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ACT1-(9)

「…………これは酷いな。」
桜庭市にある工場跡地で、山姥切国広は信じられないという表情をした。
辺り一面、血痕が残っており、死体のものと思われる臓物が散乱していた。
「…………大丈夫か?」

その異様な光景から、警察官の中には戻す者もいた。
「…………辛いと思う者はこれ以上見ない方がいい。」


山姥切の言葉に無理だと判断した警察官達は素直に従った。

「…………それにしても酷いですね、まんばちゃん。」
スプラッター映画を見慣れているとはいえ、
現場のあり様に驚いている顔馴染みの警察官に山姥切は
ああ、と呟いた。

「…………これ、魔法陣があるってことは黒魔術かなんかですか?」
「だろうな。
専門書を見たんだろう。………これはかなり本格的な奴だ。」
「………何かを呼び出したんでしょうかねえ…………。」
「………これじゃ、身元の特定は難しいな。」
「それにしても、何でこんなところで…………。」

上半身と下半身を真っ二つに斬られた死体を見た山姥切はん?と首を傾げた。
「………これは。」
「どうかしたんですか?」
「………毒物だな。」
「え、あの、気体じゃないですよね……?」

咄嗟に口に手を当てた警察官に山姥切は大丈夫だ、と言った。

「これは液体の毒物だ。………多分、オリジナルだろうな。
既存のモノをブレンドしたわけではなさそうだ。」
「……………あーそれってつまりあれです?毒物の製造ですかね?」

「………そうだな。」
「………そういえば、フランスに確かそういうのいませんでしたっけ?
毒物の製造販売をして、当時のフランスを恐怖に陥れた………えっと……。」

「………ラ・ヴォワザンか?」
「ええ、そうですそうです。確かそういう名前の女が17世紀にいたと。
………何ていうかここのところ、桜庭市で発生していますよね。
毒殺された死体の血液や臓物を利用して、魔法陣を描いているっていう事件が。」
「………国際指名手配されているアシヤ・ハイリンヒ・ドウマンだったな。
毒薬の製造販売者にして、黒魔術崇拝主義者の。」
「…………ひょっとしてなくてもこれ、アシヤの仕業ですかね?」
「十中八九、そうだろうな。」
「………怖いですね。」
「………。」
警察官の言葉をよそに山姥切はキョロキョロと周囲を見回した。

「………どうかしたんですか?」
「………いや。誰かに見られているような気がしてな。……うん。」
「…………やめてくださいよ、守り刀さんって霊感強い方多いじゃないですか………。」
「……………どちらかと言えば兄弟の方が強いな。」
「………山伏さんの方でしたよね。」
「………とりあえず、旦那様に報告をしないとな。」




続く。

ACT1-(8)

…………日付が変わった、深夜の桜庭市。
「………何か物足りないわねぇ………。」
アシヤ・ハイリンヒ・ドウマンは先ほど殺した通行人の肉体から、臓物を引きずり出しながら
そう呟いた。
「………あ、そうだ。この間見た魔導書みたいなものから、ヒントを得ましょうかねぇ。」
そういうとアシヤは死体から溢れる血を使い、魔法陣を描いた。
「えーっと、何か触媒がいるって聞いたけどぉ………。
どうにでもよくなっちゃったわねぇ。」
魔法陣を描いたアシヤは足りない部分を毒薬で補った。


「えーっと………呪文はどうだったっけ………?
あ、そうそう……。
素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

閉じよ(みたせ)、閉じよ(みたせ)、閉じよ(みたせ)、閉じよ(みたせ)、閉じよ(みたせ)。

繰り返すつどに5度。ただ、満たされる刻を破却する。……告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば、応えよ。
誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、
天秤の守り手よ………!!」

アシヤが呪文を唱えると、魔法陣が輝き、中央から1人の女性が現れた。

「………私はキャスターのクラスを依り代に限界した、ラ・ヴォワザン……。
真名、カトリーヌ・モンヴォワザンと言います。
貴方が、私を召喚したマスターでしょうか?」
「………へぇ、17世紀のフランスで当時流行していた毒殺事件の主犯ともいえる女性?
貴女、サーヴァントで良いの?」
「………はい。」

「フランスの黒魔術師、毒薬・製造販売者。良いわ、良いわぁ!」


そういうとアシヤはキャスターの手を握った。

「私も、毒薬を製造販売しているのよねぇ。後は黒魔術!
なるほどなるほど、そういうことね!」

手に宿った令呪を見て、にこにこと笑うアシヤにつられてキャスターも笑った。




続く。

ACT1-(7)

「…………見られているなぁ。」
「………ですね。」
カフェテラスが自慢の喫茶店で、軽食を摂ることにした4人は視線に気づいた。
「……使い魔の類ですね。
…………セイバーのことをじっくりと見るつもりなのかな。」
「………まあ、最初は情報戦になるからね。
敵が誰で、何のサーヴァントを召喚したのか気になるのは当然と言えば当然だと思うよ。」
「………ですね。」
「まあ、何と言っても俺達に最優のサーヴァントを引き当てられたのが案外気に食わなかったりして。」
「…………笑えないですよ、芳樹さん。」
「旦那様、笑えない冗談はやめてください。」
「……………旦那様、奥様。探しましたぞ。」
不意に声をかけられて、芳樹はああ、と頷いた。
満月の守り刀をしている一期一振が書類の入った封筒を手にし、現れた。
「………頼まれていた情報収集が完了致しました。」
「うん、ありがとう。車の中で見ようか。」


軽食を摂り終え、一期は4人と共に車に戻った。


「………エミリスフィール・フォン・アインツベルン、間桐慎三、遠坂久遠。
始まりの御三家はこの3人を選出したわけですね。
………遠坂以外は、当主が出るわけじゃないんだ。」
「左様でございます。
アインツベルンは錬金術、間桐は蟲、遠坂は宝石魔術に特化していますので………。」
「アインツベルンはある程度、度外視してもいいだろう。
元々荒事に向いていない一族だし。
後回しにしてもいいくらいだ。
間桐については蟲は炎を使えばいいだけの話だし
どちらかと言えば遠坂が厄介かな。」

「そうですね。…………宝石魔術は使い捨ての割に爆発力が凄いですから。」
「うん。
………で、部外者枠は?」
「魔術協会から、クレメンス・オックスフォードが選出されています。
妻のベアトリーチェ・オックスフォード共々、出陣するようで。」

「………へぇ。仲睦まじくない夫婦も、選ばれたのか。」
「……この2人は仲が悪いのですか?」
「政略結婚をしているからね。婚姻届を出しただけで、挙式はしていない。
妻のベアトリーチェは老いることを嫌っているからね。
……………永遠の若さと美しさを求めて何人もの女性を殺しているのか。」
書類に目を通す芳樹の説明に満月は怪訝そうな顔をした。

「……となると満月も恰好の餌食になってしまうのではないですか?」
「避けては通れない茨の道ってことか………。
………で、俺達を入れると5組が選出されているってことか。」
「残る2組は?」
「………申し訳ありません。調べみたのですが、未だ空席でした。
しかし、6組目はダニエル・カサノヴァが選出される可能性が極めて高いです。」

「……政府非公認の、暗殺請負人か……。
表立って警察は逮捕することができない奴だな。」
「そうなのですか?」
「ああ。仕事の完遂度から依頼を何度もする国もいるからね。
彼を捕まえるってことは、自分達の悪事を認めるようなものだし。」
「……暗殺請負人が参加するとなると、アサシンクラスのサーヴァントを召喚している可能性が大ですね。」
「そうだね。俺達は正々堂々とした勝負をするけど、アサシンは真っ向勝負が不得手な代わりに
闇討ち暗殺を得意としているからね。」

「……………でも残る1組がわからないというのは不気味ですね………。」



続く。

ACT1-(6)

………桜庭市、聖堂教会。
そこでは始まりの御三家の一角である、遠坂家当主の遠坂久遠が
草摩瑠樹に話をしていた。
「……つまり、世界の外側には力があるということですか。」
「そうだ。根源の渦と呼ばれる神の座だ。
かつて遠坂とアインツベルン、そして間桐の三家は互いの秘術を提供し合い
万能の釜たる聖杯を現出させた。
だがしかし、その聖杯が願いを叶えるのはただ1人の祈りのみ。
それが分かった瞬間、我々は協力関係を撤退し、血で血を洗う戦いが始まったわけだ。」
「………それが60年に1度、行われる聖杯戦争というわけですか。」
「そういうことになる。聖堂教会としては、
聖杯の使用目的を明確にしている遠坂君に引き渡したい、というわけだ。」
聖堂教会の神父である草摩璃樹は、瑠樹にそう話をした。
「………根源への到達。我が一族はただそれを目的としてきた。
しかし悲しいかな、アインツベルンと間桐はすっかり目的を履き違えてしまった。」
「………僕にも聖杯戦争に参加しろと?」
「そういうことになるな。表面上は我々聖堂教会は中立を装う。
だが、水面下では久遠氏に有利な状況を作れるように最善を尽くすのだ。」
「…………わかりました。」
「ああ、召喚の儀は今夜行う。
瑠樹君、君は今晩までに召喚の儀の魔法陣を描きたまえ。
それと詠唱の呪文も。」
「………了解しました。」


「…………………ふぅん、これが触媒なわけ?」
「………そうだ。」
クレメンス・オックスフォードは妻であるベアトリーチェ・オックスフォードの問いにそう答えた。
魔術協会のつてを使い、クレメンスはサーヴァントを召喚するための触媒を入手した。
「…………これで、最優とされる三騎士のうちの1つ、ランサーを召喚する。
最速かつ迅速にことを終わらせたいからな。厄介なのは最優とされるセイバーだが
まぁ、それに越したことはない。」
「………ねぇ、本当に聖杯を貰ってもいいの?」
「構わんよ。聖杯戦争という戦いに箔をつければそれで良い。私は聖杯に興味がないから、
好きに使っても構わない。」
「感謝するわ。」
「………だが、くれぐれも私の邪魔はするなよ?」
「ええ、わかっているわ。」



続く。

ACT1-(5)

「………………どう、この街は。」
芳樹の運転する車に乗り、セイバーは満月達と共に桜庭市にある商店街を訪れた。
「……………随分と活気に溢れていますね。」
「ここは1番賑やかなところですからね。」

「………ねぇねぇ、あれって綿貫芳樹さんに満月ちゃんじゃない?」
「うわ、本物?」
「この間の結婚式、凄かったらしいね。」
「ああ、見たかったなぁ…………。」
コインパーキングに車を停め、商店街を歩くと通行人達に振り返られた。

「……………新婚旅行はよろしかったのですか?」
「……あはは、しょっちゅう旅行に行ったりしているから今更感があるんだよね。」
「別に焦らなくてもいいんじゃないかなって思っているの。
何事にも順番っていうのがあるから。」
「はぁ…………。」
「………それよりもセイバー。貴女、本当にその格好でいいの?」
満月の言葉に、セイバーははて?と首を傾げた。
「ええ、こちらの格好の方が動きやすいのですが………。」
セイバーの着ている服はダークスーツという、いかにも男装向けの格好であった。
「…………私も男装していたからわかるんだけど、
やっぱり年頃の女の子がそれを着るのはちょっとなぁ………。」
「満月ちゃんがそれを言う?」
「………む、だからこうして年相応の服を着ているじゃないですか。」
「あはは、むくれなくてもいいのに。」
手を繋ぎ、のほほんと会話をするその姿はまるで長年連れ添った夫婦のそれである。

「…………………こんな活気の良い街で、聖杯戦争が起こるのですね。」
「………うん。俺達は聖杯戦争を止める側だからね。」
「何万人もいるこの人里で人知れず、戦いをするって言うのが納得いかないというか。」
「でも止めなければ、たくさんの命が無駄死になってしまいますからね。」
物吉の言葉に芳樹達は頷いた。

「…………何事もなかったかのように振る舞うためにはやっぱり色々と動かないといけないかな。」
「そうですねぇ。」
「……………芳樹、満月。貴方達は最後まで勝ち残ります。
私が最後まで生き残らせます。騎士の誇りにかけて。」

「………ありがとう、アルトリア。」
「………うん。心強いね。」


続く。

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