…………日付が変わった、深夜の桜庭市。
「………何か物足りないわねぇ………。」
アシヤ・ハイリンヒ・ドウマンは先ほど殺した通行人の肉体から、臓物を引きずり出しながら
そう呟いた。
「………あ、そうだ。この間見た魔導書みたいなものから、ヒントを得ましょうかねぇ。」
そういうとアシヤは死体から溢れる血を使い、魔法陣を描いた。
「えーっと、何か触媒がいるって聞いたけどぉ………。
どうにでもよくなっちゃったわねぇ。」
魔法陣を描いたアシヤは足りない部分を毒薬で補った。


「えーっと………呪文はどうだったっけ………?
あ、そうそう……。
素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

閉じよ(みたせ)、閉じよ(みたせ)、閉じよ(みたせ)、閉じよ(みたせ)、閉じよ(みたせ)。

繰り返すつどに5度。ただ、満たされる刻を破却する。……告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば、応えよ。
誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、
天秤の守り手よ………!!」

アシヤが呪文を唱えると、魔法陣が輝き、中央から1人の女性が現れた。

「………私はキャスターのクラスを依り代に限界した、ラ・ヴォワザン……。
真名、カトリーヌ・モンヴォワザンと言います。
貴方が、私を召喚したマスターでしょうか?」
「………へぇ、17世紀のフランスで当時流行していた毒殺事件の主犯ともいえる女性?
貴女、サーヴァントで良いの?」
「………はい。」

「フランスの黒魔術師、毒薬・製造販売者。良いわ、良いわぁ!」


そういうとアシヤはキャスターの手を握った。

「私も、毒薬を製造販売しているのよねぇ。後は黒魔術!
なるほどなるほど、そういうことね!」

手に宿った令呪を見て、にこにこと笑うアシヤにつられてキャスターも笑った。




続く。