…………秋風薫る10月中旬。
綿貫家の別邸にある庭園で芳樹と満月はアフタヌーンティーを楽しんでいた。
知り合いの農家から今月出来の良い茶葉をおすそ分けしてもらい、
満月手作りの菓子を頬張り、芳樹は至福の時を味わっていた。
「………………良い季節だなぁ。」
「芳樹さん、それじゃあ年寄りくさいですよ。」
「満月ちゃんよりも12歳年上だもの。年寄りくさいって。」
「若旦那様、お嬢様。お楽しみのところ失礼致します。」
ティーポットセットを手に持った堀川が、2人のところにやってきた。
その後ろには、智仁と綾子が立っている。
「やぁやぁ、諸君。ご機嫌麗しゅう。お加減はどうかな?」
「………智仁様、綾子お義姉様?どうなされたんですか?」
「神嘗祭も無事に終わったことですし、お義父様が羽を休めておいでと言ってくれたのです。」
「芳樹にーに、満月ねーね、こんにちは!」
「こ、こんにちは!」
「こんにちは、幸仁様。幸子様。」
「満月ねーね、お体の具合はどうですか?」
「心配してくれてどうもありがとう。今のところ、平気です。」
「良かったぁ………。満月ねーね、いつも季節の変わり目になると
風邪を引いていたから。」
「…………まぁ、昔はね………。」
「それでねそれでね、厳島神社での奉納行事も楽しみなの!」
「………それが目的か。」
「あっはは。世界遺産登録20周年記念だそうじゃないか。
いやぁ、楽しみだなぁと思って。」
「………智仁さてはお前、俺達が粗相をしないか心配しているんだろう?」
「それもあるけどね。まぁ、こういう行事に僕が行かないわけにはいかないだろう?」
「今回の行事は特別なものと聞きました。衣裳も用意しているのでしょう?」
「…………まぁ、今回はねー……白い衣裳なんですよ、綾子お義姉様。
でも、粗相はしないと思います。祐一さんが居てくれますから。」
「そういえば、祐一も神主の傍ら俳優業をやっていたな。
何はともあれ、楽しみにしているからな。厳島神社での記念行事。」
「………勝手に楽しんでろ。」
「……………あ、智仁様、綾子お義姉様。幸仁様、幸子様。良かったらお菓子いかがです?
今日はカロリー控えめのショートケーキなんです。」
「頂きましょう。満月の手製とくれば食べないわけにはいきません。」
「わーい!」
「その前にお手てを洗わないと………。」
続く。