入学式を終え、ヒビキとヒカルはマンションに帰ってきた。
それと同時にヒビキのPDIに通信が入る。
「俺だ、どうした?」
『怪獣らしき反応が出たので、GUTSに出動要請が入りました。』
「…………わかった、すぐに行く。」
PDIで通信をするヒビキをよそにヒカルはてきぱきと彼の制服を準備した。
「………すまんな、ヒカル。今日は非番なのにゆっくりできん。」
「いいよ、父さん。入学式の途中で抜け出されるよりはマシだから。
夕飯、腕によりをかけて作っておくね。」
「ああ、期待してる。」
GUTSの制服に身を包んだヒビキはそう言うと、玄関を後にした。
「……………………………そっかぁ。もう12年も経つのかぁ。」
棚に飾ってある写真立てを見たヒカルは悲しそうな顔をした。
12年前、怪獣災害によってヒカルは実の両親を、ヒビキは妻を失った。
ヒカルは両親によって庇われたため、軽い怪我を負った程度で済んだが、
失ったものはかえってこない。
「…………………………おじいちゃんもおばあちゃんも早くに死んじゃったしねぇ。
曾おじいちゃんと曾おばあちゃんについても、私が生まれる前に亡くなったって言うし。」
ヒカルは写真立てから視線を逸らすと、掌に光を集めた。
今は亡き曽祖父は超古代文明の遺伝子を受け継いでいた。
それもあってか、ヒカルは曽祖父譲りの遺伝子を強く受け継ぎ、
この力を人のために役立ちたいと思い、TPCに入ることを志願していた。
だが、ヒビキは人造ウルトラマン計画があったことを理由にTPCに入ることを断固として反対した。
表面上は凍結したが、裏ではまだ進行している可能性を否定することができないため
長期的な安全を確保することができなければTPCに入らせることはできないとヒビキは言っていた。
強い力を求めるのは人類の悪いところだ、というところも。
怪獣災害で生き残ったからと言って自己犠牲をする必要はない、とヒビキはヒカルにそう言った。
「………父さんも心配症だなぁ。でも私までいなくなったら、確かに怖いかも。」
続く。