「………えっと、これ何?」
七瀬愛梨は友達の宮本小百合が見せたパンフレットに目を通した。
「何ってミュージカル刀剣乱舞に決まっているじゃない。
次の幕末天狼傳に備えて準備でもしようかと思って。」
「………それは布教って奴ですか?」
「そうよ。ちなみに私のオススメは加州清光。
姫宮満月ちゃんが演じているんだけど、これがもうはまり役!!」
パンッ、と小百合は勢いよくテーブルに満月の写真集を置いた。
「………推してるの?」
「当たり前よ。もう、満月ちゃんは可愛いんだから。
姫宮家って、男ばっかり生まれたからそりゃ満月ちゃんが生まれてくるまでは
姫宮じゃなくて殿宮って名乗った方がよくない?ってバカにされていたんだから。」
「うわ、酷くない?それ。」
「でしょー?満月ちゃんが生まれた途端に掌クルっとひっくり返して、
ぜひ自分の嫁にっていう馬鹿な男達がいたのよ。」
「でも満月ちゃん…………綿貫さんところに嫁ぐんだよね?」
「そう!
綿貫さんと言ったら、顔はパーフェクトだし体格もいいし、性格も悪くない!
ま、綿貫さんは自分の好みの女がいなかったから、満月ちゃんを自分の手で育てて
自分に惚れさせるようにあの手この手を使ったのよねぇ………。」
「…………早い話が洗脳ってことだよね……?満月ちゃん、可哀想だけどなんていうか
綿貫さんにぞっこんなんだよね………?」
「そうそう。天下無敵の相思相愛なんだから!2人の恋愛には目を離すことができないのよ!」
「さ、小百合、落ち着いて………小百合が満月ちゃんを推す気持ちはよくわかったから………。」
「ま、時間はたっぷりあるから、厚樫山異聞を観て満月ちゃんや綿貫さんが出演している
番組のDVDとか観て、布教するから覚悟なさーい。」
「…………これも洗脳に入るんじゃないのかな………?」
「…………やあ、満月ちゃん。」
私立聖ミカエル女学院の駐車場で満月を待っていた芳樹はにこにこと笑った。
「撮影お疲れ様です、芳樹さん。」
「うん。満月ちゃんの顔を見るとホッとするなぁ。
さて、デートをしようか。
この間の入学祝と誕生日祝はじじぃのせいで贈ることができなかったし。」
「芳樹さんと一緒ならそれだけで十分なんですけどね。」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか、満月ちゃん。」
続く。