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おでこ検温

ソルトside

ズキズキと響くように鈍い痛みが頭を走る

それでも、そんな事口には出来なくてずっと曖昧な意識に耐えていた

「ソルト、あのさ」

おたべの言葉を遮るように部長椅子から立ち上がった

「ソルトさん?」

バカモノの青色の声も耳にうっすらと入った

でもごめん・・・今は返答してる余裕がないんだ

気付かれる前にひとりに・・・

そう思って1歩踏み出したら面白いぐらい足に力が入らなくて弱々しく座り込んだ

「ソルト!?」
「ソルトさん!!」

「はは・・・大丈夫・・・」

近くの物に手を置いてやっと、立ち上がった

「眠いだけだ・・・大丈夫」

そう言って部長室に入りゆっくりとドアを閉めた

その瞬間ぐらりとまた視界が回って冷たいコンクリートに口付けするはめになった。

固く冷たいコンクリートは、私の意識をどろどろに溶かし深く沈めて言った

────

何分そうしていただろうか??いや、何時間かもしれない

意識を戻した時にはもう窓から差し込む光は茜色で、時の流れを寂しく見せた

「いっ・・!」

こんな冷たい場所でザコ寝していたせいか、さっきより頭痛が酷くなった気がする

「駄目だな・・こんな私・・・」

早く起き上がらなきゃいけないのに・・・

分かってるのに体が言う事を聞かない

「入るで??」

そう聞こえた時はもう遅くて、目を見開いたおたべと目があった

「ソルト!?」

おたべになら・・・甘えて・・・いいかな?

「ごめん・・・立てなくなって・・・」

「大丈夫??」

優しく起き上がらせてくれて、近くのソファーに寝かしてくれる

「なんで、こうなってんか言ってくれる?」

「それは・・・」

なんて言えばいいんだ・・・??

朝から体調が悪かった?
ただ、眠いだけ?
風邪っぽい

何をどう説明すればいいんだよ・・・

「っん・・・」

おたべの額がそっと私の額に触れた

私の額が熱いのか・・・おたべの額が冷たいのか・・・
酷く、ひんやりと感じた

「あーあ・・・絶対熱あるやん」

そう言っておもむろにスカジャンを脱ぎ出した

「へ?!おたべ?」

「寒ない・・・?」

そう言ってお腹あたりにスカジャンを掛けてくれた

その時のおたべの顔は『なに期待してんの』っとでも言いたげで頬が熱く火照ってくるのが分かった

「今日は安静にしときや?ずっとそばに居てるからなー?」

風邪は嫌だけど・・・

甘えられるんなら・・・

悪くないかな??

そっからは、家に帰ってからもずっとベッドの淵に座ってもらったり添い寝してもらったりして、思う存分甘えた

イヤーな悪夢は怖かったけど・・・

ぎゅっと繋がれたおたべと私の手と手

不思議なくらい、勇気を与えてくれる秘密の魔法だった。




マジすか長編第10.5話

??side

「っざけんな・・・」

「す、すいません!!!」

「なんであそこまで重体にさせた!!動けなくなる程度だって言っただろうが!!」

「だ、だからあいつが!!」

この男の名前は薮本。

そう、おたべを刺した犯人。裏で操ってたのは紛れもなくあたしだが

「意識不明の重体にさせてどうすんだよ」

「き、急に動いたから!!刺しどころがずれて!!」

「それでも、ヤクザか??」

薮本は警察のお手元だけど、面会ぐらいは出来るから。

「本当に、急に動いたから・・・」

おたべを刺すことは前から裏で組み込まれていたもの。

本当は白露を刺すと見せかけて傍にいる、おたべを刺すという計画中だったんだが、予想外にもおたべが白露を守るため動いたから深く刺しちゃったんだとか?

全く、面倒な事をしでかしやがった

「まぁいい・・・結果動けないボロ雑巾なんだしな。」

「・・・」

あたしは・・・変わるんだよ・・・

もうメソメソ泣いてた昔の自分じゃない。

変わるんだ

例え誰を犠牲にしようと。

おたそるさく3

おたべside

翌日、ムスッとした顔で屋上のベンチに座ってたら、困ったような微笑みでソルトが歩いてきた

それで何も言わんと隣に腰掛けてくる

ただまっすぐ前を見つめて口を閉ざしたまんま。

「ソルト・・・?」

耐え切れやんくなってあたしから喋りかけた

「ん?」

「怒ってる・・・??」

昨日あんな強引なことしてもたんやもん、そりゃ嫌になったわな

「怒ってなんかない・・・びっくりしたけどそれほど私の事大事に見てくれてるって、嬉しかった・・・」

ちゃんと目を見て言って笑った

「ごめんな?昨日・・・怖かったわな・・・?」

「大丈夫、おたべが強引に手出すとか思ってない・・・。続きしても良かったぐらいだ・・・」

冗談なんやろうけど、そんな冗談やめてよ・・・

期待してまうやん??

「そんなマイナス思考に考えんな・・・私はおたべが大好きだから。さくらはライバルとして好き。でも大切な人はおたべだけ・・・

何しても大抵なら許すよ。」

心配さしといて最後はこれやん!!

アメとムチの使い方、分かりすぎや!!!

「あたしも・・・大好き。」

首に手を回してぎゅっと抱きしめた。

ソルトの匂いも、声も、性格も、顔も体型も

全部全部あたしだけのもんで居ててや?

────

るんるん気分で帰る途中、ばったりさくらと居合わせた

でもソルトはあたしのこと好きやもん

そう思って通り越そうとしたら、さくらが引き止めた

「ソルトのことどう思ってる」

「愛してる。」

負けやん、さくらには。

「勝てないのか?あんたには・・・。」

え??

いつになく弱気になった

「分からへんな・・・いつソルトがあたしのこと嫌いになるか分からへんし・・・。いつさくらに目行くかも分からへん。全部ソルトが決めること」

あたしは絶対嫌いにならへんよ

あたしだけのソルトやもん・・・

あたしの遥香やから。

おたそるさく2

ソルトside

なんでいきなり・・・??

ごめん、って呟いて部室を出ていってしまった

確かにさくらの事は好きだ。でもおたべに対する好きとはまた違う。

おたべのことは愛してる。さくらのことは好き

これを伝えなきゃならないんだろうけど、どうしても伝えられない。

おたべに言っといて・・私も素直じゃないじゃん

「ソルト??」

ぼーっと校舎内を歩いてたらさくらとばっちり顔を合わせた

「なんだ?」

「別に・・・」

そうか、っと微笑んでさくらの横を通り過ぎようとした瞬間

視界が、ぐっと歪んで背中に軽い衝撃があった

なんだ、もうヤるのか??さくら。

「ソルト、あんたはおたべのことどう思ってる?」

予想外の出来事に目をぱちくりさせた。おたべが私にしたような事、さくらがして、言ったから

なんでおたべみたいな事・・・

「おたべのこと、好きだよ・・・」

「そうか・・・なら私のものになれって言ってもなれない?」

「は・・・??」

なに言ってんだ??

冗談?でも冗談言ってる顔には見えない

どうする??今ここの返信は何が正解なんだ??

OKする?でも私はおたべが好きだ

「え・・・ごめん・・・ちょっと分かんにくくて」

「だから・・・私はあんたが好きだ。でも隣にはおたべがいる。」

浮気しろ??無理だ・・・

おたべに隠し事とか、絶対心が持たない

「ごめん・・・やっぱりおたべが好き」

しばらく無言状態が続いた後唇になにかが触れた

「んっ?!?」

キスされたのかと思って心臓がある意味ドキッとしたけど、キスじゃない

さくらの人差指が唇に当てられていた

「このことは、誰にも言うな・・・必ず奪う、おたべから」

さくらが何をしでかすのか分からない

でもこの時の胸騒ぎは本物だった
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