狂いながら崩壊していく街並みを、僕は涙ながらに見送った。
怒号を上げるかのような倒壊。
砕けた街の破片は、遠く離れた僕まで飛び掛かって来て、僕はあちらこちらを傷付けた。
しかし、冷め切った僕は、痛みを大声で発する事は出来ず、ぼんやりと淀んだ瞳でその光景を見守るしかない。
周囲で、悲鳴にも似た叫びを聞いた。
どうやら、誰かが痛みを訴えているらしいが…。
皆が皆、傷を負っているのに、そいつは、まるで自分だけが痛いみたいだった。
…しかし、何故かそういうヤツには、構い人ってのが現れて、介抱しようとする。
…構い人は、自分も血だらけなのに、ニコニコしながら介抱しようとするものなんだ。
僕は重々承知していた。
……以前の僕が、それだったから。
そんな愚かな奴等など知らぬ顔をして、また僕はぼんやりと壊れた街を見つめる。
見つめたところで、直りはしない。
モウモウと立ち込める粉塵に、誰かが咳をしていた。
ただでさえ、僕の視界はぼやけていたのに、直、見えなくなった。
それでも、僕は街を見つめる。
声一つ、上げる事も忘れて……。