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長編「大切な人」3

ソルトside

『ソルトまだかー?』集合場所に来なかったらおたべは私の家まで迎えに来てくれてたっけ?

『はい、ココア〜』寒い日は集合場所の公園で買ったココアをほってきてあわあわしながら受け取ってた。

『ごめん!遅れたー』いくらこの公園で待っても来てくれない・・・。こんな言葉、背後から聞こえたら私は・・・。

『ソルトほってくなよー』息を乱し後ろから走ってきてくれないだろうか?

『ソルト今日は休む、明日なー』そう書いたメールが届かないか?何時間経っていい

こんな日常がもう1度来てくるなら私はなんだってする

おたべの笑顔がもう1度見れるなら

バカモノ達のうるさい喋り声が聞けるなら

おたべの心地いい「隣」で居てられるなら・・・

私は・・・。

おたべが居なくなって初めて知った。私にとっておたべがどれくらい大切な存在だったのか

皆がどれくらいおたべを必要としているのか

怒らないから・・・、また私の隣で笑ってよ?
私に背中をあずけてよ

私はおたべが居ないと駄目なんだ。

私にはおたべしか居ない、お願いだから戻ってきてよ・・・。

長編「大切な人」2

ソルトside

真っ赤な清血と、弱々しく微笑んだおたべの姿がそこにはあった

「ソルト・・・よかった・・・」

「おたべ?」

口から血を流し、固く目を瞑ってしまった

「由依・・・由依!!由依!!!」

まるで気の狂った廃人のように声を掛け続け揺さぶる手を止めない

いや止めれない

今ここで、動きを止めたらおたべも死んじゃいそうで


例えようのない恐怖が身を走り、手が真っ赤に染まっていく様に自然と頬が不自然につりあがってくる

「起きろよ・・・嘘だって言えよ・・・」

────

駆け付けてきたバカモノたちの額にはうっすら汗が滲んでいた

「おたべは?!?」

「・・・っ」

私のせいだ・・・

私がしっかりしていなかったから。もっとちゃんと気を張っていたら・・・

おたべは・・・

「なんとか言って下さいよ・・・。ソルトさん!!」

肩を掴まれ荒々しく揺さぶられる

そんな、取り乱してるバカモノになんの言葉もかけてやれない。元気を与えられない自分が情けなかった

自分のせいで後輩が涙を流してる

親友が傷ついてる

私は・・・何もしてやれない。

ただひたすら手術室のランプを睨み、時には医者に殴りかかり・・・

そんなになってんのに・・・。私は・・・

その現実に目を伏せたくなり、目をおおいたくなった

長編「大切な人」1

ソルトside

なぁソルト?一緒に帰ろ、そう言って手を握ってきた。

「ん?ん・・・」

そんな素っ気ない返答でも、内心かなり嬉しいんだよ、ただ上手く言えなくてごめんな

階段降りてる時も無言で学校から出るとやっと口を開いた

「お腹空いたー、メロンパン買お〜」

買う?なんて言いながら猫線をくっきり浮かび上がらせた

「太るぞ、毎日食ってたら」

「まだ大丈夫」

「その言葉駄目だろ・・・」

そう言いながらもおたべの笑顔が好きだから、買いに行ってしまうんだけど・・・

「今日は、ファイブイレブンで買おっかな」

「なんで・・・?」

いつもパン屋かコンビニで買ってたから・・・

なぜいきなり場所変えたんだろ

「ん?なんとなく」

そう言って手を引かれるまま、おたべに続いた

────
結果、ジュースとメロンパンをおごることになった

「いやいや返すよ、そんなん年下におごってもらったとか」

「私ら年の差気にする関係だっけ・・・?」

年下だからって舐められるのはごめんだ

「私からの贈り物だと思え・・・」

ちょっとまだためらってるようだけど、断じて財布を開けさせなかった

店員さんの前ではおごって、後から返してもらうとか。

ダサすぎるだろ。

その瞬間ぐらっと視界が揺らいで思わず地面に手をついた

なんでこんな時に

「ソルト!!!!」

おたべの大声と、耳をつんざくようなクラクションの音が目まぐるしく頭を回った

何が起こってんだ・・・

私は・・・死んじゃうのか・・・?
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