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砕けるまで抱いて



耳を澄ましても聞こえない貴女の声を、ここに、此処にと、がむしゃらに走った。
掴めないものを掴もうと無い物ねだりもした。
聞こえたのは
月が
星が
砕けていく音と
僕が走る度に響く足音

ああ、嗚呼、
聞こえてますか?
僕が貴女の名前を呼ぶ声
泣きそうになりながら
泣かまいと涙を堪えて
貴女の名前を呼び走り続ける
僕の足音と声は聞こえてますか?


新たな音が聞こえた
貴女がいないと分かっていたのに
走り続けた僕が倒れ
涙が一滴堕ちる音
最期に一目で良いから顔を見たかった、










最期の敵わぬ望み

いつか辿ってきた道を



また繰り返し歩む
歩んで歩んで歩んだら
最終的に死ぬと知っていた
だけど僕は進む
意味も分からず
意図も分からず
手繰り寄せる
たった一本の赤い糸を頼りに
僕は進み続ける


いつか辿ってきた道を
繰り返し
歩み続けた僕は
ついに疲れはて足を止めた
止めたって
また歩むのだと信じて
だけどもう足は動かなかった
もう動けなかった
辛い暗い寒い寂しい
そんな感情達といたくは無いから
思いっきり叫んだ
声にならない声で叫んだ

暗闇を裂くように
白い手が伸びてくる
僕の顔を触りながら
そっと口付けを、







消えた僕らの旅路

「おやすみなさい」




そう呟いて眠りにつけば
悪夢の中
「おはよう」
と呟いて目を開ければ
自分の死骸

嗚呼、死ぬのならば
「愛してる」
そう彼女に呟いて死にたい
泣く俺はひ弱に
か細く呼吸をする
静かに上下に揺らぐ呼吸
うっすらとした
鼓動を繰り返しながら
「愛してる」
と何度も何度も呟いた

呟いた先には、
愛しいあの子が
「  」
と俺の名前を呼んで、








暗転

涙が渇れ果てた虚な瞳に



そっとナイフを這わしてみようか
叫ぶだろうか
渇れ果てた筈の涙がでるだろうか
分からないからこそこの賭けを僕は愛しているんだと思う









泣きながら蜂は言いました
『何で蜂に成れないの』

笑いながらクリオネは言いました
『アナタは立派な女王蜂さ?』

泣きながら蜂は言いました
『何でお前は蜂じゃないの』

笑いながらクリオネは言いました
『私は立派な蜂さ?』

泣きながら蜂は言いました
『愛して、愛させて』

笑いながらクリオネは言いました
『愛してるし、愛されてる』

泣きながら蜂は言いました
『どうかどうか私を殺して』

笑いながらクリオネは言いました
『嗚呼、せめて私の手で死んで』

笑いながら蜂は言いました
『立派な蜂にしてくれてありがとう』

泣きながらクリオネは言いました
『何故、何故、アナタは蜂に生りたかったのでしょうか、何故、女王蜂では駄目だったのでしょうか』

クリオネは最期に叫び声をあげて、高らかに振り上げたナイフをそっと苦しまずに死ねるように女王蜂の心臓へ、突き刺しました。
そして自分の心臓にもナイフを這わせそっと突き刺すのでした。



『嗚呼、出来るのならば次こそはアナタがせめて苦しまない世界へとお連れ、したい』








蜂はクリオネには成れなくて
クリオネは蜂に生れなかった
異端的最愛物語
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