披露宴も無事に終わり、片付けを済ませた頃には既に夕暮れ時となった。
涙ぐむ母親と別れの抱擁をし、満月は芳樹と共に新居に向かった。
「………疲れたかい、満月ちゃん。」
「いいえ、芳樹さんもお疲れ様でした。」
ホクホク笑顔で労いの言葉をかける満月に芳樹は目いっぱいの笑みを零した。
「………さて、と。疲れたところ悪いけど、早速準備をしようか。」
「はい、芳樹さん。」
そう言うと二人は屋外にある庭へと出た。新居とはいえ、
その庭の広さは公園としても開放していいぐらいの大きさを誇る。
庭の中心部には噴水があるが、その噴水を中心に守り刀達が
魔法陣を作成していた。
「………物吉、首尾はどうだい?」
芳樹は満月の守り刀を務める物吉貞宗に声をかけた。
スッ、と2人の前に物吉が跪いて頭を垂れる。
「……はい、首尾は上々です。後は祭壇に聖遺物を用意するだけでございます。」
「………そうか。」
「ありがとうね。こんなことを任せて。」
「いえ、これも僕達守り刀の役割ですから。」
「………でも本当に1500年前の発掘品とは思えない代物ですね。
傷1つない。」
「うん、ただ装備しているだけで傷を癒し、老化を停滞させる。
ただ、本来の持ち主からの魔力供給が必要だけれど。」
「そうですね。姫宮と綿貫が総力を挙げて探し出したものですから。
凡そ考えうる限り、最高のカードですよ。」
「そうだね。」
満月の言葉に頷いた芳樹は魔法陣の出来を見るため、地面にしゃがみ込んだ
「……うん、こんなところでいいかな。」
「サーヴァントを召喚するのにこんな単純な儀式でホントに構わないんですか?」
「サーヴァントの召喚にはそれほど大がかりな降霊は必要はない。
実際にサーヴァントを召喚するのは術者じゃなくて、聖杯だからね。
さて、何はともあれ、準備は整った。」
「…………はい。」
芳樹の指示で祭壇に1500年前もの時代から発掘された聖剣の鞘が置かれる。
「じゃあ、満月ちゃん。一緒に。」
「はい。」
「…………素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風に壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で王国に至る三叉路は循環せよ。」
「閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)、閉じよ(満たせ)
繰り返すごとに5度、ただ満たされる時を破却する。」
魔法陣が光り輝き、魔力が放出される。芳樹は満月の腰に手を回し、
詠唱を続けた。
「告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄る辺に従い、この意この理に従うならば応えよ。
誓いをここに 我は常世総ての善と成る者 我は常世総ての悪を敷く者
汝三大の言霊を纏う七天 抑止の輪より来たれ 天秤の守り手よ…………!!」


魔法陣の上には、芳樹と満月が呼び出した英霊が立っていた。
そして英霊は口を開いて、声を出した。

「…………問おう。貴方が私のマスターか?」





続く。