…………1か月分で足りるの?」
「出撃した回数に比例して、処方されるからね。何処で変身するかわからないし。」

「………面倒ね。深愛に任せきりにしないで、少しは武力を向上させたらいいのに。」
「法律が色々と五月蠅いですからね、限度ってものがありますし?」
「…………その限度をどうにかしようとして、法スレスレの違法研究をしたのがM計画でしょ。
国からの命令とはいえ、私、許していないんだからね。深愛は被害者だわ、間違いなく。」


「………わぁお、澪さん結構怒っていらっしゃいますね。」
「当然よ。成功例である被検体を生み出すためにどれぐらいの受精卵が無駄になったと思って?」
「…………知りたくなかった、そんな事実。」

「……まあ、今はそのほとんどが凍結されて何処かに保管されているって言うけど。」
「澪さん、将来の夢とかでもあるんですか?」
「当然、怪獣の遺伝子を人間の受精卵から切り離すことを夢にしているの。
せめて生まれてくる子供達が、普通の人間として過ごせるようにね。」
「じゃあ、深愛の遺伝子ももしかして切り離せるの?」
「それは無理だわ。ここまで育っていると、切り離すのは………。」
「………あー、やっぱり?」

「気持ちだけでもありがたく受け取っておくよ、澪。」


続く。
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