「…………でね、ここ毎日不規則になるんだけど変な声がするのよ。
それで夜勤の看護師がすっかり怯えちゃってね。
ヒスイちゃん、どうにかしてくれないかな?もちろんお礼は出すわ。」
「………ゴーストタイプでも住み着いちゃったのかなぁ?」

とある日の午後。小児科病棟でルリの相手をしていたヒスイは看護師から話を聞いた。
何でもここ最近、夜な夜な変な声がするらしいのだ。
時間は特に決まっておらず、不規則であるため夜勤の看護師がすっかり怯えてしまい
業務に支障がきたすようになったらしい。

「…………まぁ、確かに病院ってあっちとこっちの境界線があやふやだったりするから………。」

夜になり、ヒスイはヒトモシ、ランプラー、シャンデラを連れて薄暗い病棟を歩くことにした。

「…………夜の病院って案外、静かなのね…………。」
「…………うん、そうだね。ヒスイお姉ちゃん。」

わらわらとついてきたルリにヒスイはため息をついた。
ルリも夜な夜な聞こえる変な声が気になり、昼寝をしたのだ。

「ホントに怖くないの?」
「えー、だって夜勤の看護師さんが怯えちゃっているぐらいの声って何だろう?って凄い気になるんだもん。」
「良い子はとっくに寝てる時間なんだけどなぁ…………。」

ルリの足元にいるラルトスとイーブイはにこにこと笑っている。


「………お姉ちゃんはポケモンだって思っているの?」
「多分だと思うんだけどね。…………まぁ、ここの病院ってお祓いとかそういうのをきちんとしているし、
取りこぼしはしていないと思うんだけど…………。」


ヒスイがそこまで言った時、変な声が聞こえてきた。

「………あそこかしら。シャンデラ、<シャドーボール>!」

ヒスイの指示でシャンデラは<シャドーボール>を繰り出した。

「当たった?」
「様子見でのワンショットだからね………。」

「……キュ?」


「……………ん?」
「……………あ、ミミッキュだ。しかも色違い。………あー、無傷か。」


「え?何で?」

「………ミミッキュの特性は<ばけのかわ>って言って、1度だけ攻撃を無効化するのよ。
野生のポケモンが病院に入り込むなんて、迷子になったのかしら。」

「ねーねー、お姉ちゃん!私、ミミッキュが欲しい!!」

「………言うと思った。ヒトモシ、ランプラー、<はじけるほのお>!シャンデラ、<シャドーボール>!」

3匹の攻撃を受けて、ミミッキュは吃驚し、外に逃げようとした。


「逃がさないわよ、行け、ダークボール!」

ヒスイが投げたのは暗闇や洞窟の中で捕まえやすくなるダークボールであった。

ダークボールはミミッキュの体に当たると、そのまま収納した。
左右に揺れること、3回。
カチッ、と言う音がして、ミミッキュはゲットされた。

「よし、これで事件解決。………………ってん?」

ぐすんぐすん、という鳴き声にヒスイは顔を青くした。

「………………え、もしかして本物の幽霊……………?」

顔を真っ青にするルリ達を庇う形でヒスイが前に出ると、半透明のパジャマを着た少女が現れた。

「……………寂しいの。ミミッキュは私に気づいて遊んでくれていたの…………。」

「………………そっか、ミミッキュもゴーストタイプを持っているから貴女に気づいたのね。
でも、貴女も逝くべきところに逝かないと、ダメだよ。」

「…………………うん。お願いがあるんだけど良い?」

「良いよ。何?」

「………パパとママのところに生まれてきて幸せだったよ、って伝えてくれる?
後、看護師さん達にわがまま言ってごめんなさいって。」


「…………わかった。伝えるわ。」
「ありがとう、お姉ちゃん。ミミッキュのことをよろしくね。」

にっこり笑い、少女はスーッと消えて行った。

「…………さ、てと。私達も帰って寝るか。」
「うん。……何か全然怖くなかったね。」


「…………そうだね。」



終わり。