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ACT8-(4)

「…………むぅ。それにしても私達は本番まで待機ですか。」
「まぁ、仕方がないね。
皇族がウロウロしていたら、それこそ父上の二の舞になる。」
「……護衛もつけずに、御学友と遊びに行った時の話ですか。」

ホテルのロイヤルスイートルームで、智仁と綾子はのんびりと過ごしていた。
「じーじ、護衛もつけずに出かけちゃったの?」
「大変じゃなかった?」

幸仁と幸子の言葉に綾子はそれはもう大変でしたよ、と言った。


「さすがに真昼間で、誘拐をしようとする間抜けはいなかったけど
祖父母に怒られてね。
ま、今でも酒が入ると当時のことを話すんだよ。」

「へぇ…………。」


「智仁様、綾子様。ただいま帰りました。」
「言い渡された買い物は総て調達して参りました。」


幸仁と幸子の守り刀を務める前田藤四郎と平野藤四郎が、
ロイヤルスイートルームに入室した。
(ちなみに鬼丸と白山はロイヤルスイートルームの前で、監視をしている。)
「前田、平野。ありがとうございます。」
「いやぁ悪いねぇ。お使い頼んじゃって。
迂闊に外に出たら大騒ぎになるから、こればかりは仕方ないさ。」
ニコニコと笑う智仁に前田と平野は揃っていいえ、と口にした。
「智仁様をはじめ、綾子様、幸仁様、幸子様のお役に立てて何よりです。」
「末永くお仕え致します。」
「ありがとう、2人とも。」


続く。

ACT8-(3)


「簡単に説明すると、守り刀達は刀に宿っている付喪神なんです。」

「……………え?」
「………はい?」
「……そんな刀剣男士みたいなノリで言われても………。」
「………パクリか?」
「いや、パクリは違うだろう。パクリは。」

「………………えぇっとですね………。
守り刀は芳樹さんの曾祖母である綿貫美姫さんが作った刀に、
私の曾祖母である姫宮美桜さんが人型を得られるように、霊力を込めたんです。
だから、式神みたいな感じなんですね。」

「はぁ………なるほど。じゃあ、何?性別の概念ないの?」
「ないですね。」
「………………へー。美桜さん凄いなぁ……。」

「驚くところそこか!?いや、凄いと言えば凄いが……。
となると、祐一もできるのか?」
「いや、私は式神作れることは作れるけど、人型はそう作れないよ……。」
「じゃあ、人型以外なら作れるってことだね。」
「……というか、5人共驚かないのがすごいんだけど……。」

「え、結構驚いているよ。
だって世の中、不思議なことが起きたりするからさそれ全部否定したら最悪じゃない。」
「まぁ、確かにそうなんですけどぉ………。」


「………あ、お嬢様!!若旦那様、綾人様、幸人様!」

加州清光が手をブンブンと振りながら、11人を出迎えた。


「…………………一応、付喪神なんだよな?」

「うん、そうだよ?付喪神。作られてから100年は経っているから、
人型になっても不思議じゃないでしょ?」


正宗の問いに清光は、逆に問いを返した。

「………ちなみに芳樹さんの曾祖母は100と8歳まで生きました。」
「満月ちゃんの曾祖母もね。大体そこまで生きたよね。」
「……凄いなぁ………。」


続く。

ACT8-(2)

…………そして厳島神社に行く日が近くなり、満月と芳樹は綾人達と共に
広島に向かった。

「楽しみだねぇ、厳島神社の記念行事に僕達が参加できるなんて。」
「そうだね。2.5次元もそれだけ普及したってことかな。」
「何、いつも通りやっていけばいいさ。いつも通りな。」
「…………何か緊張してきた………。」

「だ、大丈夫ですか?」
「はぁ…………厳島神社でやるとか信じられないよ………。」
「礼儀作法大丈夫かな………。」
「え、そっちが心配か!?」

誠、志鶴、涼、千夏、正宗の5人は礼儀作法がなっているかどうか心配になってきた。

「そんなに大慌てしなくても大丈夫。
きちんと礼儀作法がなっているかどうか見るから安心していいよ。」
「祐一さんの安定感半端ねぇ………。」
「こういう時に神主をやっていると心強いよね………。」

「ああ、そうだ。5人は実物を扱うの初めてなんだったっけ。」

「え?何の話ですか?」

「守り刀達を一時的に借りて、演じることになっているからね。」
「マジか、聞いていないぞ!?」

「……え?守り刀達を一時的に借りるってどういうことですか?」
「………そもそもそこから話すことを説明しなくちゃならないってことですよね………。」

「せっかく奉納の舞をするんだ。できれば刀も模造刀じゃなくて本物の方がいいだろう?」

「………ごめん、話がついていけないんだけど……満月ちゃん。」


「あー、えっと、はい、説明しますね。」


続く。

ACT8-(1)

…………秋風薫る10月中旬。

綿貫家の別邸にある庭園で芳樹と満月はアフタヌーンティーを楽しんでいた。

知り合いの農家から今月出来の良い茶葉をおすそ分けしてもらい、
満月手作りの菓子を頬張り、芳樹は至福の時を味わっていた。

「………………良い季節だなぁ。」
「芳樹さん、それじゃあ年寄りくさいですよ。」

「満月ちゃんよりも12歳年上だもの。年寄りくさいって。」

「若旦那様、お嬢様。お楽しみのところ失礼致します。」

ティーポットセットを手に持った堀川が、2人のところにやってきた。

その後ろには、智仁と綾子が立っている。

「やぁやぁ、諸君。ご機嫌麗しゅう。お加減はどうかな?」

「………智仁様、綾子お義姉様?どうなされたんですか?」
「神嘗祭も無事に終わったことですし、お義父様が羽を休めておいでと言ってくれたのです。」
「芳樹にーに、満月ねーね、こんにちは!」
「こ、こんにちは!」

「こんにちは、幸仁様。幸子様。」

「満月ねーね、お体の具合はどうですか?」
「心配してくれてどうもありがとう。今のところ、平気です。」

「良かったぁ………。満月ねーね、いつも季節の変わり目になると
風邪を引いていたから。」
「…………まぁ、昔はね………。」

「それでねそれでね、厳島神社での奉納行事も楽しみなの!」
「………それが目的か。」
「あっはは。世界遺産登録20周年記念だそうじゃないか。
いやぁ、楽しみだなぁと思って。」

「………智仁さてはお前、俺達が粗相をしないか心配しているんだろう?」

「それもあるけどね。まぁ、こういう行事に僕が行かないわけにはいかないだろう?」
「今回の行事は特別なものと聞きました。衣裳も用意しているのでしょう?」

「…………まぁ、今回はねー……白い衣裳なんですよ、綾子お義姉様。
でも、粗相はしないと思います。祐一さんが居てくれますから。」

「そういえば、祐一も神主の傍ら俳優業をやっていたな。
何はともあれ、楽しみにしているからな。厳島神社での記念行事。」

「………勝手に楽しんでろ。」
「……………あ、智仁様、綾子お義姉様。幸仁様、幸子様。良かったらお菓子いかがです?
今日はカロリー控えめのショートケーキなんです。」
「頂きましょう。満月の手製とくれば食べないわけにはいきません。」
「わーい!」
「その前にお手てを洗わないと………。」



続く。

ACT7-(8)

MCを務めた後、何曲か歌う清光に観客達は歓声をあげた。
会場はペンライトの光に包まれ、赤1色に染まった。

「いいねぇ、こういうのは。悪くない。」
ニコニコと笑いながら、ペンライトを思いっきり振る智仁とそれを苦笑しながらも
見守る綾子に芳樹と綾人はやれやれとため息をついた。

「………何やかんやで、仲良いんだね。」
「そうだね。」

30分に渡るライブは無事に終わり、再度MCでまた会おうねと言ったところで
清光扮した満月は舞台袖に戻った。

「あー、良かった。」
「本当だね……。」
「でもカッコよかったー。」
「さすが姫宮先輩だねー。」

ぞろぞろと体育館を後にする観客達に芳樹達はハイタッチをした。

「………あ、芳樹さん!」
着替えを済ませた満月が芳樹に駆け寄り、飛び込んできた。
「お疲れ様、満月ちゃん。良いステージだったよ。」
「ありがとうございます!」


「お疲れ様でした、満月。生き生きとしていました。」
「本当に良かったねえ………まったく、こういういい子が僕の義妹になるのかと思うと
嬉しいもんだよ。」
「…………よーし、ちょっと表に出ようか、智仁。」
「はっはっは、何でそんなことを言うのかさっぱりわからないね。」
「義妹とか言うんじゃねぇ!」
胸倉を掴みブンブンと左右に振る芳樹に結人達は仰天した。

「義兄ちゃん、さすがにそれはまずいって!」
「あはは、いいんだ。いいんだ、これも友愛って奴なんだよー。」

「…………このイカれた奴が将来天皇になるのかと思うと、頭が痛くなります………。」
「でも愉快で良いじゃない。頭が柔らかい人、私は好きよ?」


はぁ、とため息をつく綾人に愛歌はそう言った。

そして、時間はあっという間に流れ、閉会式が行われた。


「………あーあ、楽しかった。」
「でも私達の文化祭もこんな感じに出来たらいいよね。」
「そうだね。参考になる部分もいくつかあったし。」



「まぁ、それは楽しみだわ。」
「そうですね。公務さえなければ観に行けたのですが………。」
「……あ、智仁様。綾子様、もうそろそろ戻らないとまずいんじゃ………。」

「名残惜しいが、僕達はこれで帰るとしよう!
満月ちゃん、誘ってくれてどうもありがとう。これからも義弟をよろしく頼むよ?」

「は、はい!」

「では、芳樹。また会いましょう。」
「………姉さんも体に気を付けて。」


聖ミカエル女学院を後にするリムジンを見送り、芳樹達はホッと一息をついた。

「……嵐のような方達でしたね。」
「でも楽しそうだったから、良かったんじゃないですか?」

「何やかんやで智仁様も、綾子お義姉様も芳樹さんのこと好きだからね。」
「へぇ。」
「ただ、素直になれないだけで。」

「満月ちゃんはもー!」


続く。
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