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マジすか長編第7話

おたべside

息がどんだけ乱れても、足がどんだけしびれようと構わず走り続けた

白露は泉水工業廃倉庫に監禁されてるみたいで、あたしのうちの近くやから迷う事はなかった

あたしはさっきからずっと一人で走ってる

当たり前やけど、寒露もついていくって言って聞かんかった。

でも、これは絶対やくざ絡みがあるはずやから寒露まで危険な目に合わせれやん

「部室の留守番」を口実に寒露には学校に残ってもらった

荒狂う息をしずめ、錆びれた鉄の扉に手をふれる

この中に白露が・・・

冷たくどんよりとした重さの鉄扉

最悪の事態が頭を過ぎる、その思いを必死にかき消し扉をゆっくり右側にひいた

耳をつんざくような金切音が倉庫中に響き渡った

「白露!!」

そう叫んでみても、誰もおらへんし物音のひとつもあらへん

ここの倉庫であってるでな?イタズラ・・・?

更に奥に進もうとした瞬間。

倉庫の2回部の方から聞きなれたやさしくおしとやかな声が聞こえた

いや、今はおしとやかになんか出来やん

カツンカツンっと足音を鳴らし、鉄の階段を急いで走り登っていく

「白露!?!」

「お、おたべさん!」

白露に手をさし伸ばそうとした、目先

やくざの下っ端の奴が血相を変えて走ってきた

手には鈍く光るナイフがにぎられてる

「お、お前が悪いんだ!!俺達の、俺達のメンツを!!うぁあぁあぁあぁあぁ!!!」

危ない・・・!!

白露にナイフが突き刺さる一歩手前、力強く白露を押し倒した

カランッ・・・

軽はずみは音がなり、血に染まったナイフが冷たいアスファルトの上を落ちていく

え?!白露は?!?

白露の方に目を向けると驚いたように目を見開いてた

「お、俺は悪くねぇ!!こいつが!!勝手に!!」

半分転がるようにして去っていった男。

よかった、白露が無事で・・・

でも、ちょっとあたしが無事じゃないっぽい

焼き付くように熱が傷口に集中している

とめどめなく流れ落ちていくあたしの真っ赤な血はあたしの周りに色鮮やかな湖をだした

「おたべさん!!!!」

そんな白露の言葉を最後に

固く目を閉ざした

だから嫌

ソルトside

部室にドアをあけた瞬間肩に軽い衝撃があった

「あ、すみません・・・」

そう呟いて足早に部室をでて行ったヨガ

なんだよ・・・素っ気ない

「おはよ」

っと部室の中も黒いオーラ

珍しくおたべが苛立ったように顔を歪めていた

「どうした?」

「ッチ・・・なんもあらへんよ」

私にまで強くあたるなよ・・・、おたべの頬をぎゅっと挟むように握ればハッと顔が上がりほわっと笑う

「ごめんごめん、ソルトに塩対応はあかんわな」

そう苦笑いで言ってきたから1度どけ軽くうなずいた

「ヨガは・・・?」

そう聞けばまたまた顔が曇る

「知らん、あんな奴ラッパっパに入らんわ」

次は力を込めて頬を両手で挟み込んだ

「そんな事言うな・・・あいつも仲間だろ」

ウーン・・・って渋そうな顔してたけどこっくりうなずいた

「でも、ソルト?気付けときなよ、ヨガはソルトが思ってるような奴とちゃうで」

────

「おたべと・・・何かあったのか?」

裏庭のベンチに座っていた、ヨガにカフェオレを手渡した

今の季節、外は風が肌を突き付けなんならいたくない、でもヨガの話し相手くらいにはなってやらないと

あいつはいつも私の事を守ってくれようとするから

「ソルトさん・・・、ありがとうございます」

その先から会話が続かなくて、長い沈黙が流れた

「私でよければ・・・話聞くぞ」

そう言ってまだ暖かいアルミの缶をヨガの頬に押し付けた

「おたべと・・・喧嘩しちゃって、私が悪いんですけど」

そう言って軽く微笑んだヨガ

「なんで?あいつが怒るってよっぽどだぞ・・・」

「そりゃ、ソルトさんに凄い過保護じゃないですか」

ん?私か・・・?

確かに私が関わってるって事も有りえるな・・・

「何言ったんだ?」

「ソルトさんの事襲う、って言ったら怒鳴られました」

「そりゃ怒鳴るだ・・、・え・・・」

ポカーンとヨガの目を見つめた

「ソルトさんが1人の時、ソルトさんの唇奪うって言ったら殴られたんですよ」

そう言ってさりげなく頬のあざを見せつけてきた

「へ?え、どういう意味・・・」

「ソルトさんそこまで馬鹿でしたっけ・・・だからこういう事する、って言ったんですよ」

ぐっとヨガの顔が近付いてきて抵抗する間もなく、唇が重なり合った

カアァァって顔が真っ赤になってヨガを肩から突き放した

いくら裏庭と言え人がいない事もない。

「どうせ初めてじゃないんですよね?」

「それは・・・」

図星だから何も言えない、確かに・・・初めては京都出身の誰かさんに奪われてる

「私は初めてだったんです、ソルトさんでよかった」

にこって微笑んだヨガ

「あんたなぁ・・・」

そりゃおたべもあんな顔になるわけだ

胸ぐら掴んで立ち上がらせた

「私は部長だぞ・・・勝手な事をするな」

「ソルトさんが部長だから、好きになっちゃいけないんですか??なら私はラッパっパを退部します」

ヨガの目は真剣そのもので嘘を言ってるようには見えなかった

「なら・・・これで終わりにしろ」

その瞬間裏庭辺りにいた生徒たちが悲鳴とも感嘆とも言える声をあげた

「っな!?ソルトさん?!?!」

「辞められても困る、これ以上勝手な事をされても困る・・・」

なにしたのかは・・・

ご想像にお任せする

喧嘩2

ぱるるside

まだ足がちゃんと完治してないから

ちょっと走っただけでズキズキ痛み出した

情けなくなっちゃって、はは・・・って軽く笑う

けど笑ってもやっぱりどうこうならなくて、
すぐに涙が溜まってきた

ここで泣いちゃダメだよね、まだ由依に謝ってないんだから

泣きたいのは真子のはずだもん

レッスン場がある建物を出た瞬間聞きなれた関西弁と優しい色の声が聞こえた

でも今は・・・もう聞きたくない

喋りたくない、お願いだからそっとして?

「ちょっと待って!」

「ッ!」

握られた手を振り払って軽く駆け出した

足の痛みもじんじんと痺れてきて、だんだん感覚がなくなってくる

「無理すんな!!」

肩をぐっと掴まれて由依の方に体を向けさせられた

(無理なんかしてない)

「・・・なんか・・・」

自分でもびっくりするぐらい声が出てない

これは由依も苛立つよね

「はぁ・・・、なぁぱるる」

嫌だ、もう聞きたくないよ

私が悪いのはしってるし、謝らなきゃいけないのも

でもいざとなったら声が出なくて・・・

「ぱるるが皆に謝らなあかんのは知ってるでな」

「お願い・・・」

今度はちゃんと言葉が出て由依も口を閉ざした

「お願い・・・だから、嫌いにならないで・・・」

これが一番伝えたかった言葉

私のへんな嫉妬で由依の事も真子の事も、スタッフさんもメンバーも困らせて

おまけに由依に恥かかせて皆の前で真子のこと怒鳴っちゃって

私なにしてるんだろ・・・

そう思った瞬間、視界が一気に傾いて気付けば足から崩れ落ちてた

ここはまだ外だから街を歩く人皆がジロジロ見てる

「大丈夫?!」

チラって足に目を向けると、今まで見た事ないくらい腫れちゃってた

あーあ、馬鹿だよね、本当に馬鹿。

また由依に迷惑掛けちゃってる

「大丈夫??立てる??」

由依が差し出してくれた手に目もくれずよろよろしながら立ち上がった

けどすぐに倒れちゃって由依の手が支えてくれる

「ごめん・・・」

「そんなことより、病院行こ」

私に肩を貸したまま一番近い病院は〜なんて調べてくれてる

「私はひとりで平気だから・・・もうすぐレッスン始まっちゃうよ」

「ひとりに出来るわけないやん・・・よし、ちょっと歩ける?」

幸運にも一番近くにあった病院は私がずっと通っている病院だった

────

「島崎さん・・・あれほど足に負担かけたら駄目だって言いましたよね?」

「すみません・・・」

私の想像以上に足は悪化してて、当分は歩けないだって

待合室の前で座ってる間由依はずっと喋らなくて、やっぱり怒ってるかな?嫌われちゃったかな?

って、思って泣きそうになった。

「島崎遥香さーん」

って大声で呼ばれて由依が診断書と薬を持ってきてくれた

タクシーに乗ってる間も由依の家についてからもずっと無言

本当に泣きそうになっちゃってまたうつむいて縮こまった

「なぁぱるる・・・」

レッスン場での出来事がフラッシュバックして体が震えてくるのが分かった

何やってるんだろ・・・本当に

「あたしがぱるるの事嫌いになるわけないやん、ずっと、大好きやで」

はっとなって顔を上げるとにこって笑った由依の顔

「でも後輩に怒鳴るんはあかん、真子だけじゃない」

そっからはあんまり記憶が、なくて・・・

でもずっと由依の胸にしがみついて泣きながら言いたい事全部言って謝ってたのは覚えてる

何言ったとかは覚えてないけど由依の顔があれ以降ニヤニヤしてるから・・・

きっと変な事言っちゃったんだと思う

由依が寝る前にくれた一言

「大好き」
たった一言だったけど私には充分すぎるほど暖かかった。

喧嘩

ゆいside

ほんまムカつく・・・

なんなよ!!自分の事ばっかり!

事の始まりはぱるるのある一言から

1時間前

『なんでいつも真子のとこ行っちゃうの?』

控え室に入ってきた瞬間、皆おるのにそんなこと言い出した

『なんで、って喋りたいから』

いつもと違うぱるるの様子にはみんなも静かになってしーんとその場の空気にかたずんでる

『私とは喋ってくれないの?』

『ちゃんと喋ってるやん』

『真子ばっかりって話してるの』

その雰囲気には真子の顔も曇ってくる

『あの、ぱるるさん・・・?横山さんはただ』

『真子は黙ってて!!うるさい!!』

こんな感じで真子にキツく当たったから・・・

どっかの線に火が付いた

『真子に怒鳴ることないやろ!!これはあたしとぱるるの問題や!!真子になんで当たるん?!』

これが初めてぱるるに怒鳴った瞬間

『・・・ッ』

初めて怒鳴られたぱるるもどうしていいんか分からんっぽくて、戸惑ってる様子

『やっぱりそうじゃん・・・。ごめんね・・・』

そうとだけ、言い残して控え室から飛び出した

多分『ごめんね』は真子に言った言葉

でもあたしは真子に怒鳴ったから怒ったとかじゃなくて、後輩に当たったから怒ってんねん



もう収録間近やってのにぱるるはまだ控え室に来やん

それどころかスタッフさんらも居ないぞ居ないぞの大騒ぎ

ほんっま迷惑ばっかりかけて!!

「ぱるるー!!」

「ぱるるさーん!」

「島崎さん!!」

って皆でのぱるる探し

いくら探しても、おらんくて多分もうこの局におらんやろ、って事になった。

スタッフさんらが電話かけてもLINEやっても全部無視

LINEなんか既読スルーやからな!

「仕方ない・・・島崎さんの席はつめてくれる?」

こうして半強制的にぱるるは最初からおらんことになった

真子もずっと、自分のせいやって責めてるし皆も止められなかった自分たちのせいってなげんでる

「ほんまに・・・アホが・・・」

まだ思いを溜め込んだままの皆全員の顔は暗く重かった

────

次の日レッスン場に行くと部屋の端っこで三角座りになって縮こまってるぱるるの姿

はぁって軽くため息ついてぱるるの元に向かったら真子がその前に立ち塞がった

「今は・・・そっとしときましょうよ」

「ええから真子はレッスンしてきなあ」

肩を軽く押して道を開ける

「ぱるる、なんで昨日おらんくなったん」

うんともすんとも言わへんってのはこういう事

「ぱるる聞いてる」

ちょっと強めに言えばかすかに聞こえる泣き声

「泣いてもしゃあないやろ!」

苛立ってきて思わず怒鳴ってもた

びくって震えて更にちっさくなる

「どんだけ迷惑かけたと思ってるん、スタッフさんもメンバーも必死になって探してたんやで!!」

「・・・・・・ちゃって・・・」

声がちっさすぎて何言ってるんか全く分からへん

「もっとはっきり物言えや!!」

「横山さん!!」

真子の言葉にはっとした

ちょっとキツくなりすぎたかな・・・

「私は・・・・・・・・・んね」

そう言って小走りにレッスン場を出ていった

「またか・・・」

はぁって今度は深いため息

「横山さん・・・、ちょっと考えて見て下さいよ、ぱるるさん今レッスン出来ないんですよ?」

「それがどう・・・え?」

確かに言われてみればぱるるはほんまはレッスンなんか受けやんでいい、って言うより受けたらあかん

足の火傷も喘息も・・・体の調子が悪いからドクターストップが掛かってるはず

「じゃあなんで・・・?」

「私も来るの遅かったから分からないんですけど・・・、ぱるるさんかなり前からここに来てたらしいです」

真子の言う分にはぱるるは早朝にレッスン場に来てて、スタッフさん、メンバー、昨日お世話かけた人全員に頭下げてたそう

それであたしが来た時ちょうど休憩してて座ってたとか?

なんも考えやんと・・・

ぱるるの後をおって走り出した






嫉妬はするよ(番外編)

ゆいside

軽くリズムよくさすって上げればすぐに安らかな寝息を立て始めた

ぎゅって抱き締めたら抱き締め返してくれたような気がして思わず口角が上がった。

あの後ぱるるもこっち向いてあたしの背中に手を回してた

丁度顔と顔が向かい合ってるからぱるるの顔がよく見える、変な意味じゃないで?

つんつんしてるけどやっぱり甘えん坊で・・・そんなぱるるが可愛いくて仕方ない

なんか変に明るいなって思ってたら・・・まだスタンドの電気切ってへんやん

ぱるるの頬を軽く撫でてベッドかる出ようとしたんやけど・・・

出れやん

ぱるるの腕が想像以上にぎゅって引っ付いてて離れやん

その行為は迷惑とかじゃなくて、こんなに強く抱き締めるまで寂しかったんやな、って感じる

「ゆ・・・い?」

うっすらと瞳を開けたぱるる

「ごめん、起こした?」

「どこ行くの・・・?」

その言葉のあとには更に背中に巻き付く力が強くなる

「どこにも行かへんよ、ただ電気消すだけ」

そう言ったら苦そうな顔しながらも手を離してくれた

電気を消したら一気に暗くなる、手探りでベッドに入った

「よかった・・・」

「そんな大袈裟な、ただ電気消しただけやん」

「ここまで思わせるぐらいにしたの誰?・・・」

うっ・・・それを言われると・・・

でもこの言葉は、暗闇でも分かるほどの微笑み付き

「もうどこにも行かへんよ」

「ほんと・・・?」

「絶対」

その瞬間ぎゅーって力強くまた抱き締めてくる

「信じるよ・・・?」

「うん」

次からはぱるるの返答はなくて、代わりにまた寝息が聞こえてくる

「ごめんな・・・ぱるる」

────
「ん・・・おはよ・・・」

やっと起きてくれたぱるるさん、今11時やで・・・?

8時頃起きたあたしはずっと動けやんままこの状態

まぁぱるるの可愛い顔が見放題やったからええねんけどね

「おはよう、朝ご、昼ご飯ちょっと待ってな?」

ベッドから出ようとしたけどまだ抱きついたまんま

「私いらない、だからここに居て・・・」

「え、でも・・・ウッ」

上目遣いで見つめてくるから・・・

「分かった」

にこって笑ってまた強く抱き締めた。
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