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Many Classic Moments19



*まとめ*




その後に辿り着いたお城では、もちろん領主は攘夷軍に武器やら弾薬の供給をしてる攘夷派の方なのでそうそう攘夷'sを無下にはせず、つかもっさんの巧みな話術&交渉によって今後の寝床兼本陣になりましたね。もっさんのこういう時の話術凄そう。

だっていかに攘夷派と言えどたくさんの浪人抱えるのなんて本音ではごめんでしょ、領主様もさ。自分の生活も領民の生活も守りたい筈だしさ。しかも怪我人も大勢いる攘夷'sだから、治療や療養の為にも広間を貸し出す必要あるしね。そりゃあこの城は合戦を見越して建てられてる山城とは言え、持ち主の建前と本音は若干違うって話ですよ。


だがしかし、こういう難しい交渉にこそもっさんは光る。凄く日本人的なソフト断りを見せる領主様(26)を前にして、

「──ええっ今後はこの城を本陣に据える!?……いやァ、その、いかに鬼兵隊の総督の頼みとは言えど、それはちょっと厳しいかも……しれない?なんつって〜ハハ」

こんな事言われても晋助は平然と厳しい条件を提示して踏ん反り返ってるだけなんだけど、そして領主様の愛想笑いに笑いかえす事もしないんだけど(ほんとにこのお姫様はっ)、

もっさんは違いますでしょ?


「ハイどうも〜まいどぉ」

などと言いながら下手から現れるもっさん。既にこの頃から商人の風格、つーか何その嬉々とした表情、お前は本当に攘夷志士なのか?という胡散臭さを全身に纏っております(もっさん)
そんで椅子に踏ん反り返ってる晋助をずずいと軽くどかしつけ(晋助はそのまま横にスライドされていきます)、

「何を仰る領主様!わしらを抱えときゃいい事づくめぜよ!わしらの可能性は無限大じゃ。ここには若き志士の夢を買う気概のある大領主が居る、その器の大きさときたら桂浜の大海にも負けず劣らず……わしゃ地元の土佐でもよう聞いてたもんぜよ」

とまずは領主をアゲる発言。

「ええ?そ、そう?まあね〜俺もさ、外夷はどうしても廃したい派だしさあ。でも参っちゃうな、他領でも有名だったの?それヤバいなあ、参っちゃうなあ(照れ照れ)」

などと照れる領主(てかお前も他のモブに漏れず頭悪いだろうな)。そこにさらに畳み掛けて、

「まっことここの城はええのう。古くてもちゃんと小まめに手入れされとるし、床板なんて黒光りして往年の歴史を感じさせる……こんな城を根城にできたら最高じゃなあ」

ニカッと心底朗らかな笑みを浮かべながら、今度は城を褒める。そしてポンと膝を叩き、

「よし決めた。ここの城、わしが買うぜよ!中古だから安くしてくれるじゃろ?な?」

って、何でもっさんの交渉は最終的に商談になってんの?(あれ?)
何で颯爽と交渉に来たのに城を買うことに……それにはさすがの領主様もずっこけるけどね。ずっこけてもっさんに取り縋る。


「えええ?!無理だから!この城大事だよ、手放したくないよ!売るとか俺は無理だよ、だって先祖から引き継いでるよ!」
「なら仕方ない……わしらがここに居る間に、手放すかどうするか決めてくれんか。なに、わしらも軽く一ヶ月は滞在するきに。ゆっくり決めてくれりゃいい(ニカッ)」
「えええ!!何この人、話通じてない!だから売らないってば、何言ってんのォ!?てか君らの滞在は確定してんの!?(ガタタッ)」

話通じてないですよコレね(真顔)。領主様もかわいそうなお人ですよ、だってこんなもっさんと延々話してるともう頭痛くなってくるしね。そしたらしまいにはもっさんの怒涛の商談をかわすのに疲れて来て(さすが生粋のボンボン領主)、

「いや〜もう坂本さんと話すのはしんどい。アンタ本当にしんどいね、だってずっとこの話題だしね、日本人的な気配りと気遣いでかわせないしね!デリカシーないよね、常識通じないね、こんの商売人!」
「いや〜やり手の領主様にそう言われるとは光栄ぜよ。アッハッハ」(←何も光栄なこと言われてない)

最終的には二人で酒を酌み交わして居るという(どんな)。そして何故か領主様のお母上が土佐出ということで意気投合し(もっさんの天性の運の良さスゲーと思う)、桂浜の素晴らしき景色や土佐の事を肴にさんざっぱら飲み明かし、

最後の仕上げには二人で肩を並べて顔面蒼白になり、ぷるぷると腹筋を震わせながらこみ上げるものを抑えきれず、


「「ゲボロシャアアアアアry」」



……ふう。ここまで来たらもう時代はもっさんに傾いてますよ(いやどこが)
まあそんなもっさんの交渉の甲斐もあり、てか主とのゲロ吐き親交を深めた甲斐もあり、攘夷's達は今度はお城が本陣になりましたさ。



着いた一日目は夜中に到着した事もあり、バタバタしていた事と思いますね。でもまぎれもない敗走軍だったのに、落ちる最中でも死者の一名も出さなかったのは、やっぱりどこかの総督が陣頭指揮とってバッサバッサと出てくる敵を斬り倒してたからじゃないでしょうか。もうマジで張り切ってやがんなあ総督!って言う。

新八くんに『死ぬんじゃねえぞ』と言い、『僕は簡単に死にませんよ』と返してもらった、それだけで総督はもう獅子奮迅の働きですね。だからね、到着した日の翌日の夕方頃になっても姿を見せない晋助にね、新八くんも心配してたのですよ。
他の皆はお昼頃には何とかかんとか起き出して(怪我人除く)、皆各々の事をしているのに、晋助の姿だけは見えないんだもん。新八くんは気もそぞろですよ。


「(高杉さん……昨日再出立の前に会ってから、今日はまだ一回も会ってない。どうしたんだろう。怪我した……とか、そんなことは聞いてないけど。高杉さんが居たからここに着けたんだろうし)」

そんで心なしかふわふわそわそわして己の刀を手入れしていた新八くんを、夕方になって呼び止めたのは桂さん。

「ああ、新八くん。良いところに居た。高杉のことだがな」

他ならぬ晋助の名を口に出され、新八くんの心臓はドキッと弾む。

「あ、ハイ。高杉さんがどうしました?(ドッキドッキ)」

何気ないフリをして聞いてますが、内心はドキドキですよ。

「高杉の様子を見てきてくれないか?何しろ昨日からずっと部屋に篭りきりだ。まあ疲れもあるんだろうが、如何せんもう夕刻だ。食事を摂らせねばなるまい(ふう)」
「そうですね……高杉さん、お疲れなんですね」
「ああ。しかし奴の働きのおかげで、今の俺たちは誰一人かけることなく再度本陣を立ち上げる事ができたからな。正確に言えば奴の鬼気迫る剣技と、坂本の交渉術と言えるが」

晋助を心配してる風情の新八くんにふふっと優しく笑いかけ、桂さんは踵を返すのです。

「じゃあ新八くん、頼んだぞ」

桂さんに言い付けられたら、新八くんだって遠慮はしていられない。むしろ堂々と晋助のお部屋に行けるってもんですよ。だからお城の渡りをパタタと走り抜け(気が急いています)、晋助の寝てるお部屋に急ぐ。

そして部屋の前に立つなり、恐る恐る声をかけた。


「あの……高杉さん?もう夕方ですよ。起きてご飯食べなきゃ身体に良くないですよ」

でも待てど暮らせど、一向に部屋の中から返事はない。だから仕方なく、スルッと障子戸を引き開けてお部屋の中に入りました。

果たして晋助は、八畳ほどのお部屋の中央に敷かれたお布団の上で仰臥してた。てか寝てた。懇々と寝てた。でも広間に居た怪我人連中と同じく、上半身は何も纏わず、所々に包帯や絆創膏を貼ってる姿は痛々しかった。

致命傷には至らずとも、あんだけ斬った張ったもしてたらそら怪我もしますわな。敵の刀の切っ先が頬を掠めただろう、腕を抉ったことだろう。それでも立ち止まらず、むしろ怪我をした事にさえ気付かず、気にせず、晋助は先陣で剣を振るっていたのです。それは己の魂を護る為もあるけど、皆の命を護る為にも。


だからね、新八くんはそんな晋助を見たらそうっと枕元に座って、晋助の傷を改める。

「高杉さん……結構怪我してたんだ」

そして手をそうっと伸ばして、晋助の頬に触れる。大きな絆創膏がぺっと貼られたその頬に(手当:桂さん)、優しく触れる。

「皆を導いてるんだもん……高杉さんは止まれないんですよね。ありがとうございます、高杉さん」

ふう、と小さくため息を吐きながら言った新八くんです。でも声音は優しかった。どこまでも。

だがその時。寝てるとばかり思って、閉じられてた晋助のお目目がぱっちりと開いたのですよ。それに新八くんが驚く暇もなく、下から伸びてきた手によってぐいっと引っ張られる新八くん。

「えっ?!わっ、え、なんっ、ちょちょっ!」

驚くあまりに言葉の切れ端しか口にできない新八くんですね。そんで驚いてる間に、しっかりとお布団の中に引きずり込まれております。晋助の腕の中にすっぽりと抱き込まれています。

「……フン。何を間近で男の裸を観察してやがる、このドスケベが」

などと、今はもうすっかり起きてる晋助に嘲笑われ、てか新八くんが声をかけた時点で起きてたんだろうが、そんな総督の言い分に新八くんはかああと即座に頬を染める。

「お、起きてたのアンタは!ほんっと性格悪いな!揺るぎないな!」
「起きてたもクソもねェな。テメェが枕元で喋ってる声が無駄に響くから起きただけだ」
「ああそうっスか、声がデカくてすみませんでしたね!」


でもこんな皮肉を言うのに、いつもみたいにくつくつと笑うのに、何故かぎゅうぅと己を抱きしめてくる晋助に新八くんは訝しげに眉を寄せて。

「……あの、そろそろ起きた方がいいですよ、高杉さん。ご飯も摂らなきゃダメだし、皆さんが心配してます」

でも晋助の返事はない。ただぎゅうぅと新八くんを抱きしめてるだけなのです。

「えっと、桂さんから聞きましたよ?高杉さんの活躍があったからこそ、皆が無事にこの城まで辿り着けたって。高杉さんのおかげですね」

しかしまだまだ晋助からの返事はない。それに焦れた新八くんがもそもそ動いてても、晋助はまだ黙ってる。そして新八くんを抱きしめたまま、一言だけポツリと呟いた。

「……活躍か。俺がしたのは、ただ斬って斬って斬り捨てて、先頭で敵を殺してただけだ。戦場で散った同胞の分までな」

皮肉げに!皮肉交じりにポツンと言う。でも新八くんは、晋助の背中にそうっと腕を回した。そして優しくさすりながら言った。

「ええ。言葉にするとそれだけですね。でも高杉さんがそうしてくれたから、今生きている方も居ますよ。心が折られなかった人だって。僕が思うに……侍としての死って、魂が死ぬ事なんじゃないですか?皆の魂を護ることができる高杉さんって、凄いですね」

ゆっくり告げられた新八くんの言葉に、やっぱり晋助は何も返さなかった。だけどもそもそと少しお布団に潜って、今度は新八くんの胸に額を預けた。新八くんの温かな鼓動の音を聞く為に。

「高杉さん……」

新八くんは晋助を抱っこして、よしよしって頭を撫でる。晋助の少し癖のある髪を撫でて、包帯の巻かれた肩を摩った。
晋助はやっぱり新八くんの温もりや、匂いを確かめてるんだと思うんですよ。だから新八くんの首に鼻先を擦り付けたりしてます、そして新八くんはそれに笑いそうになっちゃう。

「くすぐったいですよ。何すんの」
「……テメェがここに居ることを確認したい」

晋助の声は小さくて、少しくぐもってる。いつもの晋助らしくなかった。それに何だかひどく切なげな目をして言われたので、新八くんもドキッとして、

「ず、ズルいですよ。そういう目されたら、僕……」

でも新八くんだって甘やかしたがりですからね!何だか切なげな晋助を放り出していけるはずがないからね!


「もう。いいですよ。僕のこと……高杉さんの好きにして」

だから晋助の頭をそうっと抱いて、新八くんはこう言ったの。

新八くんとしては、今ここで乱暴に身体を求められても抵抗する気はなかった。もう前みたいに文句をつけたりする気はなかった。でも晋助は何もしなかった。
何もせず、ただ新八くんに抱っこされて、抱き返して、延々と新八くんのお胸に顔を埋めてただけだった。


この瞬間からきっと、高新の間では何もなくてもこうやって抱き合って過ごす夜が増える。身体を繋げずとも、ただ抱き合って、互いの体温を分け合う夜が増えていく。互いの何かを埋め合うように。



 それは本当に静かに。でも確実に育まれていく。

 二人の間に芽生えるものとして。





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