ぱるるside
まだ足がちゃんと完治してないから
ちょっと走っただけでズキズキ痛み出した
情けなくなっちゃって、はは・・・って軽く笑う
けど笑ってもやっぱりどうこうならなくて、
すぐに涙が溜まってきた
ここで泣いちゃダメだよね、まだ由依に謝ってないんだから
泣きたいのは真子のはずだもん
レッスン場がある建物を出た瞬間聞きなれた関西弁と優しい色の声が聞こえた
でも今は・・・もう聞きたくない
喋りたくない、お願いだからそっとして?
「ちょっと待って!」
「ッ!」
握られた手を振り払って軽く駆け出した
足の痛みもじんじんと痺れてきて、だんだん感覚がなくなってくる
「無理すんな!!」
肩をぐっと掴まれて由依の方に体を向けさせられた
(無理なんかしてない)
「・・・なんか・・・」
自分でもびっくりするぐらい声が出てない
これは由依も苛立つよね
「はぁ・・・、なぁぱるる」
嫌だ、もう聞きたくないよ
私が悪いのはしってるし、謝らなきゃいけないのも
でもいざとなったら声が出なくて・・・
「ぱるるが皆に謝らなあかんのは知ってるでな」
「お願い・・・」
今度はちゃんと言葉が出て由依も口を閉ざした
「お願い・・・だから、嫌いにならないで・・・」
これが一番伝えたかった言葉
私のへんな嫉妬で由依の事も真子の事も、スタッフさんもメンバーも困らせて
おまけに由依に恥かかせて皆の前で真子のこと怒鳴っちゃって
私なにしてるんだろ・・・
そう思った瞬間、視界が一気に傾いて気付けば足から崩れ落ちてた
ここはまだ外だから街を歩く人皆がジロジロ見てる
「大丈夫?!」
チラって足に目を向けると、今まで見た事ないくらい腫れちゃってた
あーあ、馬鹿だよね、本当に馬鹿。
また由依に迷惑掛けちゃってる
「大丈夫??立てる??」
由依が差し出してくれた手に目もくれずよろよろしながら立ち上がった
けどすぐに倒れちゃって由依の手が支えてくれる
「ごめん・・・」
「そんなことより、病院行こ」
私に肩を貸したまま一番近い病院は〜なんて調べてくれてる
「私はひとりで平気だから・・・もうすぐレッスン始まっちゃうよ」
「ひとりに出来るわけないやん・・・よし、ちょっと歩ける?」
幸運にも一番近くにあった病院は私がずっと通っている病院だった
────
「島崎さん・・・あれほど足に負担かけたら駄目だって言いましたよね?」
「すみません・・・」
私の想像以上に足は悪化してて、当分は歩けないだって
待合室の前で座ってる間由依はずっと喋らなくて、やっぱり怒ってるかな?嫌われちゃったかな?
って、思って泣きそうになった。
「島崎遥香さーん」
って大声で呼ばれて由依が診断書と薬を持ってきてくれた
タクシーに乗ってる間も由依の家についてからもずっと無言
本当に泣きそうになっちゃってまたうつむいて縮こまった
「なぁぱるる・・・」
レッスン場での出来事がフラッシュバックして体が震えてくるのが分かった
何やってるんだろ・・・本当に
「あたしがぱるるの事嫌いになるわけないやん、ずっと、大好きやで」
はっとなって顔を上げるとにこって笑った由依の顔
「でも後輩に怒鳴るんはあかん、真子だけじゃない」
そっからはあんまり記憶が、なくて・・・
でもずっと由依の胸にしがみついて泣きながら言いたい事全部言って謝ってたのは覚えてる
何言ったとかは覚えてないけど由依の顔があれ以降ニヤニヤしてるから・・・
きっと変な事言っちゃったんだと思う
由依が寝る前にくれた一言
「大好き」
たった一言だったけど私には充分すぎるほど暖かかった。