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『神話上遊戯・壱』

―北欧神話から連想。―

あちらにも こちらにも

爆音と共に砕ける視界

ロキの所業か?

笑い声が こだましている

耳を塞ごうにも
両手は縛り上げられて
使い物にならない

「違う。そうじゃない!」

叫んだところで
誰も救けてなんかくれない

むしろ

面白がったロキが
私を解放するでしょう…

痛め付けられた記憶の狭間

内に秘めた「何か」が
踊り出すんだ

彼の手を取れば
私も
何かを産めるのか?

「それは、否」

遊戯のままに
壊されて仕舞いだ

だけれど

こんなになった私は
もう あちらへは帰れぬ

壊れてしまうか
逃げ出すか

天秤に乗っているのは
「大失敗」と言う選択肢

ただ 遊戯に興じる
ロキを見守る

縛り付けられたのは

「彼ではなく、私しか?」

毒滴り続けて 完全麻痺

思考も変わると言うもの
嗜好も変わると言うもの


あのトールでさえ
私を救う事はないでしょう

あの二羽の烏に
何が解るというのでしょう

「ここには没せない…」

独り呟いたのに

ああ、まだ
笑い声が こだましている

ギャラルホルンの音は
聞こえていないのに

まだ
終焉儀式の宴は
始まっていないのに…

「救けて…」

意味も無く 呟いた

奸智の神が
私に笑む

その笑顔は 本当かい?

その笑顔は 本物かい?

全てが嘘だ!
全てが真だ!

飄々として
私を逃がすか?

追い詰められて
また
捧げられるのを

見たいだけだろ?

見たいだけだろ?

一緒に壊れてしまうか

いっそ
全てを暴露して

一緒に

世界を壊すまでに
肥大しようか…

『初夏の雨夜』

流れ去る
川を見ている

河川敷には
花が咲いている

春から夏に変わる風は
何だか
まだ寒いよ


出来ていたかい?
無くす準備が

出来ていたのかい?
失う準備が


道を違えたのは
どこからだったのか

知る術は無い

今はただ
涙を枯らせる
術だけ模索すれば良い


何もかも
運命の女神は
知っていたのかい?

それでも

それだとしても

私達を
寄り添わせたのかい?



あの日は雨だった

忘れもしない

パラパラと注ぐ
雨だった

わざと傘を忘れたら
もっと もっと
近くに居られたのだろうか

迎えを待つ間は
長く 長く

それでも
信じていられた

笑顔で
出迎えられた

信じていたから



なあ、おい。

今度の迎えは
いつになるのだろう?

永く 永く 永く
なりそうな気がする

私は
待つ事が出来るだろうか?

私は
待つのだろうか?



否。 解らない。のが
現実だ。 と思う



雨の夜ならば
寄り添っても
暑くはない

君に触れても
暑過ぎはしない

だから
私は
雨の夜が好きだ…


知っていたかい?
私の夢を

知っていたのかい?
私の未来を


離れた心は
帰らぬでしょうね。と

託せぬ文を
また飲み込めば

初夏の入り口に
雨音が囁き始める


出来ていたかい?
無くす準備が

出来ていたのかい?
失う準備が

出来ていたと言うのかい?

捨て去る 支度が。


雨の夜ならば

届く事も、無い。

『とある絵描きの話』

ある所に一人の絵描きがいた。

そいつの描く絵ってのは、一般人にしたら描けないが、他の絵描きにしたら下手な絵でしかなかった。

その絵描き自身、他の絵描き達よりも、絵に対する誇りや自信、愛情、情熱ってヤツが欠如している気がしていた。

それでも、彼は思うがままに筆を走らせていた。

下手なりに。

出来る範囲で。

だが、ある日の事だった。

フラリとその絵描きのカンバスを覗いた他人が言った。

「何だこの絵は!」

彼はただ、流れゆく川を、自己の世界を反映させて描いていただけだったのだが、覗いた他人には、阿鼻叫喚の地獄絵図にでも見えたのだろう。

恐怖にも似た驚きの声に、絵描きはパタリと手を止めてしまった。

しかし、彼は筆を折るには至れないと察してもいた。

どんなに不気味と喚かれようとも、誰もが目を覆い、見てくれなくなろうとも、彼にとって、絵とは唯一の捌け口であった。

日々の嘆き、悲しみ、喜び、感動する全てを、彼は絵に留めたいと思っていたからだ。

欝屈した精神でさえ、カンバスにぶちまけると、それは「作品」となって、彼を満足させ、落ち着かせた。

ただ…。

周りは、そう思うとは限らない。

承知の上だった。

理解しているつもりだ。

しかし、残念ながら。

彼も人間であるが故に、自分の絵が評価されない事を悔やみ、理解されない事を悲しいとも感じた。

それでも、彼の絵は進化するどころか、ますます屈折してしまう。

花を描いても、木々を描いても、空を、夢を…何を描いても、彼の絵は、皮肉混じりの絵の具の塗りかさねでしかない。

ある人からすれば、彼は「病気」であったが、他の誰かからすれば、彼はただの絵の下手な絵描きだった。

そして、彼自身にしてみれば、彼は彼でしかなく。

彼の絵は、どうする事も出来なかった。

そんなある日。

彼は、ふと描く事を辞めた。

いや、辞めてみたと言うのが正しい。

しかし。

彼が絵を描こうと、描くまいと、世間には何の関係もなく。

どこかで誰かが、何かに耐えられずに独り死んだとしても。

周りの一部が驚くだけで、特に何かが変わるわけでもなく。

描かれるのを待っていた絵が、生まれてこないだけであった。

『記憶の溜り場』

蔦の絡み付いた柱
苔むした回廊

そこは
記憶の溜り場

張り巡らされた蜘蛛の巣
降り積もった塵の山

玉座に腰掛けているのは
思い出を固めたガラス玉

幸せの形を模索して
悲しみを払拭する何かを
ただ 延々と繰り返す

石で囲まれたここからは
あの青空さえ
見える事はないよ

ただ 石柱の隙間から
光が指すのだけが見える

砕けた思い出を
手を血塗れにしながら
一つ また一つ
広い集める

何という事はない

優しいのではなく
ただ 未練がましいだけだ

涙は 何度か枯れ
また 何度か湧く

胸を切り開いたら

どんな想いが
飛び出すんだろうか?

記憶の溜り場には
未来が無い

自分が
この場を立ち去らねば
永遠に未来は無い

理解しているのに

私は
この場所に立っている

苔だらけの足元

小さな花一つ
咲く事はないだろう

ただ ひんやりとして
ただ 薄暗い
ただ ただ広い

この記憶の溜り場は

私の気持ちとも
言え無くはないと思う

『風の噂〜二作目〜』

尋ね人も無いのに
戸口を叩く音

足音も無く
するり歩み寄るのは

やはり 君なの?

幾年を共に歩み
私に絡み付いた

あの呪い歌

されども 君を愛した

君の痛みを
笑顔の裏を

私は知る事になった…

嗚呼
お帰りなさい ニイサマ。


尋ねる先を無くしたの
夢破れて山河は有

足音も無く
するり抱き寄せた

やはり 君だね?

幾年を付き纏い
私に世界与えた

あの祟り歌

さりとて 君を愛した

君の声を
美し過ぎる姿を

私は何より愛してた…

嗚呼
お帰りなさい ニイサマ。

今度はどちらへ 赴くの?

あの日の絵空事
全て叶ったのかしらん?

探していた未来と
かけ離れた未来で
私は待っていた

ねぇ。ねぇ。

カアサマは ネエサマは

ご健勝?


望まぬ未来で
待っていた

何より
愛していた ニイサマ。

誰より
愛してくれた ニイサマ。

今度はどちらへ
今度はどれ程

私を縛るの?

あの朱色の御空は
約束の色

綺麗なべべ着た
ニイサマの イロ。

私を捕えた
夢幻の糸

逃れられない
逃れない

ニイサマ。 ニイサマ。

オカエリナサイ。

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