ソルトside
見渡せばもう立っているものは居なかった
私はまだ1度も拳を握っていない
ヤクザ相手にこいつらもよくやるよ・・・
でも、まだ終わってねえんだ。あいつを探す
そして・・・叩き潰す
「ソルトさんどうします?」
「あんたらに・・・最後の頼みだ・・・。
絶対に、この先誰も通すな」
私が指さした先には、黒く鋼のような鉄の扉が待ち構えていた
「お供しますよ」
ヨガの言葉には、悪いけど賛成出来ない。
「駄目だ・・・あんたらはここを固めて置いてくれ」
「どうしてです?あたしらふたりでも充分すぎますよ?」
マジックが小馬鹿にしたように鼻で笑った
「別に危険だからとかじゃない・・・、ただここからは・・・私が戦う」
私の【戦う】は具体的に血をぶちまける訳じゃない
「お願いだ・・・誰も入ってくるな」
返答を聞かず扉を開けた
金切り声のような鉄の悲鳴が響き渡り思わず耳を塞いでいたくなる
いやこんなので塞いでどうすんだ
これから目も耳もふさぎたくなる出来事に直線するってのに
完全に扉が閉まったのを確認してゆっくりと歩き始めた
ずっと真っ直ぐな道をひたすら歩き続け、地下に続く階段を一歩一歩足を踏みしめながら進んだ
久しぶりだ
ここの空間、この雰囲気、そしてこの黒い椅子の向こうにいる人
「久しぶりだな遥香」
「気安く名前を呼ぶな・・・」
こいつの事は死んでも許さない
っと今日はこんなことをしにきたんじゃない
「あんたに聞きたい事があってな・・・」
「なんだ?由依のことか??刺したのは誰か?真犯人を探りたいのか??」
聞きたいことを全ていっきにまくし立てられ目が丸くなった
「由依の名を口に出すな・・・刻み殺すぞ」
深くドスのきいた声で言えば1度かるく肩をすくめて見せた
「真犯人は誰だ?あいつじゃないだろう?」
「さぁ?」
ばしっと肉を打つ痛たましい肉音が響く
「ふざけんな、こっちは大事な花ぐちゃぐちゃに乱されてんだ。あんたらの茶番劇に振り回されてる余裕はない・・」
「茶番劇ねぇ?真犯人は遥香のそばにいる。
もっとヒントをあげようか??俺の兄妹だ」
その言葉にはただ目を見開き硬直状態が続いた
どうして??
まさか本当に??
いつも笑ってたあいつが??
いつも私とおたべの中で笑ってたあいつが??
なぜ?どうして?!
おたべを刺したりなんかしたんだ??
「どうした?」
「兄がこうなら妹もそうなるか・・・?」
「ほんと、とんだ皮肉だ。」
ふざけるな・・・くそがき・・・
あんたは・・・あんたが。
「これ以上なにを求めている?」
「は?」
「これ以上私と由依から何を奪いたいんだ?!?!」
この大声が外にも漏れてたらしくがたんっと大きな音が外の方でした
きっと誰かが動いて誰かが押さえ付けた音
「おい、ジジイ」
「ジジイねぇ・・・、あんなに可愛いかった遥香がどう」
「絶対ぶっ殺す、お前もあいつもだ」
くくっと笑った、こいつはさおも可笑しそうに腹を抱えて笑い出した
「何が可笑しい」
「遥香は何も変わってないなぁ・・・、仲間思いなところも、お人好しなところも、キレやすいってところも・・・。危険感を抱かないってところも」
ぐらりと視界が揺ら気付けばこいつの下にいた
冷たいコンクリートの上に押さえ付けられて、こいつが腰辺りに座ってる
「確か、前の時もそうだっけか??遥香は由依を助ける為に俺のところへ来た。でも結果ヤラれて帰った」
「・・・っ」
あの日の出来事が清明に頭に映る
嫌だ
もうあんな思いは二度としたくない
声もろくに出ないまま体の震えだけが大きくなっていく
こいつの手がシャツのボタンをひとつひとつ時間をかけて開けていく
動かぬ体を前にただこいつの言いなりになってしまうのか?
あの日のように