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Many Classic Moments 31




*まとめ*





 図らずも色んな思いが交錯した銀さんに襲われかけて、だいぶ怖い目にあった新八くん。それからはと言うと、桂さんの采配で銀さんとの距離は微妙に離されてますね。銀さんとは決して二人っきりにならないように気を使われております。もちろん夜も、もう他のモブ志士の皆さんや銀さんと一緒の雑魚寝部屋にはおりません。



『銀時……新八くんは今日から俺の部屋で寝かせるからな。貴様とは一緒にしておけん』

もっさんから聞き及んだ事の詳細を知り、ため息を吐いた桂さんに申し渡されてる銀さんですよ。

『あ?……別にどうでもいーよ、今は新八の顔も見たくねーし』

銀さんもマジ不貞腐れてるので、そっぽ向きながらこんな事を言ってますね。だけど顔も見たくないとは言いつつ、やっぱり銀さんには新八くんは初恋を捧げた相手。キスまでした仲ですよ。
じっくりじっくりヒナから育ててるうちに、手ずから餌を与えて愛でているうちに、横から急に出てきた黒いケモノさんに突如として掻っ攫われちまったけれども(銀さんの苦悩がほんと計り知れない)

だからね、そっぽを向きつつも。


『その……別にどうでもいいんだけどよ。マジどうでもいいんだけど、俺から離すんなら……高杉からも離しておけよな。新八は』

桂さんにちゃんと言っている。晋助と新八くんを近付けるなと。
それには難しい顔で頷く桂さん。もはや晋助と新八くんの仲はとっくに知っていたようですね、一体いつ頃から気付いたのかはおいおい書きますが。


『ああ。ちゃんと分かっている。高杉からも新八くんは離しておく。安心しろ銀時(真顔)』
『いや安心とかじゃねーし、新八とかマジどうでもいいし。マジで(プイッ)』
『お前が新八くんに心から惚れていることは内緒にしておく、安心しろ銀時(真顔)』
『はああ?!惚れてねーよ!新八なんか知るかよ!何でそうなんだよ、殺すぞヅラ!』
『その新八くんを高杉に盗られた内心は……さぞや悔しかろう。だが安心しろ銀時。まだ挽回の余地はあるぞ(真顔)』(銀さんの肩ポン)
『オイ話聞けやヅラァァァァァァ!!何で俺が当て馬キャラみてーになってんの!?ざっけんな!てめえに励まされる筋合いなんざねーよ、別に新八と高杉の事で俺が傷付いたとかねえしィィィィ!!??(血眼)』

話を聞いてない桂さんに励まされれば励まされるほど、銀さんはブチ切れていく(仕方ない)。銀さんのツンデレが通じない相手No. 1の座を不動のものにしている桂さん。

だけど急に押し黙った桂さんは、ふと遠くを見て思案顔になった。


『高杉もな……この頃は前よりやけにマシになって来たかと嬉しく思っていたが、そういうカラクリだったのだな』
『……は?マシって?どういう事だよ』

思案にくれる桂さんに、顔をひょいと起こして尋ねる銀さん。桂さんは、そんな銀さんに心持ち優しい目を向けて。

『いや何、前まではどこまでも頑なで、融通のきかないとところが多かっただろう。己の剣に賭けているのはいいが、鬼兵隊の面々にさえ戦場では無理を強いる場面も多かった。だが高杉も、最近はちゃんと気を配れるようになってきている。ほんの気持ち分だけだが』
『気持ち分だけなら誤差じゃね?現に俺は全然野郎が変わったとは思わねーし。毛ほども変わってねーだろマジで(鼻ホジ)』
『そうか?誤差とは言え、高杉のような男が自分を変えるのがいかに大変かお前にも分かるだろう。同じく負けず嫌いで無鉄砲で、天邪鬼なお前には』
『まあ……そこだけは分からなくもねーよ(プイッ)』


桂さんはね、やっぱり晋助の変化には薄々気付いてたの。だって他の誰より長い付き合いですもの。
戦場でのその指揮の取り方から何からも、前のように無理を強いるだけじゃなく、ほんの少しだけでも皆の体力や己との剣技の差を慮れるようになってきたと、最近の晋助を見て微笑ましく思ってたのです。

それはきっと新八くんとの付き合いが始まったからなのだろうと、桂さんにも合点がいった。


『そんな奴が少し、ほんの少しだけでも変わったんだぞ?……それはおそらく、新八くんと付き合った影響だろう』

だから諭すように言うんだけど、銀さんは聞いた瞬間に目ん玉を引ん剥いて全否定する。

『っ、はあああァァァァァァ!!??違ェだろヅラ!あいつらが付き合ってるとかねえって!絶対ェありえねえから!ただアレだよ、新八は鬱屈した高杉の性欲の餌食になってるだけっつーかァ?!嫌々に決まってんだろ!だって付き合うって、付き合うっつーのは……そんなん高杉と新八が、あいつらがお互いに好き同士って事に……』

話すうちに、徐々に荒くなっていく銀さんの呼吸。
てっきり新八くんが晋助によって嫌々無体を強いられるだけの一方的な関係とばかり思っていたが、そう決めつけていたが、桂さんはまるで二人が好き合ってる同士のような口振りで語らう。それに銀さんは納得がいかない。


(高杉と……新八が?お互いに好きって?だから高杉が少し変わったってか?新八に影響されて?……ねーよ。ありえねーよ)


そんな事は決して認められない。だから強く否定するんだけど、桂さんは静かに問い掛ける事を止めなかった。


『……何か違うのか、銀時』
『違うっつーの!そんなん認めねーよ俺ァ!てか自分で言っててムカついてきたわ。高杉の野郎……新八は俺のなのに』
『新八くんは新八くんだ。お前のものではない』
『わーってるよ!言葉のあやだよ!あのチビにすっげえムカついてんだよ。新八に手ェ出しやがってクソが。新八に何してくれてんだよ、アイツ信じらんねーよ、ぶっ殺してやりてェェェ……(ガルルルル)』

喋っているうちに、銀さんの怒りの矛先はやはり晋助に向かっている。まだまだ熱く燃え盛る嫉妬の炎を抱いている様子の白夜叉さんに向け、ハアとため息を溢すのは桂さん。

『だから落ち着け銀時。高杉には……俺からも腹を割って話してみる。だからお前は手出し無用だぞ。真剣を持ち出して喧嘩するなんてもってのほかだ』

真剣な顔をした桂さんに言われては、いくら銀さんだとて牙を納めざるを得ない。渋々納得し、頷きかけ、

『……分かったよ。てか俺が今高杉と話したら、絶対ェアイツの事殺すからな。ブチ殺さなきゃ気が済まねえし、ヅラに任せたわ。……一旦だけどよ』

だけど危ない事をまだポツポツ語ってる。
そんな銀さんの肩に、桂さんは宥めるようにしてポンと無言で手を置いた。




そこから数日間は、嵐の前の静けさと言っても過言じゃないほどいつも通りの日常だった。だけどそれは表面上だけの話で、新八くんは銀さんの近くには寄らないし(寄れないし)、銀さんと晋助なんて口も聞いてない。

でも晋助はその明確な理由はまだわかってない。銀さんと新八くんがよそよそしい理由も、銀さんと廊下などですれ違う度に物凄い目で睨まれることも、一切話し掛けられない事も、明確な理由は掴めていなかった。
それもその筈で、晋助だとて何かがおかしいと思い、自分の預かり知らぬところで何かが起こったとは確信し、ひとまずは新八くんに銀さんの事を尋ねようとしても、中々新八くんと話しもできないからだった。


今までは通り過ぎただけの新八くんにだって好きなだけ話し掛けられたし、しまいにはこっそり新八くんを連れ出して、二人きりになったりと余裕でできた。


なのに今は、

『……オイ、待て』


などと新八くんを呼び止めようものなら、近くにいる桂さんやもっさんによって即座に邪魔される。手堅いガードでブロックされる。

『何だ高杉。話なら俺が聞くぞ?さあ来い、相談でも何でもどんと来い』
『何じゃ高杉、話あるならわしの所に来い言うちょるきに。遠慮はいらんぜよ、ほら早よ』

二人の男がこんな風にしょっちゅう絡んでくるものだから、晋助も、

『テメェらに話し掛けてねェんだよ。散れ。うぜえ』

しょっちゅう桂さんともっさんにブチ切れていた(晋助)


なのに全然動じない桂さんに右腕を掴まれ、

『ハッハ、高杉は昔から素直じゃないからな!仕方ないやつだ。やはり貴様には俺が付いていなくてはな(ガシィ)』
『全くじゃなあ。おまんほどの天邪鬼も中々お目にかかれん。どれ、あっちで詳しく語り明かすがか?ん?(ガシィ)』

朗らかに笑うもっさんに左腕を掴まれ、


『オイ、離しやがれ。テメェら何のつもりだ、殺すぞ』

イライラも最高潮になるが二人の男共は全く動じず、ずるずるずる……と晋助を引っ張っていくだけだった。だから数日間は、晋助は銀さんとも新八くんとも話せなかった。

と言うか銀さんは置いておくとしても、新八くんに触れられず、話すらできないのは正直とても嫌だった。新八くんとせめて話したいのに、夜だって今は中々お部屋に訪ねてもきやしない。まるで何かから隠されるようにして、急に新八くんを断たれてしまった。

これに晋助のイライラが募るのは止められない。どうしたって荒くなる言動に、鬼兵隊の部下達が戦々恐々とする気配は感じつつ、まるで以前の姿に戻ったかのように自分の気持ちの昂ぶるままの剣呑とした振る舞いをやめられなかった。

しまいにはその辺のゴミ箱とか蹴ってる晋助(コラ)。無言でガコンッ……とゴミ箱を蹴り上げ、チ、と舌を打ってからツカツカ歩んで行くという。だけどそんな事したって、自分の心に巣くうモヤモヤは解決される訳でもなしに。




そして、晋助が蹴って転がしたゴミ箱を直して歩いているのは部下達(お前らっ)


モブ2『こ、怖えェェェ……今日は朝から凄え機嫌悪いな、総督……目ェ合ったら殺されそうだもんな(せっせとゴミ箱を立てて)』
モブ3『だなあ。どうしたってんだ今日の総督は……今日でもう3個目だぞ、ゴミ箱蹴った数(せっせとゴミを拾って)』
モブ6『いや、今日っつーか最近ずっとこうじゃね?最近の総督は、何か前みてェな雰囲気の時あるよな。スゲーかっけえけど、スゲー怖いっつーかさァ……(同じくゴミを拾って)』
モブ7『なあ?変だよな、今の総督……いや、これ違くて。変っつーのは言葉のアヤだけどさ。総督は怖くてもかっけーけど(あせあせ)』
モブ2『うん……分かってるよ。とにかくゴミ片そうぜ。多分またその辺の壁とか殴ってるよ総督。障子とか絶対ェ破ってるよ総督』(←どんな扱い)
モブ3『うん。大丈夫だよお前、ホラ、そんな事もあるかと思ってさ。俺、今日は障子を貼り直す用の糊持ってきたわ(スチャ)』(←どんな気遣い)
モブ6『え、でも障子紙がなきゃ意味なくね?』
モブ3『あ、ヤベ』
モブ7『ったくてめぇ仕方ねーな!バカな!ちょ、ダッシュで紙買ってくるよ、俺』
モブ2『おう。いってらー』
モブ3『よろしくー』
モブ6『ついでに昼の弁当もなー』
モブ7『ええ?嫌だよそりゃ、俺は総督の為に行くんであって、お前らの使い走りじゃないよ』
モブ6『ちぇっ』
モブ2『アハハ。違ェねーな。俺らには上も下もねーもんな』
モブ3『そうそう。上も下もねえ、家柄も学歴も、元が士族かどうかすら関係ねえ。ここは実力だけが全ての鬼兵隊よ。鬼兵隊ってそういうとこだよ、だって総督がそうって決めたんだ(お目目キラキラ)』
モブ7『だからいいんだよなあ。鬼兵隊はサイコーだよ。ここでいちばん強えのが総督だしな、誰も文句ねーべ(お目目キラキラ)』



──んもっ、ももももも、鬼兵隊のモブ達が仲良しッ!!そして晋助ってば優しい部下達に限りなく気を使われてる!子供のように障子破くと思われてる!とんだ子供扱いをされてる!そしてその扱いに気付いてない、晋助シンパのモブ達!(ガチャーン!)

けども、そんな風にして訳も分からない晋助の気が大いに立ち、部下達に変に気を使わせる日々は数日間で終わりを告げる事となった。




 「──高杉、ちょっといいか?俺の部屋に来てくれ。話がある」

上弦の月の綺麗な夜更け。晋助が一人、城外の石塀に腰掛けて煙管をふかしていた折に、後ろから歩んで来た桂さんからこう声を掛けられた。

「……何だァ?テメェからの誘いとは色気のねェことだ。話ならここで聞く」

後ろを振り返りもせず、未だ煙管を咥えて横柄な口をきく晋助。そんな晋助に桂さんは軽く息を吐き、

「ここは外だぞ。誰に聞かれるかも分からん。……お前と、新八くんの事だ」

桂さんの口から出た『新八くん』のキーワードに、晋助の心臓はドクンと高鳴った。そして、この数日間に起こった数々の出来事を瞬時に反芻した。


 口をきくどころか己と目すら合わさない、史上かつてないほど最悪態度を見せる銀さん。
 話し掛けようとする度に誰かに妨害されて、中々二人きりにもなれない新八くん。
 そして明らかに何かを知っている風情の、妨害工作に忙しいもっさんと桂さん。


何故もっと早く己は気付かなかったのか。戦での敵の動きは誰より早く見抜けるのに、仲間内に起こっていた心情の変化を何故読み取る事ができなかったのか。これらの事象を総合して鑑みるだに、つまりはそういうことだったのだ。

全部。



「(全部……露見したのか。俺と新八の事が)」





ぐちゃぐちゃに入り混じっていたパズルが急速に組み合わされて、最後の一ピースがカチッとはまった音を脳内で聞いた。
その音を聞いた瞬間、晋助はおもむろに煙管の煙を吐いた。ふー、と静かな夜の空気の中に。


「……フン。俺がどう言おうとも、テメェは自分の部屋に俺を連れて行く気だろう。いや、“連行”とでも言うか?白洲の間にでも俺を引き出すつもりか、ヅラァ」

くつくつと皮肉げに喉を鳴らす晋助の背に、じゃり、と玉砂利を踏んで一歩近づき、桂さんは真摯に語る。

「違う、そうではない。俺は貴様の言い分も聞きたいと思っているんだぞ高杉。……銀時の言い分は、もう既に聞いたからな」

桂さんの声は静かな夜の中でよく通った。銀さんのことすら滲ませるその言葉に、なのにどこまでも落ち着いた声音に、いよいよ晋助は煙管の吸い口を噛みしめる事しかできなかった。
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