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ACT1-(4)

「…………とりあえず今、わかっている情報としては
遠坂、間桐、アインツベルンの御三家は確実に当主が参加するだろうね。」
「そうですね………三家とも、根源への到達を目的としていますけど
間桐とアインツベルンは目的を履き違えていますから1番厄介なのは
遠坂ぐらいですかね。」
「御三家、ですか。」
「うん。
聖杯戦争のきっかけを作った始まりの御三家。
遠坂は宝石魔術の使い手だし、間桐は蟲の使い手、
アインツベルンはホムンクルス鋳造に長けているし。
でもわかっているのはそれだけよ?」
「問題は残る3枠の魔術師ですね。」
「そうだよ、セイバー。
俺達の陣営と始まりの御三家を除けば後3枠が残っている。
魔術協会で1枠は確実だから、正確に言えば2枠がある。」
「………外来の魔術師が2枠………特に厄介なのがアサシンの英霊を引き当てた魔術師ですね。」
「まあ、歴代のハサン・サッバーハを引き当てるのは確かなんだろうけど、
誰が来るかはわからないな。」
「そうですね。
始まりの御三家がアサシンを引き当てる可能性も十二分にありえます。」
「…………。」
「………………。」
「………ま、まぁ、当面は情報収集が先でしょうからまずは僕達にお任せください。」
「………そうだね。情報収集は守り刀に任せるとして…………。
ひとまず、街に出ようか。」
「…………はい?」
「………桜庭市がどういった構造をしているのかを知るにはもってこいの機会だし。」
「………ああ、なるほど。そういうことですか。」
「………四神相応の地だから、戦いやすい場所と戦いにくい場所があるだろうし。
セイバーの聖剣は対城宝具だもん。
状況と場所を選ばないと、なかなか真名解放できないから。」
「………そうですね。私の宝具は、対城宝具です。
真名解放はタイミングが必要となってきます。」
「宝具解放のタイミングはセイバーに一任するよ。
いちいち俺達が許可することじゃない。」
「戦いのことはセイバーが1番よくわかっているから。」
「………わかりました。2人の配慮に感謝します。」
「いえいえ、礼を言うのはこちらの方だよ。セイバー。……いや、アルトリア・ペンドラゴン。」
「この桜庭市で2度と聖杯戦争が起きないように勝利するのが私達の目的だから。」
「………はい。」



続く。

ACT1-(3)

綿貫家の庭園は公園並みに広い。
様々な品種の花が季節柄、見頃を迎えている。
庭園を歩く芳樹と満月の後ろを、セイバーは1歩下がって見守っていた。
「………セイバー、どう?楽しんでいる?」
「ここの庭園は気に入ってくれたかな?」
足を止めた2人にならい、セイバーも足を止める。
「………ええ、ここは素敵な場所ですね。十分に手入れがされている。」
「…………気に入ってくれたようで何よりだよ。」
カフェテラスには守り刀である物吉が人数分の紅茶と菓子を用意して待っていた。

「………それにしても意外だった。
アーサー王伝説に出てくる王様がまさか年端もいかない少女だったなんて。」
「私とそんな歳が変わらないなんて、驚いたよ。」
「……確かに私は男として振る舞っていましたが………。
2人共驚くことはないでしょうに。」
「まあ、嘘に嘘を重ねた結果が後の歴史に伝えられたみたいな感じだもんねぇ。」
「驚きはしたけど、君が少女であってもアーサー王であることには変わりない。」
「そうそう、あの有名なエクスカリバーの担い手だものね。
いちいち、性別にこだわっていたらキリがないわ。」
物吉の淹れた紅茶が配膳され、満月は青磁のティーカップに口をつけた。
「………うん、美味しい。」
「今月1番出来のいい茶葉を収穫いたしましたので。……セイバーさんも良かったらどうぞ。」
「ありがとうございます、物吉。」
「…………まぁ、何にせよセイバー。昨日も言ったけど、君の願いは叶えられそうにもない。
それだけは肝に銘じておいて。」
「……そうですね。汚れた聖杯に願いをかけようものなら、どんな災厄が起きるか。」
………そう。今回の聖杯戦争で勝者である1組だけが手に入れることができる万能の願望機。
その正体は敗れたサーヴァントを集めてできた魔力、またはそれを世界の外側へ放ち穿った
孔から引き出した魔力が願いを叶えられる力の正体である。
「………外来の魔術師とサーヴァントが入手するとすれば、聖杯の器だけどね。
聖杯の器の役割は敗れたサーヴァントを集めて大聖杯に通ずる孔を開け、
大聖杯を完全に起動させる。
6騎も集まれば、世界の内側のことは何でも叶えられるだけの魔力になる。」
「7騎すべてを集め終えると大聖杯が完全に起動し、集めたサーヴァントを世界の外側に放つ………。
最後には自分のサーヴァントもお役目御用って言うのは納得いかないわね。」
「………そうですね。そのような形でしか願いを叶えることができない聖杯など、
要らないものですね。」
「…………せっかく召喚したのに、こんなことを伝えてごめんね。セイバー。
でも。この聖杯戦争はきちんとした形で終わらせないといけないの。」
「………ええ、そうですね。
この桜庭市が大災害にまみれることだけは絶対に避けなければ。」
1歩間違えれば、災害にまみれるであろうこの都市を死守することがセイバー陣営の役割である。
「泥にまみれた聖杯で、ブリテンの救済は叶えられそうにもない。
ならば、この都市を守ることが我が望み。そのためなら私は力を貸しましょう。」


続く。

ACT1-(2)

披露宴も無事に終わり、片付けを済ませた頃には既に夕暮れ時となった。
涙ぐむ母親と別れの抱擁をし、満月は芳樹と共に新居に向かった。
「………疲れたかい、満月ちゃん。」
「いいえ、芳樹さんもお疲れ様でした。」
ホクホク笑顔で労いの言葉をかける満月に芳樹は目いっぱいの笑みを零した。
「………さて、と。疲れたところ悪いけど、早速準備をしようか。」
「はい、芳樹さん。」
そう言うと二人は屋外にある庭へと出た。新居とはいえ、
その庭の広さは公園としても開放していいぐらいの大きさを誇る。
庭の中心部には噴水があるが、その噴水を中心に守り刀達が
魔法陣を作成していた。
「………物吉、首尾はどうだい?」
芳樹は満月の守り刀を務める物吉貞宗に声をかけた。
スッ、と2人の前に物吉が跪いて頭を垂れる。
「……はい、首尾は上々です。後は祭壇に聖遺物を用意するだけでございます。」
「………そうか。」
「ありがとうね。こんなことを任せて。」
「いえ、これも僕達守り刀の役割ですから。」
「………でも本当に1500年前の発掘品とは思えない代物ですね。
傷1つない。」
「うん、ただ装備しているだけで傷を癒し、老化を停滞させる。
ただ、本来の持ち主からの魔力供給が必要だけれど。」
「そうですね。姫宮と綿貫が総力を挙げて探し出したものですから。
凡そ考えうる限り、最高のカードですよ。」
「そうだね。」
満月の言葉に頷いた芳樹は魔法陣の出来を見るため、地面にしゃがみ込んだ
「……うん、こんなところでいいかな。」
「サーヴァントを召喚するのにこんな単純な儀式でホントに構わないんですか?」
「サーヴァントの召喚にはそれほど大がかりな降霊は必要はない。
実際にサーヴァントを召喚するのは術者じゃなくて、聖杯だからね。
さて、何はともあれ、準備は整った。」
「…………はい。」
芳樹の指示で祭壇に1500年前もの時代から発掘された聖剣の鞘が置かれる。
「じゃあ、満月ちゃん。一緒に。」
「はい。」
「…………素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風に壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で王国に至る三叉路は循環せよ。」
「閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)
繰り返すごとに5度、ただ満たされる時を破却する。」
魔法陣が光り輝き、魔力が放出される。芳樹は満月の腰に手を回し、
詠唱を続けた。
「告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄る辺に従い、この意この理に従うならば応えよ。
誓いをここに 我は常世総ての善と成る者 我は常世総ての悪を敷く者
汝三大の言霊を纏う七天 抑止の輪より来たれ 天秤の守り手よ…………!!」


魔法陣の上には、芳樹と満月が呼び出した英霊が立っていた。
そして英霊は口を開いて、声を出した。

「…………問おう。貴方が私のマスターか?」





続く。

ACT1-(1)

綿貫芳樹は人生の中で絶頂の時を迎えていた。
世界有数の巨大複合企業グループの御曹司として生まれてから、30年余り。
煌びやかな世界でありながら、嫉妬や欲望が渦巻く芸能界に
身を置いてから20年ほど過ぎたが名誉ある賞を受賞した時よりも彼は興奮していた。

自分のために用意された婚約者との結婚を間近に控え、
前日の夜は眠れなかった。
「………若旦那様。お嬢様の準備が整ったぜ。」
自身の身の回りの世話と護衛を兼ねている使用人を務める守り刀が
声をかける。

「そうか……そろそろいよいよなんだね。」
藍色の髪と同じ色をした瞳を守り刀に向け、芳樹はそわそわとし始める。「「
「長かったものなぁ……お嬢様が学校を卒業するまでの時間が。」

守り刀の案内で芳樹は式場の長い廊下を歩く。
12歳年下の幼馴染兼婚約者が法的にも結婚できる年齢を過ぎたのは
つい先日のことだ。
あれよこれよといううちに挙式の準備が進み、婚姻届けを市役所に出した。
市役所にいた女性市長から豪勢な花束を贈呈されたのは記憶に新しい。
御堂に到着すると列席者が起立して芳樹を迎えた。
祭壇前にて新婦を待っていると扉が開かれ、白い花嫁衣裳に
身を包んだ新婦・姫宮満月が父親の秀一と共に入場した。
秀一から満月の手を受け取り、芳樹は満月と共に
バージンロードを歩く。
列席者が讃美歌を歌った後、神父は聖書朗読と祈祷をした。
「新郎、綿貫芳樹。貴方はここにいる姫宮萬月を病める時も健やかなる時も、
富める時も貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「はい、誓います。」
「新婦、姫宮満月。貴方はここにいる綿貫芳樹を病める時も健やかなる時も、
富める時も貧しき時も、旦那として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「………はい、誓います。」
満月の返答に芳樹は顔がにやけそうになるのを必死に抑えた。
にやけるにはまだ早い。
誓約が終わり、指輪を交換したところで芳樹はベールアップ・ウエディングキスをした。
そして結婚成立の宣言と結婚証明書に署名する儀が終わり、
新婦は列席者に結婚が成立したことを報告し、閉式を伝えた。

芳樹と満月は腕を組んでバージンロードを後にした。


続く。

プロローグ



…………聖杯戦争。
それは60年に1度行われる、
あらゆる願いを叶えるとされる、
万能の願望機「聖杯」の所有権を巡って開催される殺し合いの儀。


………そして、血に塗れたこの戦いが桜庭市で行われようとしていた。



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