噎せかえる甘い匂い
君が溺れた甘い海には
きっと俺しかいない
この海には俺しか
存在してないと言っても
過言じゃないくらい暗い海に
ポツンと一人
濁ってるとかじゃない
ただ黒い海
そんななか輝く色を持つ
君がいる
俺の名前を呼んで、
壊れるくらい抱き締めて
そう手を伸ばすと
君は寄り添ってくれる
幻想でもかまわない
君の声が聞こえれば
美しく泣く君に
美しく壊れる俺
これ以上壊れ続けたら
君を殺してしまうくらい
愛してしまいそうだ
(殺したら存在意義がなくなるのだけれど)
(それすらかまわないって思わせられる)
(現実に翻弄される俺はこうやって甘い幻想に逃げ込む)
そう笑ったぺてん師は泣いていた。
叩いた
自分の頬を思いっきり
つねった
自分の腕を思いっきり
痛い
でもこれは 僕が見てるのは
これは確実に夢だ
最近の夢はリアルだなあ
なんて惚けてみる
だって 考えるのは めんどくさい
羽の広がる 音
水が波紋を 作る瞬間
手から水が 落ちる時間
口から水が 溢れる奇景
目から涙が 落ちる光景
涙から泡に 変わる絶望
産まれるのを 拒む小さな手
それを見て 泣く目
これらを 泣きながら 描く手
「Am dream」
それに見入る ぼくは
確実に 的確に 正直に
消えたがっていた
そんなぼくは 怖くて
逃げた 走った 振り返った
立っていたのは ただの木で
幼い木 産まれるのを拒む
小さな手に そっくりで
産まれてきたことを
後悔させるようにも見えた
でも ちがう これは
「たすけて」だと
ぼくは小さな木に触れた
と同時に 聴こえるざわめき
小さな声 聴こえ続ける
「あいして」
親を求める子供は
時に 残酷に傷付く性だと
気付けないでいる
その傷は 化膿して
時に 膿がじくじくと 汚く垂れる
そのまま傷を抱えて歩くと
間違える
ああ、間違えた。
ぼくは僕に追い付かれた
ああ 間違えた
こんなはずじゃなかったのに
嫌いたくない 人を
そう拒む小さなぼくを
僕は踏みにじってみせた
(もう手遅れ)(悪いのは子供の権利を失ったお前と親の権利を失ったお前)(両者弱いからいけなかった)
そして溺れろ
「何か落としましたよ」
「何が落ちたというの」
「何かを落としましたよ」
「何処で落としたというの」
「心というものを落としましたよ、大丈夫ですか?」
「落ちてないよ、現に僕には感情があるだろう?」
「いいえ、無いですよ、だって
辛いのに
苦しいのに
悲しいのに
叫びたいのに
泣きたいのに
死にたいのに
貴方はそれを忘れてしまってる。何処で落としたの?」
「何を言ってるか分からないな、だって
楽しいのに
嬉しいのに
愉快なのに
笑いたいのに
喜びたいのに
生きたいのに
僕はしっかり覚えてるよ、君は何処を見てるんだい?」
ぽろ
ぽろ
「…!」
「…!」
「泣いた」
「泣けた」
「忘れていたのに」
「忘れていたかったのに」
「良かった」
「最悪だ」
「愛してる」
「愛さないで」
本心は愛してなのに、どうしてもどうにかしても心を何時も置いてきてしまう僕。
何時も寄り添うのは君で。とても、とても憎たらしく愛しかった。