「…………見られているなぁ。」
「………ですね。」
カフェテラスが自慢の喫茶店で、軽食を摂ることにした4人は視線に気づいた。
「……使い魔の類ですね。
…………セイバーのことをじっくりと見るつもりなのかな。」
「………まあ、最初は情報戦になるからね。
敵が誰で、何のサーヴァントを召喚したのか気になるのは当然と言えば当然だと思うよ。」
「………ですね。」
「まあ、何と言っても俺達に最優のサーヴァントを引き当てられたのが案外気に食わなかったりして。」
「…………笑えないですよ、芳樹さん。」
「旦那様、笑えない冗談はやめてください。」
「……………旦那様、奥様。探しましたぞ。」
不意に声をかけられて、芳樹はああ、と頷いた。
満月の守り刀をしている一期一振が書類の入った封筒を手にし、現れた。
「………頼まれていた情報収集が完了致しました。」
「うん、ありがとう。車の中で見ようか。」


軽食を摂り終え、一期は4人と共に車に戻った。


「………エミリスフィール・フォン・アインツベルン、間桐慎三、遠坂久遠。
始まりの御三家はこの3人を選出したわけですね。
………遠坂以外は、当主が出るわけじゃないんだ。」
「左様でございます。
アインツベルンは錬金術、間桐は蟲、遠坂は宝石魔術に特化していますので………。」
「アインツベルンはある程度、度外視してもいいだろう。
元々荒事に向いていない一族だし。
後回しにしてもいいくらいだ。
間桐については蟲は炎を使えばいいだけの話だし
どちらかと言えば遠坂が厄介かな。」

「そうですね。…………宝石魔術は使い捨ての割に爆発力が凄いですから。」
「うん。
………で、部外者枠は?」
「魔術協会から、クレメンス・オックスフォードが選出されています。
妻のベアトリーチェ・オックスフォード共々、出陣するようで。」

「………へぇ。仲睦まじくない夫婦も、選ばれたのか。」
「……この2人は仲が悪いのですか?」
「政略結婚をしているからね。婚姻届を出しただけで、挙式はしていない。
妻のベアトリーチェは老いることを嫌っているからね。
……………永遠の若さと美しさを求めて何人もの女性を殺しているのか。」
書類に目を通す芳樹の説明に満月は怪訝そうな顔をした。

「……となると満月も恰好の餌食になってしまうのではないですか?」
「避けては通れない茨の道ってことか………。
………で、俺達を入れると5組が選出されているってことか。」
「残る2組は?」
「………申し訳ありません。調べみたのですが、未だ空席でした。
しかし、6組目はダニエル・カサノヴァが選出される可能性が極めて高いです。」

「……政府非公認の、暗殺請負人か……。
表立って警察は逮捕することができない奴だな。」
「そうなのですか?」
「ああ。仕事の完遂度から依頼を何度もする国もいるからね。
彼を捕まえるってことは、自分達の悪事を認めるようなものだし。」
「……暗殺請負人が参加するとなると、アサシンクラスのサーヴァントを召喚している可能性が大ですね。」
「そうだね。俺達は正々堂々とした勝負をするけど、アサシンは真っ向勝負が不得手な代わりに
闇討ち暗殺を得意としているからね。」

「……………でも残る1組がわからないというのは不気味ですね………。」



続く。