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『狂恋文』

時を忘れた烏が鳴いた

宵闇、静を切り裂いて

憑かれたように鳴いていた

声音に何かを聞いた

そんな気がして
泣いていた


夏の昼間に蝉は鳴く

恋しや、恋しと鳴いていた

鳴けぬ蛍は身を焦がし

儚く命を煌めかす

あまりにその熱
熱いから、高鳴る胸を
ひた隠す


夜に焦がれた太陽が

トロリと朱色に身を溶かし

月を追い掛け海にいく

まるで逃れて来たかの様に

それに合わせて月昇る

されども心は太陽想い

光を受けて白銀に染まる

そんな姿に憧れた
されども現つに希はしない


今宵も星が昇りました

明日も光が落ちるでしょう

こちらはもうすぐ
春ですよ…

『摩擦世界』

この狭い世界では
互いに摩擦を起こさずには
生きられない

擦り合わせ

ぶつかり合い

そんな事を繰り返しながら
生きていかねばならない

それなのに
何故か
向き、不向きが存在する
得意、不得意が存在する

不向きな奴には
向いてる奴が

不得意な奴には
得意な奴が

削られ、合わせて

合わせて、削られ

擦り合わせの世界

ポロポロ落ちた
粉は何色?

摩擦に耐えてすり減った
私はこんなに歪になった

いやいや元から
歪だった?

『崩壊した街と』

狂いながら崩壊していく街並みを、僕は涙ながらに見送った。

怒号を上げるかのような倒壊。

砕けた街の破片は、遠く離れた僕まで飛び掛かって来て、僕はあちらこちらを傷付けた。

しかし、冷め切った僕は、痛みを大声で発する事は出来ず、ぼんやりと淀んだ瞳でその光景を見守るしかない。

周囲で、悲鳴にも似た叫びを聞いた。

どうやら、誰かが痛みを訴えているらしいが…。

皆が皆、傷を負っているのに、そいつは、まるで自分だけが痛いみたいだった。

…しかし、何故かそういうヤツには、構い人ってのが現れて、介抱しようとする。

…構い人は、自分も血だらけなのに、ニコニコしながら介抱しようとするものなんだ。

僕は重々承知していた。

……以前の僕が、それだったから。

そんな愚かな奴等など知らぬ顔をして、また僕はぼんやりと壊れた街を見つめる。

見つめたところで、直りはしない。

モウモウと立ち込める粉塵に、誰かが咳をしていた。

ただでさえ、僕の視界はぼやけていたのに、直、見えなくなった。

それでも、僕は街を見つめる。

声一つ、上げる事も忘れて……。
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『思案』

永遠知らずのモノ達が

集いし庭で

今宵も宴

最初に酔いしは誰だろう

最初の離脱は誰だろう

焔を起して

周りを廻れ

周りを舞われ

天を嘗め回す紅の舌

パチパチはぜるは

木の木っ端

楽器もないのに祭囃子

エイヤエイヤと聞こえます

一人、また一人

いつしか消えてゆくモノを

追うも追わぬも我次第

必要とあらば

何としてでも追いませう

だけれど

モノには心があって

違えていたら?

時ズレていたら?

思えば追えずにおるのです

エイヤエイヤと聞こえます

掛け声まだまだ続きます

しかしながら

そろそろ宴も終盤か?

貴方が発とうとしてるから

私は手を伸ばしたい

ゆくな、ゆくなと縋りたい

嗚呼、しかし

心を違えていたなら
どうしましょう?

嗚呼、しかし

貴方だけは引き止めたい

無理と言ふなら

私が
ともに付いてゆきたい

そんな意識が交錯し

私は未だに何もゆえず

ただただ

愚かしく貴方を見上げ

愚かしく木っ端の音を聞く

『氷結麗花』

春が近いと言うのに

氷の塊

ゴロリとあった

中に咲いている

淡色の花一輪

冷たさ忘れて

咲いたまま

キリキリ痛む

冷たさ忘れて

咲いたまま

このまま春が来たならば

このまま氷が解けたなら

淡色の花は

一体どうなるんだろう?

暖かさを忘れた

そんな花

あまりの暑さに萎れるの?

適正温度に満足するの?

凍結の花は美し過ぎて

氷中の花は愛し過ぎて

春を恐れる我が心

現状を恨む我が心

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