「ご覧ください、本日桜庭市は桜庭市コミケ&仮装デーということもあり、
大勢の人で賑わっています!」
テレビカメラの前で女性リポーターが桜庭市商店街の様子をテレビ局のスタジオに伝えていた。
「歩行者達は思い思いに自分の好きな格好をして、商店街を歩いています。」

「…………………本当にいつ来てもここは賑やかだねぇ。」
「そうですね、芳樹さん。」
「今日は仮装デーですからね。」
芳樹と満月は物吉と共に商店街に来ていた。
本日は1日オフのため、久しぶりのデートである。

「あ、綿貫芳樹さんと姫宮満月ちゃんが来ました。今日はデートなのでしょうか?」

リポーターの声に気づいた2人は軽く手を振った。
商店街を歩いている歩行者達は2人に気づき、黄色い歓声を送る。

「じゃあ、着替えるとするか。満月ちゃん、また後でね。」
「はい。」

共有の更衣室として開放されている空き店舗で、3人はいったん別れることにした。

………………それから十数分後。

「………まぁ、こんなところかな。」
先に出てきた芳樹は和泉守兼定の格好をして、歩道で満月を待った。
「お待たせしました、芳樹さん!」

堀川国広の格好をした満月が物吉と共にパタパタと駆けてきた。
ちなみに物吉はメイド服を着ている。

「うん、似合う似合う。」
「えへへ、ありがとうございます!芳樹さんも似合っていますよ!」


「あ、あの、写真撮ってもいいですか!?」
「あ、ズルい、私も!」

あっという間に2人はファンの女性達に囲まれた。

「まあ、今日はオフだけどいいかな。」
「そうですね。せっかくのコミケ&仮装デーですし。」


「ありがとうございます!」

スマホやデジカメで一通り、写真撮影をした後、ファン達はお礼を言った。
「良いファン達だねぇ、ちゃんと分を弁えているというか。」
「そうですね。マナーの悪い方達でしたら、丁重にお断りしていましたけど。」
「まあ、なかなか芸能人との記念撮影なんてできませんからね。」

「…………で、春花ちゃんは同人即売会に出店しているんだっけ?」
「はい。従姉妹が腐っているとかで、売り子として駆り出されたらしく…………。」
「……………ああ、それでいい出会いがないとかどうとかボヤいていたんだっけ。
智久でも押し付けたら発狂しそうだね。」
「その前に智久さん、お断りだって言いますよ。」
「………智久様も、人間ですから。好みが必ずしも一致するとは限りませんよ。」
「そうなんだけどねぇ……………。」



続く。