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ACT1-(2)



「………おう、律。今日もPMWやるんだろ?」
「うん、やるよ。今日から期間限定イベントだもんね。」
「よーし、一緒にやるか。」
「うん。」
家に帰宅した後、律は母親からお使いを頼まれた。
「帰ってきて早々に悪いんだけど、お使い頼まれてくれる?」
「はーい。幸太、ごめん。ちょっと遅れてログインするね。」
「へーへー。
(せっかく一緒にログインしようかなぁって思ったのに、
何でタイミング悪いんだよ……。)」
表面上は仕方ないなぁ、と思っていたが内心ではつまんないのと思った
幸太であった。
家に入って自室に戻ると、ゲーム用端末を机の引き出しから
引っ張り出して、ヘッドフォンを装着して端末をパソコンに繋げた。
どさっとそのままベッドに倒れこんだ幸太は瞼を閉じた。
『ようこそ、Phantasm Mythlogy World、“PMW”へ。
ユーザーデータをリロードします。』
寝ているような状態で、意識だけが仮想現実空間に飛ばされる。
個人差はあるが、人によっては乗り物酔いになるとか。
いつも通り、ユーザーデータをリロードすればゲートに転送される。
短時間で終わるクエストを消化しながら、幸太は律がログインするのを
待っていた。
……この時、既に。異変が起きていたことを。
幸太は知る由もなかった。

その日の夜。芳樹はゲームの開発会社取締役をしている
学生時代の同級生から大至急来て欲しいという連絡を受け、
満月を連れて本社に来ていた。
「すまん、綿貫。急な呼び出しをしてしまって。」
「気にすんな。同じ学校のクラスメイトのよしみだ。
……で、急な呼び出しというと話は悪い方か?」
「あ、ああ。
俺の会社が製作したPMWについてなんだが……。
……今日の夕方にログインしたプレイヤーが全員、
ログアウトできていないんだ。」
「強制ログアウトとか、いろんな手を試してもですか?」
「ああ……。
理由は俺にもわからん。何故かPMWのデータが一部書き換えられて、
管理権限を持つ俺達のデータを一切受け付けていないんだ。」
「マジか。」
「……マジな話だ。強制ログアウトもできなければ、
ログインもできない。
おまけにAIとの連絡も繋がらない。」
「AI?」
「万が一の事態に備えて、強制ログアウトとかを行う権限を持った
AIがいるんだ。こちら側の応答に反応しないということは
もしかしたらハッキングされた可能性がある。
このままだと催眠状態になっているプレイヤーが、
昏睡状態に陥ってしまう。」

「………わかった。とりあえず、詳しい奴を呼ぶよ。」

芳樹はそういうとスマホを取り、グループに連絡をした。
そして綿貫グループお抱えのハッカーである
芳川が本社にやってきた。


「どうも、綿貫グループお抱えの芳川と言います。」

芳川はそういうと制作会社取締役の櫛木に名刺を渡した。

櫛木から話を聞いた芳川は早速パソコンを経由して
プレイヤーがログアウトできない原因を調べた。


「………むぅ。」

「芳川さん、何かわかった?」


「外部からハッキングされた痕跡はないですね。
内部からハッキングされています。」
「だ、誰が何のために!?
綿貫、俺はどうすればいい?」
「落ち着け、櫛木。
警察を呼んで、事情聴取をするから集合をかけてくれないか?」

「あ、ああ………。」

芳樹の言葉に櫛木は頷くとその場を後にした。


「………で、どうする?」
「一応、俺の腕ではハッキングできるから、中に入れる。
PMW内に、必ずいるはずなんだ。このゲームをハッキングした犯人が。」

「じゃあ、俺と満月ちゃんと物吉の3人でこのゲームに参加しよう。
そうすれば、何とかできるはずだ。」
「はい、わかりました。」


「………あ、あの………ちょっとよろしいでしょうか。」


パソコンルームに櫛木の秘書が入ってきた。

「……どうかしましたか?」
「幼馴染がPMWにログインしたまま、ログアウトできなくなったという常連さんが………。」

「……常連さん?」

「はい。役重律さんと名乗っていますが。」

「………通してやってください。満月ちゃんの同級生ですから。」

芳樹の言葉に秘書はわかりました、と頷いた。



続く。

ACT1-(1)


「…………PMWってそんなに面白いの?」


とある日の午後。満月は同級生と共にシスターからPMWについての注意喚起を受けた。

「面白いらしいよ。
ただ、中毒性が強いらしくて3度の飯よりPMWをっていうプレイヤーが続出しているみたい。」

「別の学校なんか、クラスの大半がPMWの中毒性にハマって何日間もログアウトしていないとか
何とか。まあ、衰弱して救急搬送されたとかどうとか。」

「……………現代社会が抱える故の闇、だね。」

「そうですね…………。」

満月と物吉は同級生の話に耳を傾けながら、帰宅の準備を始めた。


「…………やあ、満月ちゃん。」
「あ、芳樹さん!」

学院の駐車場で満月と物吉は芳樹と合流をした。

「今日、シスターからPMWについて注意喚起があったんですよ。」
「………ああ、中毒性の高いゲームだったよね。
パーティを組んだり、ソロで活動したりしている人もまちまちだとかで。」
「まあ、僕達はそんなゲームをしている余裕なんてありませんけど………。」


「確かにそれは言えてるかもね。」

「………………。」


不意に視線を感じ、満月は後ろを振り向いた。

そこには1人の少女が立っていた。


「………どうしたのかな?」
「……ああ、役重律さんだったよね。確か。」

「え、えっと、私の名前、知っているんだ………。」

「どうしたの?」

「ええっと、その……サインを貰いに……。」

「いいよ。………芳樹さん?それとも私?」


「りょ、両方!!」

そういうと律は色紙を2人に手渡した。
満月と芳樹は色紙にサインを書くと、律に返した。


「ありがとう、姫宮さん。綿貫さん。
………幸太に自慢できる。」


「……幸太?」


「あ、別の学校に通っている幼馴染なの。小野幸太。
今日も一緒にPMWをやろうって話をしていて。」


「…………意外。役重さん、そんなのもやっているんだ。」

「うん。でも親に色々と条件つけられているけどね。
シスターから注意喚起されちゃったけど。
…………面白い分、中毒性がかなり高いから。」


「………へぇ、ちなみに役重さん。職業何なの?」
「え?私?私、アサシンだよ。
守りを一切廃した攻撃型であるため、一撃を放っての戦線離脱が基本なの。
あ、これね。」

律はそういうとスマホを取り出して、自身が操作している分身を見せた。

「わあ、可愛いね。」
「ホントだ。良くできているなぁ。」

「もし興味があるんだったら、やってみて。………あ、でも2人とも忙しいかな?」

「時間に余裕があったら、やってみるよ。」
「お誘いありがとうね。」

「………うん!」

そういうと芳樹と満月、そして物吉は律と別れた。

続く。

プロローグ

…………Phantasm Mythlogy World。

通称、「PMW」。


DLランキング1位をキープしているMMORPGの体感型シュミレーションオンラインゲーム。
脳波を読み取る端末を装着すると催眠状態となり、
仮想現実世界「PMW」にログインすることができる。

音声認識機能を持つゲームと対話をしながら、
バーチャルリアリティの世界を楽しむというもので
ゲーム中は人間の五感に働きかけるため、
痛みなどの感覚がすべてプレイヤーに伝わるようになっている。

通常のログアウトの他に、
仮想現実世界で敗北または死亡をすると強制的にログアウトされる。
(その場合はもう1度ログインしなければならない)
依存性が高く、気をつけないと3度のご飯よりもPMW、というプレイヤーも
それなりにいるため、注意喚起が必要である。
またレアなアイテムなどを巡ってのトラブルも多発している。
これについては運営が対応しているが、
時折現実世界にまでトラブルが発展するというケースもあるので、
警察の頭を悩ませている。
それでもプレイする人間が絶えないのは、
自分自身が冒険しているような感覚を味わいたいから。
初期設定をした後、職業を変更する場合は
専用クエストを満たさなければならない。


かくして、このPMWを巡り、とある事件が発生するのであった。



続く。

ACT2-(2)



「………えっと、これ何?」

七瀬愛梨は友達の宮本小百合が見せたパンフレットに目を通した。

「何ってミュージカル刀剣乱舞に決まっているじゃない。
次の幕末天狼傳に備えて準備でもしようかと思って。」


「………それは布教って奴ですか?」
「そうよ。ちなみに私のオススメは加州清光。
姫宮満月ちゃんが演じているんだけど、これがもうはまり役!!」

パンッ、と小百合は勢いよくテーブルに満月の写真集を置いた。


「………推してるの?」
「当たり前よ。もう、満月ちゃんは可愛いんだから。
姫宮家って、男ばっかり生まれたからそりゃ満月ちゃんが生まれてくるまでは
姫宮じゃなくて殿宮って名乗った方がよくない?ってバカにされていたんだから。」
「うわ、酷くない?それ。」

「でしょー?満月ちゃんが生まれた途端に掌クルっとひっくり返して、
ぜひ自分の嫁にっていう馬鹿な男達がいたのよ。」

「でも満月ちゃん…………綿貫さんところに嫁ぐんだよね?」
「そう!
綿貫さんと言ったら、顔はパーフェクトだし体格もいいし、性格も悪くない!
ま、綿貫さんは自分の好みの女がいなかったから、満月ちゃんを自分の手で育てて
自分に惚れさせるようにあの手この手を使ったのよねぇ………。」

「…………早い話が洗脳ってことだよね……?満月ちゃん、可哀想だけどなんていうか
綿貫さんにぞっこんなんだよね………?」

「そうそう。天下無敵の相思相愛なんだから!2人の恋愛には目を離すことができないのよ!」


「さ、小百合、落ち着いて………小百合が満月ちゃんを推す気持ちはよくわかったから………。」

「ま、時間はたっぷりあるから、厚樫山異聞を観て満月ちゃんや綿貫さんが出演している
番組のDVDとか観て、布教するから覚悟なさーい。」

「…………これも洗脳に入るんじゃないのかな………?」





「…………やあ、満月ちゃん。」

私立聖ミカエル女学院の駐車場で満月を待っていた芳樹はにこにこと笑った。
「撮影お疲れ様です、芳樹さん。」
「うん。満月ちゃんの顔を見るとホッとするなぁ。
さて、デートをしようか。
この間の入学祝と誕生日祝はじじぃのせいで贈ることができなかったし。」

「芳樹さんと一緒ならそれだけで十分なんですけどね。」

「嬉しいことを言ってくれるじゃないか、満月ちゃん。」



続く。
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