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ACT1-(6)

………桜庭市、聖堂教会。
そこでは始まりの御三家の一角である、遠坂家当主の遠坂久遠が
草摩瑠樹に話をしていた。
「……つまり、世界の外側には力があるということですか。」
「そうだ。根源の渦と呼ばれる神の座だ。
かつて遠坂とアインツベルン、そして間桐の三家は互いの秘術を提供し合い
万能の釜たる聖杯を現出させた。
だがしかし、その聖杯が願いを叶えるのはただ1人の祈りのみ。
それが分かった瞬間、我々は協力関係を撤退し、血で血を洗う戦いが始まったわけだ。」
「………それが60年に1度、行われる聖杯戦争というわけですか。」
「そういうことになる。聖堂教会としては、
聖杯の使用目的を明確にしている遠坂君に引き渡したい、というわけだ。」
聖堂教会の神父である草摩璃樹は、瑠樹にそう話をした。
「………根源への到達。我が一族はただそれを目的としてきた。
しかし悲しいかな、アインツベルンと間桐はすっかり目的を履き違えてしまった。」
「………僕にも聖杯戦争に参加しろと?」
「そういうことになるな。表面上は我々聖堂教会は中立を装う。
だが、水面下では久遠氏に有利な状況を作れるように最善を尽くすのだ。」
「…………わかりました。」
「ああ、召喚の儀は今夜行う。
瑠樹君、君は今晩までに召喚の儀の魔法陣を描きたまえ。
それと詠唱の呪文も。」
「………了解しました。」


「…………………ふぅん、これが触媒なわけ?」
「………そうだ。」
クレメンス・オックスフォードは妻であるベアトリーチェ・オックスフォードの問いにそう答えた。
魔術協会のつてを使い、クレメンスはサーヴァントを召喚するための触媒を入手した。
「…………これで、最優とされる三騎士のうちの1つ、ランサーを召喚する。
最速かつ迅速にことを終わらせたいからな。厄介なのは最優とされるセイバーだが
まぁ、それに越したことはない。」
「………ねぇ、本当に聖杯を貰ってもいいの?」
「構わんよ。聖杯戦争という戦いに箔をつければそれで良い。私は聖杯に興味がないから、
好きに使っても構わない。」
「感謝するわ。」
「………だが、くれぐれも私の邪魔はするなよ?」
「ええ、わかっているわ。」



続く。

ACT1-(5)

「………………どう、この街は。」
芳樹の運転する車に乗り、セイバーは満月達と共に桜庭市にある商店街を訪れた。
「……………随分と活気に溢れていますね。」
「ここは1番賑やかなところですからね。」

「………ねぇねぇ、あれって綿貫芳樹さんに満月ちゃんじゃない?」
「うわ、本物?」
「この間の結婚式、凄かったらしいね。」
「ああ、見たかったなぁ…………。」
コインパーキングに車を停め、商店街を歩くと通行人達に振り返られた。

「……………新婚旅行はよろしかったのですか?」
「……あはは、しょっちゅう旅行に行ったりしているから今更感があるんだよね。」
「別に焦らなくてもいいんじゃないかなって思っているの。
何事にも順番っていうのがあるから。」
「はぁ…………。」
「………それよりもセイバー。貴女、本当にその格好でいいの?」
満月の言葉に、セイバーははて?と首を傾げた。
「ええ、こちらの格好の方が動きやすいのですが………。」
セイバーの着ている服はダークスーツという、いかにも男装向けの格好であった。
「…………私も男装していたからわかるんだけど、
やっぱり年頃の女の子がそれを着るのはちょっとなぁ………。」
「満月ちゃんがそれを言う?」
「………む、だからこうして年相応の服を着ているじゃないですか。」
「あはは、むくれなくてもいいのに。」
手を繋ぎ、のほほんと会話をするその姿はまるで長年連れ添った夫婦のそれである。

「…………………こんな活気の良い街で、聖杯戦争が起こるのですね。」
「………うん。俺達は聖杯戦争を止める側だからね。」
「何万人もいるこの人里で人知れず、戦いをするって言うのが納得いかないというか。」
「でも止めなければ、たくさんの命が無駄死になってしまいますからね。」
物吉の言葉に芳樹達は頷いた。

「…………何事もなかったかのように振る舞うためにはやっぱり色々と動かないといけないかな。」
「そうですねぇ。」
「……………芳樹、満月。貴方達は最後まで勝ち残ります。
私が最後まで生き残らせます。騎士の誇りにかけて。」

「………ありがとう、アルトリア。」
「………うん。心強いね。」


続く。

飲ませちゃいけないわけ。

姫宮満月には炭酸飲料を飲ませるな、という話がある。

「…………何で炭酸飲料を飲ませたら駄目なんですか?」
テレビドラマの撮影現場にて、
有栖川澪は満月の婚約者である芳樹にそう訊ねた。
「ああ、満月ちゃんは炭酸が苦手でね。
昔からなんだ。
シュワシュワしたものが嫌いなんだよ。」
「…………それじゃあ、アルコールもダメなんじゃないですか?」
「………うん、そうだね。まだ未成年だから飲ませていないけど、
炭酸がダメならアルコールもダメかなぁ。」
「澪ちゃーん、ちょっといいかなー。」
「あ、はい。………でも満月さんにも苦手なものあったんですね。」
「そりゃ、人間だもの。嫌いなものとか苦手なものは誰にだってあるさ。」

澪を見送った芳樹のところに、守り刀である和泉守兼定がやってきた。
「そらよ、差し入れだ。若旦那様。」
「ありがとう。満月ちゃんの前では炭酸飲めないからね。」
「…………あの子に言わんで良かったのか?
お嬢様が炭酸飲料を飲んだら、酔っ払うって。」
「………言えるわけないだろ。
満月ちゃん、酔っ払うと感度良くなるって。澪ちゃんにはまだ早すぎる。」
「だろうな。」
あはは、と笑う和泉守に芳樹はため息をついた。
「炭酸水もダメだからなぁ、お嬢様。」
「…………誰だよ、炭酸水が美容に良いとか言っていたの。」

そういうと芳樹は缶コーラの蓋を開けて、いっきに飲み干した。


終わり。

ACT1-(4)

「…………とりあえず今、わかっている情報としては
遠坂、間桐、アインツベルンの御三家は確実に当主が参加するだろうね。」
「そうですね………三家とも、根源への到達を目的としていますけど
間桐とアインツベルンは目的を履き違えていますから1番厄介なのは
遠坂ぐらいですかね。」
「御三家、ですか。」
「うん。
聖杯戦争のきっかけを作った始まりの御三家。
遠坂は宝石魔術の使い手だし、間桐は蟲の使い手、
アインツベルンはホムンクルス鋳造に長けているし。
でもわかっているのはそれだけよ?」
「問題は残る3枠の魔術師ですね。」
「そうだよ、セイバー。
俺達の陣営と始まりの御三家を除けば後3枠が残っている。
魔術協会で1枠は確実だから、正確に言えば2枠がある。」
「………外来の魔術師が2枠………特に厄介なのがアサシンの英霊を引き当てた魔術師ですね。」
「まあ、歴代のハサン・サッバーハを引き当てるのは確かなんだろうけど、
誰が来るかはわからないな。」
「そうですね。
始まりの御三家がアサシンを引き当てる可能性も十二分にありえます。」
「…………。」
「………………。」
「………ま、まぁ、当面は情報収集が先でしょうからまずは僕達にお任せください。」
「………そうだね。情報収集は守り刀に任せるとして…………。
ひとまず、街に出ようか。」
「…………はい?」
「………桜庭市がどういった構造をしているのかを知るにはもってこいの機会だし。」
「………ああ、なるほど。そういうことですか。」
「………四神相応の地だから、戦いやすい場所と戦いにくい場所があるだろうし。
セイバーの聖剣は対城宝具だもん。
状況と場所を選ばないと、なかなか真名解放できないから。」
「………そうですね。私の宝具は、対城宝具です。
真名解放はタイミングが必要となってきます。」
「宝具解放のタイミングはセイバーに一任するよ。
いちいち俺達が許可することじゃない。」
「戦いのことはセイバーが1番よくわかっているから。」
「………わかりました。2人の配慮に感謝します。」
「いえいえ、礼を言うのはこちらの方だよ。セイバー。……いや、アルトリア・ペンドラゴン。」
「この桜庭市で2度と聖杯戦争が起きないように勝利するのが私達の目的だから。」
「………はい。」



続く。

ACT1-(3)

綿貫家の庭園は公園並みに広い。
様々な品種の花が季節柄、見頃を迎えている。
庭園を歩く芳樹と満月の後ろを、セイバーは1歩下がって見守っていた。
「………セイバー、どう?楽しんでいる?」
「ここの庭園は気に入ってくれたかな?」
足を止めた2人にならい、セイバーも足を止める。
「………ええ、ここは素敵な場所ですね。十分に手入れがされている。」
「…………気に入ってくれたようで何よりだよ。」
カフェテラスには守り刀である物吉が人数分の紅茶と菓子を用意して待っていた。

「………それにしても意外だった。
アーサー王伝説に出てくる王様がまさか年端もいかない少女だったなんて。」
「私とそんな歳が変わらないなんて、驚いたよ。」
「……確かに私は男として振る舞っていましたが………。
2人共驚くことはないでしょうに。」
「まあ、嘘に嘘を重ねた結果が後の歴史に伝えられたみたいな感じだもんねぇ。」
「驚きはしたけど、君が少女であってもアーサー王であることには変わりない。」
「そうそう、あの有名なエクスカリバーの担い手だものね。
いちいち、性別にこだわっていたらキリがないわ。」
物吉の淹れた紅茶が配膳され、満月は青磁のティーカップに口をつけた。
「………うん、美味しい。」
「今月1番出来のいい茶葉を収穫いたしましたので。……セイバーさんも良かったらどうぞ。」
「ありがとうございます、物吉。」
「…………まぁ、何にせよセイバー。昨日も言ったけど、君の願いは叶えられそうにもない。
それだけは肝に銘じておいて。」
「……そうですね。汚れた聖杯に願いをかけようものなら、どんな災厄が起きるか。」
………そう。今回の聖杯戦争で勝者である1組だけが手に入れることができる万能の願望機。
その正体は敗れたサーヴァントを集めてできた魔力、またはそれを世界の外側へ放ち穿った
孔から引き出した魔力が願いを叶えられる力の正体である。
「………外来の魔術師とサーヴァントが入手するとすれば、聖杯の器だけどね。
聖杯の器の役割は敗れたサーヴァントを集めて大聖杯に通ずる孔を開け、
大聖杯を完全に起動させる。
6騎も集まれば、世界の内側のことは何でも叶えられるだけの魔力になる。」
「7騎すべてを集め終えると大聖杯が完全に起動し、集めたサーヴァントを世界の外側に放つ………。
最後には自分のサーヴァントもお役目御用って言うのは納得いかないわね。」
「………そうですね。そのような形でしか願いを叶えることができない聖杯など、
要らないものですね。」
「…………せっかく召喚したのに、こんなことを伝えてごめんね。セイバー。
でも。この聖杯戦争はきちんとした形で終わらせないといけないの。」
「………ええ、そうですね。
この桜庭市が大災害にまみれることだけは絶対に避けなければ。」
1歩間違えれば、災害にまみれるであろうこの都市を死守することがセイバー陣営の役割である。
「泥にまみれた聖杯で、ブリテンの救済は叶えられそうにもない。
ならば、この都市を守ることが我が望み。そのためなら私は力を貸しましょう。」


続く。
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