櫻井浩二の追求をかわしつつ、収録は無事に終わった。

深愛と涼子は澪の控室でぐだっとしていた。

「お疲れ様でした、深愛さん。澪さん。」
「櫻井さんの追求、何とかかわしましたね。」

アミとティエに労いの言葉をかけられて、深愛と澪はありがとうと言った。

「………………一応、誰もいないよね?」

扉を開けて誰もいないことを確認した涼子はヒソヒソと話した。

「………M計画って非人道的な実験だったの?」
「…………まぁ、怪獣の遺伝子を人間の受精卵に組み込むっていう時点では非人道的な実験だね。」
「………というか、そもそも、人の身で怪獣の力をコントロールするってこと自体が無謀なのよ。」
「結構体重重いからね、私。」
「………防衛軍の医療チームが身体測定に来るぐらいだものね。
当たり前と言えば当たり前だわ。
そのリストバンドがなければ、あっという間に体重が重たくなるし。」
「…………技術局の皆様方には感謝感激しかないわ……………。」
「………………深愛も大変だけど、防衛軍も大変だねぇ。」

その時、コンコンという音がして5人はビクッとなった。

「…………あの、すみません。」
「……………誰?」
「あ、失礼しました。私、小野かのゑのマネージャーをしています宮森と申します。」
「小野……かのゑ?」

「って、大女優の!?」

「……………そんな有名な方なんですか?」
「あ、そっか。アミとティエんところってテレビないんだったね。
日本を代表する大女優で、半世紀以上も活躍している凄い人なんだよ。」

「…………それで、その宮森さんは何の用事で?」

「実は海堂さんにお願いがありまして。」
「お願い……ですか?」

「………ええ、小野の家がある敷地に住み着く何かを追い払って欲しいのです。」
「……何か?」

「どういうことですか?」

「………それについては私から話をしましょう。」

宮森の後ろから小野かのゑが現れて、澪は驚いた。


「………うわ、すご………オーラが半端ない………。」
「………御年85歳には見えないでしょ?」


「…………数年前から、敷地内の庭に何かが住み着いたのです。
最初は野生動物かと思ったのですが、どうも違うみたいで。」


「………………え、野生動物じゃないなら怪獣?」
「わかりません。ただ、どう考えても動物の仕業とは思えない所業をしているので、
貴女にこうして依頼をしに来たのです。」

「どうして深愛に?小野さんの知名度なら、普通に防衛軍に頼めば済む話じゃ…………。」

「情が沸いているのです。宮森さんは追い払って欲しい、と言いましたが
私はどちらかと言えば怪獣であれ、人間であれ、然るべきところで保護して欲しいのです。
怪獣も人間もこの地球に住む同じ生き物です。
人間の勝手な都合で、命を奪うのは良くありません。」




続く。