「…………以上が報告だ。」
綿貫家に戻った山姥切は芳樹にそう話した。
「……なるほど、ラ・ヴォワザンか………。
毒薬製造販売者もしているアシヤ・ハイリンヒ・ドウマンが術式を使用したとしたら、
十中八九、キャスターのクラスのサーヴァントを召喚している可能性は大だな。」
「………一応、使い魔を飛ばしてアシヤの足跡を追っているところだ。
ただ、毒物となると結構厄介かもしれない。」
「………そうだね。既存品の毒物を使っているなら、分析さえすればどうとでもできるけど
オリジナルブランドのものだったら、対処しづらいな。」
「連続毒殺犯と狩猟殺人犯ですか…………。
始まりの御三家よりも先に始末しないといけないですね。」
「ああ。奥様の言う通りだ。」
「………とにかく、使い魔による追跡はこのまま続行してくれ。
聖堂教会も殺人犯が聖杯を求めているとなると知ったら、阿鼻叫喚だからね。
真っ先にキャスター陣営を始末するようにって指示が来るかもしれない。」
「………ラ・ヴォワザン………フランスの連続毒殺犯ですか。」

「うん。これはフランス人であるお母様が1番良く知っているから、
お母様に聞いた方が早いのだけれど…………。」

「…………泥だらけの聖杯にかける望みが何であれ、
キャスター陣営は極めて危険だ。
もし、ラ・ヴォワザンを召喚していたなら、対毒の魔術を用意しなくちゃならないし
違ったとしても、魔術をどうにかしないとね。」
「……そう、ですね。
最弱だからと言って蔑ろにしたらとんでもないしっぺ返しが来ますし。」

芳樹の膝の上に乗り、満月はそう言った。

「それが1番厄介なんだよね。」

「…………はい。」

「魔術戦に関しては俺達の方でどうにかするから、セイバーはサーヴァントをどうにかしてくれればいい。
幸い、対魔術のランクは高いし。」
「そうですね。」

「………………でも気になるのが、まんばちゃんを見ていた誰かなんですよね。
案外、アサシンクラスなのかな?」
「まあ、山姥切は山伏と兄弟関係にあるからその手には聡いし………。」
「……兄弟に比べたら、些細なことだ。もしかしたら勘違いかもしれない。」

「いえ、それはとても大切なことだと思います。
直感、という奴ですね。」

「………そうか。」
「はい。」


セイバーの言葉に山姥切はそうか、と呟くと失礼すると言って自分の持ち場に戻った。



続く。